エピローグ
俺達が学校へ戻った頃には、お昼休みに。
俺が職員室の前を通りかかった時、何人かの女子生徒が西島先生に抗議をしていた。
「西島先生、カフェテリア付いてないじゃないですかっ!」
「北校舎の一階にあるだろ。昇降口横にある校内案内図を確認したまえ」
「あんなのカフェテリアじゃないでしょ!」
「和風なカフェテリアなんだよーん。雉そば、猪そばが特にお勧めだよん」
「あんなのは単なる鄙びたうどん・そば屋じゃん」
「西島先生、私立なんだし、あんなお年寄りしか寄り付かなさそうな田舎臭いのじゃなくて、おしゃれなスイーツが食べられるカフェを作って欲しいです」
「では今度はその件で勝負に乗ってみるかい?」
「今回は反対派の子がいないようなので、勝負はなしでオーケイじゃないんですか?」
「生徒の要望に応じるっていうことは、そんなに甘くないのだよん。このイナゴの佃煮は甘いけどね。生徒の要望に対し、対立する生徒や教師がいない場合、教師の課した課題をクリアした場合に要望を受け入れるという決まりもあるのだよん」
「そんなの聞いてません。っていうか先生のお弁当、高級過ぎ」
「おいらにはママ特製弁当があるからね」
「わたくし、いつも保夫ちゃんの大好物、キャビアを入れているのざます」
保子さんは嬉しそうに伝える。
西島先生親子、面白過ぎ。
俺は笑いそうになりながら通り過ぎ、そう呼ぶには違和感ありまくりのカフェテリアへ。
店名になんとか庵って名付けられそうな昔風で和風な雰囲気だった。齢七〇超えてるだろうお婆ちゃん何名かで切り盛りしていて、メニューはうどん、そば、カレー、カツ丼のみ。パフェとかワッフル、ドーナッツとかのおしゃれなスイーツは一切ない。けれどもサービス精神は満載だ。味噌汁と漬物、ドリンクコーナーにあるほうじ茶とヤギミルクは無料とのこと。
俺は西島先生がお勧めだと言ってた猪そばを注文した。すると蜂の子や蝗や蚕の蛹の佃煮がおまけで付いて来たのだ。その他のメニューを注文したやつにも付いて来ていた。
それがまたなんとも美味いのだ。
一切手を付けてない子も多いようだけど、非常に勿体ないと思う。
俺が猪そばにも舌鼓を打っている時、
「今のカフェテリアをおしゃれなスイーツがメインのカフェテリアに改築するかを賭けた勝負は、茶摘み対決を検討するって」
一人の女子生徒が入口付近から伝えてくる。
「茶摘みってまた変わった対決方よね?」
「また田舎者有利じゃん。ワタシ茶摘みなんてしたことないし」
「でも面白そう」
いろいろ意見が飛び交う生徒達。
「あらぁ。うちのはおしゃれじゃないっていうの?」
「得意分野でちょうど良かったわ」
「合成着色料たっぷりお砂糖べっとりなスイーツなんかより、今のメニューの方がずーっと体にいいのに」
お婆ちゃん達はホホホッと笑う。明らかに反対派のようだ。
俺はまあ、微妙に反対派だな。和風な雰囲気の店の方が落ち着くし。
この学校かなり変わった所も多いけど、俺はこれからも楽しい高校生活が送れそうだ。
(おしまい)
私立桃叡高校学内不満解消戦 明石竜 @Akashiryu
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