第2話 新しい命

 次は、うってかわって地球の話である。春風町という、ごく普通の田舎町だ。この町に住む白川という家族に、1人の女の子が生まれた。その子の名前は糸覇。世界の裏側から転送された、あの少女である。見た目も性格も変わり、残っている面影といえば魔力のみである。能力を残して、少女は別人に生まれ変わったわけだ。

 それから、糸覇には2年先に生まれた兄がいた。この兄の名前は隼人はやと。実はこの兄も異能力持ちなのだが、このことは本人も親も知らない。知っているのは神様だけだ。

 そして3年たち、また新しい命が生まれた。糸覇の妹だ。名前は朔見さくみ。このとき、兄は5歳、糸覇は3歳だった。2人とも喋り、歩くことができた。なので、よく遊んでいた。


「にーちゃーん!あしょぼ~!」


「いいよ、なにしてあそぼっか。」


「んー、なんでもいー!」


「じゃあ...、おにごっこは?」


「そーしよ、そーしよ!おにごっこ!」


「じゃあ、にいちゃんおにするから、はるちゃんにげて。」


「あーい!」


はるちゃんとは糸覇のことだ。お父さんがそう呼び始めてから、みんなに伝染したのである。

 兄貴の面倒見がいいものだから、お母さんはとても楽だった。ときどき喧嘩をして、泣きわめくこともあったが...。


「だーめ。かたづけしてるの。」


「やだぁー。はるちゃんもあしょぶ~!」


「だめだって。」


「いやぁーあ!あしょぶのー!わぁあぁ~」


とうとう泣き出した。さすがの兄貴も困って、お母さんを呼びに行った。


「おかーさーん!はるちゃんがー!」


「はいはい、ちょっと待ってね~」


さすが親子だ。これで通じるのである。


「ほら、はるちゃん。おいで。」


「うう~ぐすっ...」


「どうして泣いてるの?」


「にーちゃんがぁ...。」


「ぼくはね...、かたづけしてた。そしたらはるちゃんが、ぼくがあそんでるっておもって...。」


「そう....。はるちゃん、おにいちゃんはお片付けしてたって。」


「ぐすっ...おかたづけ...?」


「うん、はるちゃんも一緒にしておいで。」


「そしたら...にいちゃんあしょんでくれるの...?」


「いいよ、かたづけしたらあそぼう。」


「やったぁ!おかたづけする~!」


なんとも微笑ましい、ほのぼのとした家庭である。しかし、この無邪気な少女には恐ろしい力が宿っている。それを初めて知るのは、ずいぶん先。中学二年生の夏である。

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シナリオの運命 栞奈 @Itha

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