えっせい「があーこちゃんのたんじょうび」

@19643812

第1話

二人の孫がいる、娘の誕生日が来ます。


 エッセイ「があーこちゃんのたんじょうび」                                          清水太郎

 二歳を過ぎた孫がテレビの動画だけでなく時々絵本を読んでと、妻の手を引いて連れて行くようになった。家に帰り妻がロフトに残っていた絵本を探してきた、数冊の絵本がまだあった、どれも古びて傷んでいた。その中に『があーこちゃんのたんじょうび』もあった。

娘が孫と同じくらいの時に妻が読み聞かせていた本で、その中に「とびこ、いま、ちょっとて がはなせないの。」とがあーこちゃんにお母さんが言っている部分がある。娘はどう聞き違えたのか、小さな自分の右手を左手で抜くように擦る動作をした。真剣な可愛い仕草は私と妻の心を何時も和ませてくれた。

本との最初の出合いは中学生になった時に送られてきた『リーダーダイジェスト』で選ばれた人ですと言う言葉が書かれていた、生活保護を受けていた貧しい暮らしの中でも母が私のためにと本の代金払い続けてくれた。  

68歳の私は郷土史の研究のための蔵書も多い、だが今はもう本を読むこともない。パソコンとiPadミニにスマホが本の代わりをしている、検索すれば自分のブログを何時でも読めるからです。

娘は十年目に生まれました、北里大学で生まれたので「里美」と名付けました。初めての孫は結婚式の時にはお腹の中でした。

二人の孫は私の蔵書を何時か役に立ててくれるのだろうか。「お父さんの本、どの位で売れるのかしら」娘が言ったことがあります。

『があーこちゃんのたんじょうび』は三十年の時を超えて、今蘇っています。四月に生まれた二人目の弟も読むのだろうか、93歳で八月に亡くなった、叔母が持っていた二冊の真新しい絵本も私の手元にあります。

父は九十一歳で大往生でした、それまで私も生きていればひ孫が『があーこちゃんのたんじょうび』を読めるかも知れない。

 娘は三人目の子も産むつもりのようです。女の子なら娘と同じ仕草をするのだろうか、繋げたい思いのじぃ~じが此処にいます。


昨年のエッセイ作品応募したものです、平成28年7月(校正)10日

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