第13話 華やか過ぎる舞台

(催事会場前)

エルローズ:(上を見上げながら)「う~わ~…。マジでこんな世界存在するんだねぇ」

テオ:「ただ単に金の無駄遣いだと思うけど」

エルローズ:「……テオは言葉が悪いよ」

(豪奢な会場に辿り着くと、ただっぴろい会場中、紳士服とドレス姿の人々で溢れかえっている。ただし、男性陣は顔半分が隠れる仮面、女性は大きな羽根の付いた仮面をかぶっている)

エルローズ:「…思うんだけど、仮面をする意味は何なんだろ?」

テオ:「昔からの決まりごとらしいよ。変な決まりごとだけどね」

エルローズ:(周囲を観察しながら)「(それを言うなら、催事の内容自体が変だっつーの。代表が祝辞の挨拶を述べたら、男性と女性が代わる代わる一曲ずつダンスを踊る、なんて。これって孤児院の創立祭だよね?! おまけに、最後でペアになった相手とは、三曲分も踊らないといけないなんて………)」

テオ:(小声で)「…どう?」

エルローズ:(同じく小さな声で)「……間違いなく居るよ。勇者と聖女は全員揃ってるし、花奴隷も全員じゃないけど混じってる。傍に行かないとわからないけど」

テオ:「…帚木はどう?」

エルローズ:(肩を竦めて)「それがわかったら苦労はないかな。帚木同士はどうやって存在を確認し合うのかわからないし」

テオ:「………でも、もしもこの中に神秘の帚木が居るなら」

エルローズ:「まず間違いなく、テオの存在に気付くだろうね。追加で私も」

テオ:「…お互いの無事を祈ってようか」

エルローズ:「不吉だけど賛成」

(代表の祝辞が終わり、ダンスが始まる。会場全体に曲が流れ、楽器の演奏が響く)

エルローズ:(ダンスを踊りながら)「(………何か、これって一種のお見合い?! 体力を削らない為に激しいダンスじゃないし、会話は普通にしてもいいし。名前を名乗らなくても、後々気になれば相手に話しかけられるし。……こんなことの為に無駄金使うんじゃねえょー! お陰でこちとら一週間、みっちりダンスの練習をさせられたんだからッ。護身術を習う以上に苦しかった…!)」



(ダンスは続き、話しかけられても特に会話を長引かせることなく、終わりに近づいている)

エルローズ:「(情報が欲しいとはいえ、花奴隷はほとんどが女性だっていうから、踊れるほど近付けもしないしわかんないなぁ。まあ、あのバカ勇者に当たるほうが遥かに嫌だけど)」(次の相手に代わり、手を取り合う)「(え…ッ!)」(目の前の男性を見上げる)

ハタカ:(エルローズと目が合い、ニッコリと微笑み返す)

エルローズ:「(この人、花奴隷だ…! 間違いない!)……こんばんは」

ハタカ:「こんばんは。このように麗しいお嬢さんと踊れる、というのも此処に来れたお陰ですね」

エルローズ:「…ありがとうございます。(この人は………、どんな苦しみを背負っているんだろう?)」



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