柴田優乃のあやかし帳

癒月サクラ

~始まり~

1ページ目:優乃と一人の男子生徒


柴田しばた優乃ゆの


春、今日から憧れの高校生。

この『公立 桃花とうか学園』は普通の学校......っといっても比較的に女子が少ない。だから、少しだけ後悔しているところもある。


(でもせっかくアパートの近場だしねぇ...)

と、学校へ歩いていく。

学校に近づくにつれ、人が多くなってきて優乃は少し緊張気味になっていた。


(わぁ、人がたくさんいる......。知り合いはいないか、私が遠くの学校に行くって決めたんだし当然だよね)


「っと!」


考えながら歩いていると、誰かとぶつかってしまった。

優乃は相手にとっさに謝る。


「うわぁっ! すいません! 怪我はありませんか?」

「大丈夫だよ。君こそ、怪我はない? 僕もちゃんと前見なかったから...」


相手は優しそうな人だった。

顔はかなりの美形で「女の子?」というぐらい可愛い顔をしていた。


「あっ、そろそろ入学式始まっちゃうから体育館行っといた方がいいよ」

「はい、ありがとうございます。」

「ははっ...そんな固くならなくていいのに。同じ一年生だからっ」


カチカチになっている優乃のことを悟って笑いながら言った。

そして、その男子は別れ際にー。


「僕、宮谷みやたに修也しゅうやです。一緒のクラスだったらよろしく」

「あっ、わっ私は柴田優乃です」

「じゃあまた、優乃」

「うん、宮谷君」


体育館へ向かう。

(ん? さっき宮谷君、私のこと下の名前で呼んだ!?)


今頃気付いた優乃は頭が真っ白になった。


  *     *     *


入学式が終わり、みんなが教室に入っていく頃。


(え~と、私は二組だね)

教室に入り、黒板に貼ってある座席表を見る。縦横六席ずつでここの教室は黒板側が南で窓側が西となっている。


(一番後ろかぁ~、しかも廊下側......)


「あのっ」

「なに?」


席に着くと誰かが声をかけてきた。


「優乃、クラス一緒になってたね」


入学式前に会った、あの修也が立っていた。

数分後、話は弾み優乃は問う。


「......で、宮谷君、知り合いいるの?」

「うん、小中ってここら辺の学校だったからたくさんいるよ。優乃は?」

「私はここら辺の学校じゃなかったから全然いないよ」



優乃がそういうと修也は顎に手をあて考え込む。そして何かひらめいたように言った。


「優乃、友達になろっ」と。

勿論、突然のことだったが考える必要はなかったので了承した。


「せっかく友達になったんだし、下で呼んでよ。あっ嫌だったら無理しなくていいから」

「わかった、ちょっと呼んでみるね。......修也...君」

「うん。まぁ時間が経ってきたら“君”はずして呼んで!」

「それはもう少し時間がかかりそう」

「大丈夫。待ってる」




主に入学式がメインだったのですぐに学校生活一日目は終わった。


(修也君、なんかグイグイきてたな~)

帰り道、まだ桜が咲いている一本道をゆっくりと歩く。


  *     *     *


お父さん、お母さん......


私、ちゃんと学校生活送っているよ......


おじいちゃんとおばあちゃんは相変わらず元気だよ。


まだこの大きい「赤い手帳」は書き込もうとしても消えるから何なのかわからないけど、大切にするね......

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