放課 ~Mary, Mary, quite contr~
茨棘の王冠
「犯罪とは、至高にして思考の芸術でなければならない。また、殺人とは、その最たるものとして、芸術以外の理由で行われることは赦されない」
逆光のなか、自らに背を向けて、
「このあらゆる概念が矮小化した世界において、『正義である、悪である』という定義を持ちだすのは、愚者以前の、
巌のような男性は、黒一色の格好をしている。
少年にはそれが、喪服と呼ばれる類のものであることが解っていた。
自らも同じものを身にまとうがゆえに、知っていた。
「正義はなく、悪はなく、同時に確固たる正義があり、悪もある。だが、それらすべては都合の良い解釈によって捻じ曲げられ、根源的な意味合いを現代では失ってしまっている。本来定義された数学的で有機的な美しさなど、遠い昔、緒元の始まりに喪失してしまったのだから。しかし、もし、原理を
その詭弁、大義名分ゆえに、他の命を貪らねば生き永らえぬすべての生物は悪であり、命を糧に生きるからこそ、終わりを迎える刹那まで足掻き、苦しみ、生存し続けなければならない呪いにかかっているのだと、その男性は硬く、揺るがない口調で語った。
少年は、それを無言で見詰めている。
「命が生きることは正しく、その正しさを貫くためには悪を
男性が、振り返る。
逆光の中で、その双眸が──燃え盛るような黄金の瞳が、少年を射抜くように見据えていた。
「許せ、愛しい息子よ。
少年は。
「
少年は。
「問おう──おまえは、何者か」
少年は、答えた。
「僕は、森屋帝司郎。犯罪王の──名を受け継ぐ者」
かくして少年は、その黄金の魂に、純白の王冠を抱く。
それが。
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