第10話 動きはじめるもの
(邸宅に戻ると、焼き菓子を厨房のほうに置き、すぐさまクリフトと共にブレスの部屋へと足を進める)
ブレス:(寝台で本を読んでいた顔を上げて)「お帰りなさい。外出はどうでしたか?」
エルローズ:「ブレスさん、唐突でごめんなさい、なんだけど、魔法勇者と魔法聖女が揃う催しって、近々ありませんか?」
ブレス:(首を傾げて本を閉じ)「………そう言われれば、一週間後辺りに何かあったはず…。クリフト、テオを呼んできてくれない?」
クリフト:「わかりました」(すぐに部屋から出て行くと、数分後、テオを伴ってブレスの部屋に現れる)
テオ:「どうかしたんですか?」
ブレス:「テオ、勇者と聖女が大々的に揃う催しが、近々ありましたよね」
テオ:(記憶を探りつつ)「……ええ。確か、神聖な花が支援する大規模孤児院の創立祭ですね。大分昔から、この催しには勇者と聖女が全員揃うことが決まりになっています」
エルローズ:「その催事、どうにかして潜り込むことは出来ませんか?」
ブレス・クリフト・テオ:(驚いてエルローズの顔を見る)
テオ:「………ブレスさんの家の力を使えば不可能ではないけれど、何かあるの?」
クリフト:(ふと思い出したように)「そういえば………、エルシャさん、定食屋さんで、バイスさん、という男性に会ってからですよね。おかしいの」
ブレス・テオ:(一瞬で表情を変え、テオが部屋にある引き出しから、書類の束を引き抜き、忙しなくページを捲る)
テオ:「それって、十六歳ぐらいの、長髪の如何にも遊び慣れているような容姿した男?」
クリフト:「え、ええ。確かにそういった雰囲気でしたね。エルシャさんにもナンパ紛いのことをしていましたし」
ブレス:「……その方は、バイス・懺・ジャクリーン。魔法勇者のお一人かと思います」
クリフト:(驚愕の表情でエルローズを見る)
ブレス:「やはり、神聖な花と花奴隷を見分けられるのは、帚木だけのようですね。それで? わざわざその御方にお会いしたから、という理由ではないご様子ですが」
ナコ:(服の中から顔を出していたが、飛び跳ねてエルローズの肩に移る)「ほかのはなのにおいもしたんだよね、エルシャ」
テオ:「他の花…?」
エルローズ:(記憶を探るように)「恐らく………、ガマズミの花の匂い。あのナンパ男の周囲に漂ってた」
ブレス・テオ・クリフト:(顔色を変える)
ブレス:「………神秘側の帚木が、動いているのでしょうか?」
テオ:「……可能性は高いと思いますよ。先々の世界各地の紛争の発端をつくっているのもあちら側だし」
エルローズ:「何か情報が得られるのであれば、私行きたいんです。お父さんとお母さんのことも、少しはわかるかもしれませんし」
ブレス:(エルローズの言葉に頷き)「それでは、催事に出席出来る手配を致しましょう。それと、当日はテオがエルシャ様の傍に」
テオ:「わかりました」
ブレス:「クリフトはワタクシの伝令役を頼まれて下さい」
クリフト:「はい!」
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