第40話 お稲荷様を大事にしましょう。

 お袋から受け取って、俺は手紙を読む。

「神社?お仕事のことかしら?」

お袋がいぶかしがる、この神社の名前は憶えがある、ハオが神器の契約の際検索したものだ。


                 ☆


「拝啓 明緒殿

 いきなりこのようなお手紙をして失礼する。

 我は稲荷神、こう幾年も生きてると、人間の文字ぐらいは書ける。

 この住所はお前が『ハオ』と名付けた使いから聞いた。

 あいつは随分お前に懐いていたな……世話にもなった、礼を言うぞ。

 

 しかし、お前も気づいているだろうが、もうハオとお前が会うことはないだろう。

 あの時祟り神を倒したことでハオの記憶が無くなり、神性も無くし、姿も消えた。

 今頃はその清き魂のまま、どこかの時代、どこかの国で生まれ変わっているであろう。

 

 何、心配には及ばん、あれは優しい子だ、きっとどこでもやっていく。

 それと……実はあるのだ……記憶が……。

 お前の持たせたノートだ、あれをハオの生まれ変わりには持たせてる。

 しかし今ハオがいつの時代の誰となっているか……ワシにはわからん、すまん。


 代わりといっては何だがお守りをやろう。

 恋愛成就の念をワシ自ら込めた、効き目があるぞ   敬具 稲荷神より」


                ☆


 「ちくしょー!!」

俺は訳もなく腹立って叫び、手紙を破り捨てた、何が恋愛成就だ、こんなんよりハオを返せ、ハオを返せよ。

 ノート?そんなもん何になるんだ、ハオじゃなきゃ、ハオがいなくちゃ、駄目なんだ。

 なんでこんな……涙が出るんだよ。


プルル……。

携帯が鳴る、こんな時なんだよ。

「○○警察の者です、落とし物の落とし主がお礼をしたいそうで、連絡しました」

あぁ、あの鍵ね。

 女子高生のお礼、ちょっと期待をしてしまう。

 でも、いくら似てても、あの子は、ハオじゃない。


 

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