第12話 約束の意味
エルローズ:(ブレスの部屋の扉をノックし、室内に入る)「ブレスさん、これから出掛けますね」
ブレス:(寝台の上でナコの頭を撫でながらエルローズのほうに目を向ける)「まあ、よく似合って素敵ですね!」
エルローズ:(目線を彷徨わせ)「そ、そんなことは……」
ナコ:「ブレスのいうとおりだよ! エルシャ、すごくきれい!」
ブレス:(手招きをして、寝台の横にある簡易の椅子に促す)「ワタクシは行けませんが、どうかご無事でお戻りになられることを祈っています」
エルローズ:(椅子に座り)「危ない、と思ったらすぐに撤退しますよ。テオがいるし」
ブレス:「………エルシャ様、ワタクシ達の知らないところで、事態は進んでいると思われますか?」
エルローズ:「……私があのナンパ男に出会った時に感じた焦燥感が、当たるならば。当たらない確率もあるけれど」
ブレス:(ナコの頭を撫でながら)「いずれは、ワタクシの財産は全てテオとクリフトに譲るつもりなのですが、やはり不安なので、エルシャ様に頼んでも宜しいでしょうか?」
エルローズ:「………何を?」
ブレス:「ワタクシがいなくなった時、あの二人の傍に居てあげて下さい。幾ら自分達の運命を受け入れているとはいえ、あの子達はまだ子どもですから」(片手を自分の左胸にあて)「………ワタクシの心臓は、もって後二年ほどだと言われています。出来るなら、クリフトがもう少し成長するまでは生きていたかったのですが…」
エルローズ:(咄嗟にブレスの手を握りしめ、顔を伏せる)
ブレス:(エルローズを見つめ、穏やかに微笑むと、エルローズを抱き寄せる)「これから先、きっとエルシャ様には辛く哀しいことばかり目にし、感じてしまうでしょう。それを【運命】や【宿命】と言って片付けてしまうには、ワタクシ達は見なければ良かったものを見過ぎました。………それでも、願ってしまうのですよ。せめて、穏やかな終わりを迎えたい、望みたい、と。エルシャ様の傍に居ると、運命への希望ではなく、人として生きる希望を見出します。きっと…、どちらもワタクシ達花奴隷には必要なことなのでしょう」
エルローズ:(顔を上げ)「……必ず帰ってきます。だから、帰ってきたら、皆で庭でピクニックしましょう。庭の広さなら出来ます。『約束』、です」
ブレス:(軽く目を見開き、次いで嬉しそうに微笑み)「はい、約束、ですね」
クリフト:(扉をノックし)「エルシャさん、出掛ける準備が整いました」
エルローズ:「は~い! 今行きます!」(立ち上がり、歩き出そうとする)
ナコ:(エルローズに飛び付き、胸元にしがみつく)「かえってきてね、かえってきてね?」
エルローズ:(ナコを撫でながら)「どうしたの? 大丈夫だよ」
ナコ:「だって………、ナコといっしょにいたははきぎは、みんな「だいじょうぶ」っていってでかけて、かえってこなかたもん………」
エルローズ:(ナコを優しく撫でると)「…『約束』。必ず帰ってくる」
ナコ:(しがみついたまま)「やくそく、だよ。ぜったいだよ?」
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