第41話 再愛

 ともかく、俺はアーケード街へ。

「お守りねぇ、ちょっとは効き目あるのかな?」

そんなことを言いながらお稲荷様からもらったお守りを握る、うん?小さなメモみたいなのついてないか?まぁいいや。


「はい、久保明緒さん、会社員ね、こちらは落とし主の『ゆずりは 瑠衣さん」

 紹介された女の子はやっぱりどこかハオに似ている、ちょっとむっちりぽっちゃりしてて色が白くて健康的にエロイとことか特に。

 それに瞳、穢れを知らないような、まん丸で純な瞳が。

 あぁでも高校生かぁ、条例が気になるとこだ。

 それに……ハオじゃない。


「でもよかった、拾ってくれた人が明緒さんで」

お礼がしたいという言葉に甘えて、俺と瑠衣ちゃんはチェーンのコーヒー店に入る、女の子の頼んだのはメロンラテ、俺はコーヒーをブラックで。

「ずっと探してたんです」

「そんな大切なモノだったんだ」

俺の見たところあれは多分日記やなんかの鍵だ、女子高生の日記、あぁ甘酢っぱいなぁ。

「それで……見て欲しくって……」

「何を?」

まさかこれキャッチとか。


 瑠衣ちゃんが差し出したのはチェーンと鍵でロックされた大学ノート。

「このノート、『久保 明緒』さんって人について書いてあるんです。

わたしが小さいころから持ってたそうで、この名前聞くたびに、懐かしい、温かい不思議な気持ちになるんです……」

俺はひっくり返りそうになるのを懸命に抑えて平常を装った、

「プロ野球のじゃなく?」

「……はい、地域もこの辺らしいです」

俺はこわごわとノートを取り、読みだす。


 書いてあった。

 俺とハオが出会ってから一緒に暮らし、色んな所に行ったこと。

 ハオの嬉しかったこと、悲しかったこと、ラブホ前の喧嘩、あの日のデート。

 ハオが……俺を大好きだったこと。


 最後の一ページになって、女の子が俺の指を制した。

「待って、ここからは読まないで欲しいの」

「え、なんで?」

そこには最後の戦いの際に、ハオが何を考えていたかが書いてあるはずだった。

「あのね明緒さん、例え人の気持ちが読めても、やっぱり大事なことは言って欲しいと思うんだけど」

「なんかハオみたいなこというなぁ……」

思わず俺は愚痴ってしまう。

「だいたいハーレムって何よ!そんなんだから私が良縁成就をどんなに祈っても未だに一人なんでしょ?」

「??あの、瑠衣ちゃん落ち着いて、言ってることがおかしいよ」

「落ち着いてられない!せっかく生まれ変わって、明緒に会えたのに!」

瑠衣ちゃんはわんわん大声で泣き出した。


 その時、瑠衣ちゃんの制服が巫女服になり、髪が金色、そして頭には……あの見慣れた狐耳。

「ハオ?!ハオなのか?」

どこかの時代どこかの国で誰かに、確率はゼロじゃない、けど。

「うん、わたし……ハオだよ、わかる?」


俺のポケットから落ちたお守りから、小さなメモがはらりほどける。

「書き忘れたけどな、もしハオの生まれ変わりとお前が会え、心が繋がったら。

ハオは前世の記憶を取り戻すかもしれん、ま、無理じゃろうがな」

でも俺にはもう恋愛成就のお守りなんかいらない、これからは、ハオがいるんだから。


「なんだよ、俺、ハオのこと思い続けて一人だったんだぞ」

「うん、ありがとう」

人目をはばからず抱き合う。

 そうか、前は触れられなかったけど、今はこうやってハオと抱き合えるんだ。

 本当に、よかった。

「あ、明緒、またHなこと考えてる」

身体を離して、ハオがふくれる。

「え?まだ心が読めるの?」

ダメかぁ、俺一応18歳以上なんだけど……。

「できないよ、けど、顔がにやけてる」

ハオは俺から離れる、こりゃ前途多難かなぁ。

「それに……わたしが18歳以上になったら、ね?」

ほっぺにキス、あぁ……誰かこの場面写メって後で俺にくれ、ベストエンドだこれ。

 ミッションコンプリート!congratulation!おめでとう!って専用エンディング曲にビジュアル出るやつ。

 でも、この店の曲も、風景も、確かにそれに似つかわしい。

  

 神器はもう光らないけど、俺の戦いはまだまだ続く。

 俺とハオも始まったばかり。

 俺が主人公の物語は、まだ続く。



              ☆おわり☆



 

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