第5話 新しい出会い

(翌日の昼下がり、広大な森が後少しで終わる手前)

エルローズ:(地図を手にしながら)「えっと…、お父さんとお母さんが連絡を取ってくれた人との約束場所はこの辺りのはず……」(キョロキョロと周囲を見回すと、ちょうど森への抜け道の大岩の前に、幼い少年が、同じように辺りを見回している)

クリフト:(エルローズに気付き、表情を明るくして駆けてくる)「エルローズ・伝承・ベルニアさんですか?」

エルローズ:(途惑いながらもコクリ、と頷く)

クリフト:(パッ、と一際表情を輝かせ)「初めまして! 僕はクリフト・都築・マリアです。お迎えに上がりました」

エルローズ:「君が…、私の両親が連絡を取った人?」

クリフト:「あ、いえ、それは違う方です。その方は訳あって身体があまり動かせないので、僕が迎えの役目を受けました」

エルローズ:「そ、そうなんだ」

クリフト:「森を抜けた先の道に車を待たせてありますので行きましょう」

エルローズ:(ハタと思い出し)「ね、ねえ! 私のお母さんとお父さんはどうなったのか知ってる?!」(クリフトの腕を強い力で取る)

クリフト:(少々驚きながらも)「あ、いいえ…。それについては僕は知りません」

エルローズ:(気が抜けたように力なく手を離す)「そう……」

クリフト:「とりあえず、此処に居てもどうにもなりませんから、行きましょう」

エルローズ:(緩く頷く)



エルローズ:(呆然と目の前にそびえ立つ邸宅を眺めている)

クリフト:(平然と敷地内を歩いて行き、エルローズの手を取り、歩を進める)「こちらです」

エルローズ:(邸宅に入り、高級そうな調度品をこれまたポカン、とした表情で見ている)

クリフト:(二階の奥部屋の扉を数回ノックし、返事を待たずに扉を開ける)「ブレス様、エルローズさんをお連れしました」

ブレス:(大きく高級そうな寝台の上に、身を起こした状態でエルローズを見て微笑む)「お初にお目にかかります、エルローズ様」

エルローズ:(ブレスを見て、目を瞠る)「(なんて儚げで綺麗な女性…)は、初めまして」(ギクシャクしながら頭を下げ、ブレスのいる寝台の横のソファに座る少女に目を止める)「(表情筋がない子だけど、この子も精巧な人形みたいな容姿だなぁ)」

クリフト:(少女の隣に腰を降ろす)

ブレス:「まずはお疲れでしょうから、お風呂の用意をさせましょう。そこでゆっくりと身体をほぐして、気持ちを少し落ち着けてからお話致します」(ブレスが両手を叩くと、三名ほどの使用人が入ってくる)

エルローズ:(緩慢な動きでブレスに頷く)



エルローズ:(今まで見たこともない大きなお風呂で身体と荷物を洗い、軽装の服を借り、髪を乾かしながら一息吐く)「(………何だか、今まで気持ちがささくれ立ってたみたい。お湯にゆっくりと浸かったら、気持ちが落ち着いて、頭も働くようになってきたな。まずはあの人達から話を聞かないと)」(再びブレス達の居る部屋へと使用人に通され、室内に足を踏み入れると、先程は感じなかった花の香り嗅ぐ)「(あれ……? 何か香りの強い花でも置いたか、香水でも使ってるのかな? 女性が二人も居るんだし。でも………)」

ブレス:(相変わらず寝台の上から動かず、手で空いているソファを示す)「どうかされました?」

エルローズ:「いえ……。(病人が居る部屋に香水や匂いのある花なんか飾るかな? それに、花の香りが数種類する。どこかで嗅いだことがある匂いもあるんだけど…。あ、そうか、他の匂いはわからないけど、この花の匂いは……)紫陽花…?」

(一瞬でブレス、クリフト、少女の表情が変わる)

エルローズ:(表情の変化に訝しむ余裕もなく慌てて)「あ、いえ! 今さっきはしなかった花の香りがしていて。私が知っている今室内で薫っている花はそれだけかな?、とつい口にだしてしまいました」

(三人は表情を困惑や途惑い、納得に変えている)

エルローズ:「あの……?」

テオ:「…この部屋に、花は置いてないし、香水も使ってない」

エルローズ:「え?」

ブレス:(フフッ、と笑い)「気持ちが落ち着いたことで、力が徐々に覚醒しているようですね」

エルローズ:(困惑を表情にだす)

ブレス:「まずはお座りになって下さい。話はそれからで」

(使用人たちが机にお茶とお菓子の用意をして下がっていく)

エルローズ:(クリフトと少女と、ブレスの顔が見える位置に配置されたソファに座る)

ブレス:「まずは自己紹介から。ワタクシはブレス・帛・シープ。こちらのソファに座っているのが、挨拶は済まされたでしょうが、クリフト・都築・マリア、テオ・縁者・トラークです」

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