第4話 いったい何を思って書きだしたのか。
というわけで、『ウソ』なしで率直に述べたい。
わたしが小説を書き始めたのは、たぶん12年前で、30を過ぎてからだった。
なぜそこまではっきり覚えているかといえば、自分のホームページを見ると、
「copyright(C)2004-2016 Nishida Saburou all rights reserved. 」
となっているからだ。
わたしが自分のホームページ、「西田三郎商店」を立ち上げたのは、2004年だったということになる。
いまはもう、個人のサイトなどほとんど顧みられることはなくなった。
しかしこのサイトは現存し、いまだに「忍者ツールズ」の手裏剣がページのうえのほうでクルクル回っている。
ところで……90年代から2000年代前半にかけて、個人がウェブサイトを作るのがやたらと流行った時期があった。まだブログは一般的ではなかったころである。
信じられないかもしれないが、当時、誰かが結婚するとなると、結婚式のためのウェブサイトが立ち上げられた。新郎新婦のプロフィールやラブラブ写真に加え、「おめでとう!」と仲間うちだけで言い合うためだけの掲示板が設置されている。そういうサイトは結婚式が終わり、数ヶ月もすると、結婚した本人たちにもその存在を忘れ去られている……などということがザラにあった。
とにかく、猫も杓子もウェブサイトを作りまくり、作るだけ作って、放置しまくっていた。当時は、「自分のホームページを持つ」ということが、なんとなく必修課題であるような空気があった。
で、わたしも軽薄なので、いっちょう作ってみよう、と思い立ったわけだ。
しかし……当時、知り合いたちはこぞってホームページを立ち上げていたが、どれを見てもたいして面白くなかった。いやまじで。まったく内容がないのだ。
というか、正直、「何もしたいことがないのにとりあえずホームページを立ち上げました」とトップページに書いてあるような、いや、実際に書いてあるようなウェブサイトが多かった。
ところで、ウェブサイトづくりからはじまり、いまはツイッターやフェイスブック、インスタグラムになんちゃらかんちゃらと、人々がネット空間でこうも露出狂のように振る舞いだしたのはなぜだろうか。
これは今流行ってる言葉でいうなら「承認欲求」というやつなのだろうか。
いや違う。それは「自己顕示欲」だ。
ことばは正しく使わねばならない。
ウェブサイトを立ち上げるにあたって、わたしは、どうせなら人が読んで楽しいものを作ろう、と考えた。なんと傲慢な考えだったことか。
で、コンテンツは何にするか、と考えたすえ、まあ小説でも書いてみるか、ということに思い至った。
というか、わたしの場合、小説を発表したいからホームページを立ち上げたわけではなく、ホームページを立ち上げた以上、それなりに人に読まれそうなコンテンツを上げておかなければ誰も見向きはしないであろう、と考えたから、小説を書くことにしたわけだ。これまた、なんと思い上がったアイデアだろうか。
いったい、どこの、どんなモノ好きが、どこのだれともわからない奴が書いた小説など、読んでみようと思うだろうか。
その点に関しては、それなりに自覚があった。
じゃあ、ネット世界を見回してみて、たとえ素人が書いていようとも、それなりに関心を惹くことができそうなジャンルというものはなにか、を考えた。
「エロい話」か「怖い話」のいずれかだな、というのが当時の結論だ。
「エロい話」と「怖い話」、これは人間の生理に訴えかける。
好奇心を大いに刺激する。
実際その当時、わたしが好んで読むネットコンテンツは「エロい話」か「怖い話」のいずれかだった。
わたしはエロい話が大好きだった。
とくに、告白掲示板系のものに掲載されているような、できるだけリアルな話が。
「怖い話」を書いてみようか、とも一瞬思ったが、そういうことばっかり考えていると、なにか自分が「悪い気」のようなものを集めてしまいそうで怖かった。
だから、わたしは自分のウェブサイトのために、エロ小説を書き始めた。
ところでいま、わたしはネットでは、ほとんどエロ動画しか観ない。
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