第2話 魔法使いの女の子……いや、女性が目を覚ましました

「え~っとこれはなんだ?」


 俺は止まった思考を動かすように、ひとり呟きながら確認する。

 人間は声に出したほうが確認になるのだ。

 代表例が指差し確認……って違う!

 現実から目を逸らさないで、ちゃんと現状を把握しないと……。


 まず、俺は何をした?

 確か俺はスマホゲームを探していたはずだ。

 そして、異世界戦争とかいう先着20名の怪しいゲームをインストールしてしまった。

 それから、自称神のセシリスとかいう神の怪しいチュートリアルから11連ガチャを回した。

 うん、間違ってもトラックに引かれたりした訳ではない。


 そして、俺が11連ガチャで引いたのは、たわし7つに、スキル鉄壁の身体、魔法使いシャーリー、それから王女ファリンに死者蘇生薬。


 そして俺の目の前に現れたのが、7つのたわしとビンに入った怪しい液体、そして、銀髪のハーフアップにゲームで見るような姫騎士のような女性、青髪ボブカットで、魔法使いのような恰好をした女の子……いや、女性。


 ……えぇぇぇえええええ!!


 これはまさかネット小説的な展開だろうか?

 いや、でも異世界に召喚されるって話はお気に入りの話でもあるけど、日本に異世界の人間が召喚されるってのは……。


「……」


 俺は倒れている女性二人を見る。

 コスプレした女性が俺の家に侵入……?

 ……いや、そんな訳があるはずがない。


 俺の家に侵入するメリットなんてないし……もしかして、どっきりとかか!?

 そろそろ『どっきり大成功!!』とでも書かれた看板を持った人が現れるんだろうか?


「ん、ん……」

 

 すると、銀髪の姫騎士のような女性がうめき声を上げる。

 ……やらしい。

 ……ってそれどころじゃない!


 と、俺が自分にツッコミを入れていると、王女だと思われる姫騎士ではない方の魔法使いだと思われる少女……いや、女性がむくりと起き上がりボーっとした目で俺を見てきた。


「や、やぁ、おはよう」


 俺は動揺のあまりおはようと挨拶をする。

 いや、おはようじゃないだろ!

 なんで目覚めの挨拶してるんだ俺!

 それに、今は寝る前にスマホをイジってたから夜だし!

 ……まぁそこはいいか。


 俺が心の中でもろに動揺していると、青髪の魔法使いは俺の事をジーッと見ている。

 俺はとりあえず合ってしまった視線を外せずに女の子を見つめる。


「……」

「……」


二人の間に無言の時間が流れる。


「きゃぁぁああああ!! 変態――んぐっ!?」


 俺は青髪の魔法使いに瞬時に駆け寄ると、俺は急いで手で口を塞ぐ。

 いや、決して襲おうとしているわけではない。

 俺の住んでいるアパートは壁が薄いのだ。

 夜中に叫び声と『変態』なんて言葉が聞こえたら通報されかねない。

 それにこんな子供……いや、見た目が子どもっぽいから一目でも見られたら誤解を真似いてしまうだろう。


 この青髪の魔法使いは子供のように背は小さいけど、胸は……少しはあるっぽいし、顔から察するにおそらく大人だと思う。

 子供にしては大人っぽ過ぎるし……あっ、最近の小学生とかはませているけど。

 でも、なんとなくだけど俺の直感が大人だとそう告げている。


「んー!! んー!!」

「落ち着け!! 静かにしろ!!何も危害は加えない!! それに俺もこの状況が分からないんだ!!」


 俺は手で青髪の魔法使いの口を塞ぎながら言葉を口にする。

 我がながら自分で思うけど、こんな状況では俺の言ってる事なんて信じられないと思う。

 こんな場面、誰かに見られたら、俺はムショ送りだろう。

 でも、信じてもらえないとどっちにしてもご近所さんに通報され俺はムショ送りだ。


 何とか説得しないと……俺玄関閉めたよな?

 ……大丈夫と願うしかない!


 俺はバタバタと暴れる青髪の魔法使いの口を塞ぎながら説得を続けると、少し疲れたのかようやく俺の話を聞いてくれた。

 そして、騒がないと約束した上で手を離す。


「私を攫ってどうするつもり!? だいたいここはどこなのよ!? 私は帝国軍と戦ってたはずなのよ!!」

「と、とりあえず落ち着け! 俺の知ってる事話すから! それから声は小さく」


 自分で大きな声出しててなんだが、ここは大きな声はNGだ。

 通報されてしまう。


 でも、都合のいい事に、お隣さんは寝ているか不在のようだ。

 これだけ大きな声だったら聞こえているだろうし、通報か苦情の一つでもありそうだけどないし。

 どうやら、ガチャで使い切ったと思っていた俺の運はまだ残っていたようだ。

 青髪の魔法使いは不服そうな感じで俺を睨んでいるけど、どうやら落ち着いてくれたようだ。


「あっ、ファリン様!?」


 落ち着い青髪の魔法使いは、いまだにうめき声をあげてからも目を覚ましていない銀髪の姫騎士の女性に気付いて声を上げる。

 ファリン……やっぱりあのガチャで出た王女の名前と一緒か……。

 だったら、この青髪の魔法使いはシャーリーなのか?

 というか、声は小さくでお願いします。


「ん……」


 俺がガチャで当たった名前と青髪の魔法使いが呼んだ名前が一緒だと思っていると、銀髪の姫騎士が再度うめき声を上げうっすらと目を開く。


 え……まさかまた大声上げて叫ばれるんじゃ……?

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スマホゲームから美女召喚 ~どうやら俺、異世界戦争に巻き込まれたようです~ リュウ @RYU_777

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