七章:三ツ巴ノPast
◆27.You dislike me not only but you hate me.
ズシャンッ!
人間の腹から発生したとは思えぬグロテスクな音。反射的に
「ナリくん、その、真って……」
引け腰になっている
「彼の名前は、
「……双子」
呟いた
「はーん。だからか。そりゃぁ殺しちゃあいけねーわな」
「……ユウ?」
嘔吐が収まり正常な呼吸をし始めた仁子の視線を感じたが、優はただ一点、俯いたまま両拳を握り締め震え立つ真也を捉えていた。
「こんなことは今すぐやめよう、真。俺は君を殺すつもりはない。争うつもりもない。君をただ、連れ戻したくてここにきたんだ」
「連れ戻す……? ふざけてんのはてめーだろナリ!」
顔を上げ、唾を飛ばしながら真也は気性荒く叫んだ。
「誰が戻るかよあんな家!」
その尋常でない剣幕に、金網の向こうで杏鈴がぶるりと身体を震わす。
「俺はてめえが嫌いなんだよ!」
「嘘。それも嘘だね」
飛びかかってきた真也を掴み、賢成は背中から地に叩きつける。再び動きを封じるためその上に素早く跨ると、真也の両肩を力ずくで抑え込んだ。
「君は俺が“嫌い”なんじゃない、“大嫌い”なんだ。知ってるよ」
賢成の表情は突如歪む。真也が大きく開いた口で、賢成の左腕に歯を立てたのだ。
「やめて!」
杏鈴が金網にガシャンと手をつき金切り声を上げると、翼が真也へ銃口を向けた。
「撃たないで!」
だが、引き金を押しかけた翼の指は賢成の鋭い視線と声に止められた。溢れ出る生血をだらだらと流しながらも、賢成は落ち着き払っている。
「セイを、俺が奪ったからだよね」
「ちげぇよ! 俺はてめぇの何倍もあいつが嫌いなんだよ! 反吐が出るほどにな!」
真也の口元が離れ垣間見えた賢成の負傷した箇所はえぐんでいる。血液の流れを目で追う真也の笑い声はさぞ愉快そうだ。
「やめてよ。セイが聞いたら悲しむよ。目を覚まして、真。嘘ばかりつかないで」
「ついてねーって言ってんだろ! そもそも何なんだよ今更連れ戻すってよ! 何があろうと俺はあの家には帰らない! あの家に帰るくらいなら逆に今ここでお前に首でも斬られて殺されたほうがましだ!」
「一体何が君をそこまでさせたんだよ! 仲のいい双子だったんだろう?」
空気が、凍結する。
真也は薄ら笑った。
「仲のいい……? どこでそれを思ったんだか。あいつはな、俺を兄弟じゃねぇ、ただの
そして優の左目には、“
◆
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