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「死んでくれて、やっと、終わった」
そう、音が鳴る。声とも認識したくなかった。私は彼の『泣き顔を隠すところとか、個性的で独特な思想を持つところとか、好きなことに没頭し過ぎて倒れることとかーー』そんな嫌いな部分を考えた自分を掻き消して、いい人ぶって『愛してる』の言葉を紡ごうと考えたのに。
涙を見られることを異様なまでに嫌った彼が、私の死を想って泣いたのだと思ったのに、全てが喜びの感情だったというのか。
憎悪は途絶えず、嫌いな部分だけが浮き彫りに。
『どうして、遺書を残さなかったの』
冷たい言葉が吐き出される。
貴方となる人物は彼なのだと思っていた。死んで欲しかったからかもしれない。だからこそ色んな言葉を考えた。
『彼の嫌いな部分を述べた遺書を』
けれど、向けるべき相手は私自身だったのだ。最期まで残った感情は後悔を孕んだ自分宛のそれであり、そんな現実が胸の奥を抉るように突き刺さるーー……愛を訴える偽善的な感情さえも失われていく。
『ーーーー』
静かに、瞼を落とした。
ーーなんのために、最後の言葉を考えたのだろう。
Fin
憎悪 名霧 @yuto_nakiri
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