[解説]第二席

この物語のひとつのテーマに、理でもって城を手に入れるというものがあり、今でいうところの法廷劇の要素を持っている。しかも相手は徳川家だから、国を相手に裁判を起すといった雰囲気の物語である。納得させるべきは徳川家だけではない。天皇の綸旨も手に入れなくてはならない。


この章で登場するのは荒川熊蔵という豪傑で、彼は講談速記本の世界ではスターである。身長二メートル以上ある怪力の持主で、二六二キロの鉄棒を一昼夜の間、降り回し続けることが出来る。最早人間ではなく重機といったところで、文句なしのスターではあるのだが、頭はあまり良くはない。彼の立てた城盗りの作戦も、城をくれなかったら江戸城にいる殿さんたちを皆殺しにし、二代目将軍秀忠の首を引っこ抜くというもので、すぐさま幸村が却下している。


ちなみに『轡物語』には、登場人物として後藤又兵衛と真田幸村が出てくるものの、あまり活躍しない。この二人は講談速記本の世界では一段格の違うヒーローで、この二人が本格的に動き出してしまうと徳川天下は覆ってしまう。だから二人は大人しい。

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