現世ではあまり幸せじゃない人生を送っていた少年が異世界に転移して、強大だが代償が大きい力を持った魔術師として生きていくことになる流血多めのファンタジーの二作目です。
前作からがっつり話が続いているタイプの続編なので、前作を読んでない方はまずそちらを読むことをおすすめします。
今作のあらすじをざっくり説明すると、主人公が仕えている姫君の少女が治める王国が、隣国の魔女による民衆の扇動で危ない状況になったので、バディ関係にある騎士やその他の仲間とともに主人公が魔女と戦う話です。
主人公は王国の統治者である少女のことが多分好きで、基本は彼女のために戦っているはずなのですが、不幸な生い立ちのせいなのかいまいち自分にとって何が一番大切なのかわからないらしく、正ヒロインそっちのけで他の女子キャラ(たまに男子も)とのフラグばかりを立ててしまいます。
前作に比べればちゃんと正ヒロインのことを考えているエピソードは増えたような気はするのですが、関係が深まる速度はじれじれって言えるレベルじゃないほどにゆっくりです。
そして主人公との絡みがヒロインよりも多いかもしれない相棒ポジションにいる美形男子は、最強の騎士という設定にふさわしい迷いがないキャラなので、苦悩することが多い主人公との対比が面白いバディものとして読むこともできます。
代償が大きい力を持った魔術師である主人公が悩んで決意するときはだいたい自分を犠牲にする展開ばかりになるわけですが、その隣に立つ騎士である彼がどんな覚悟をしているのかはぜひ本編を読んで見てみてください。
前作での借金返済のため、校内対抗戦に挑む主人公。
そこに隣国の王女が現れ、唐突に主人公は自分の弟だと宣言します。
鬱々とした展開の多かった一部と比べると、主人公の立ち位置も安定してラノベ的展開で始まりますが、そこはそれ。当然のように不利な立場へ追い込まれていきます。そこに、地球から来たもうひとりの少年や、忌まわしき魔法の書物・青海文書を巡る謎が関わって、物語世界の謎が少し解き明かされていきます。
物語も良いのですが、描写も見逃せません。舞台となる翡翠の国は魔法が存在する世界ながら一般には魔法が禁じられていて、ファンタジーではなく近代的な国家。しかし、翡翠の国では禁じられた魔法とファンタジー世界はこちらの事情など知らずに牙を向いてきます。第一部でも描写された、竜に蹂躙された都市。そして第二部では、魔法を日常に使いこなす隣国の姫君が登場します。お楽しみに。