11. 砂浜の乱戦
「女王様の〈氷結〉だ」
徳間隆康が周囲の者たちに告げた。
「近寄るエネミーは片っ端から凍らせられるから、ここにいても無駄だな。
よそにいった方がいいぞ」
そういい、自分自身も槍を担いでその場をあとにする。
近場にいた者たちが、ぞろぞろと左右に分かれて移動しはじめた。
ふかけんの新入生たちは、
「周囲に誰もいない場所まで移動して、思う存分にやれ」
と、事前にいい聞かされていたのだ。
その方が効率的であったし他の探索者の邪魔になったり、とばちりを受けてもつまらない。
「ひゃははははっ!」
早川颯は早川静乃の隣で〈狙撃〉スキルを連射しながら、声をあげて笑い出していた。
「撃っても撃ってもエネミーがいなくならないしっ!」
颯は静乃とは違い〈魔弾〉のようなレアなスキルは所持していなかったが、〈狙撃〉スキルの扱いには熟練している。
その颯にしてみても、これほど大量のエネミーを実際に目の当たりにするのはこれが初めてのことだった。
〈狙撃〉スキルを常用する場合、基本的な戦法はヒット・アンド・アウェイなのである。
一度にこれほど大量のエネミーを始末した経験はなく、ましてや先ほどからエネミー大量殺戮行為によって大量の経験値が身内に入ることによって気分が高揚している。
一種のトリガーハッピー状態に陥ったとしても、不思議ではない状況だった。
「……うるさいなあ、もう」
すぐ隣で大声で嘲笑をしている颯の様子に軽く眉をひそめながらも、早川静乃は淡々とラッコ型エネミーを〈狙撃〉し続けていた。
〈狙撃〉スキルの攻撃範囲はごくごく狭い。
その意味で、他の長距離攻撃系や広域攻撃系スキルと比較すると、かなり地味なスキルであった。
「おっー!」
「いやーっ!」
留学生たちは、長距離攻撃系スキルや広域攻撃系スキルが炸裂するたびに大声を出して喝采を送っていた。
やはり、日本人とは違って全般にオーバーアクションだなあ、と、白泉偉は思う。
そうした大規模攻撃が可能なスキルのほとんどは、見た目が派手なこともあって留学生たちには非常に受けがよかった。
「いつまでも喜んでないで、そろそろぼくたちの用意もしておかないと」
偉は海の方を指さしていった。
そういったスキル攻撃を潜って生き延びたエネミーたちは、すでに波間に一体一体区別して目視できる距離にまで近づいている。
「やー!」
留学生たちは素直に偉の言葉に従い、海岸線に沿って適当な距離を置いて散らばりはじめる。
聞いたところでは、留学生たちの中にはショット系やボルト系の遠距離攻撃系スキルの持ち主も何名かいるそうだが、その有効射程距離はせいぜい百メートルにようやく届くくらいに収まる程度であるらしかった。
そのせいか、留学生たちの多くはああり緊迫感がないように見える。
中には、興奮したからか明らかに有効射程圏内に入っていないのにも関わらず、そうした遠距離攻撃系のスキルを発動させてむなしく海上に炸裂させている者もいた。
まあ、事前に間合いを確認するという意味では、あれも無駄にはならないか、とか、偉はそんなことを思う。
「ここまで離れれば、他の人の邪魔にはならないかな?」
「うん。
たぶん、大丈夫じゃない?」
草原水利、草原真砂、一陣忍、双葉アリスの四人は長老徳間隆康の指示に従う形で人の集団からかなり離れた場所にまで移動していた。
〈テイマー〉である水利が擁するエネミーたちの攻撃方法はかなり大雑把であったし、そうしたエネミーのやり方に慣れていない者が近場にいると、思わぬ事故が発生する可能性もある。
それに、人が密集する場所から少し距離を取ったとはいっても、今回の場合はエネミーの数自体が膨大でもあった。
おそらく、自分たちなどが精一杯暴れたとしても、大勢には大した影響を与えられないのではないか。
直前に絶大な威力を持つ攻撃スキルが連発された様子を目撃していたこともあって、水利はそんなことを考えていた。
「もう一度確認するけど、わたしらは基本的に待ちの姿勢な」
忍が、他の仲間たちにそういった。
「砂浜付近まで到達した子たち叩くんだよね?」
アリスが確認する。
「そう」
忍は頷いた。
「わざわざ動きが鈍る海の中に入らなければならないメリットが思いつかないしね」
「基本的に、無理はしないでおこう」
水利も、そういう。
「撃墜数はうちの子たちとアリスちゃんでかなり稼げると思うし、忍と真砂はわたしたち二人の護衛ということで」
先ほどからの長距離攻撃スキル連発の影響でか、真砂も〈ヒール〉のスキルを生やしていた。
この四人中の半数にあたる二人が〈ヒール〉持ちということになり、よほど無理な真似をしなけれ、危ないことにはならないはずでもある。
「それで、なにか危険なことになりそうだったら、水利が〈フラグ〉を使って安全圏まで逃げる、と」
忍が確認すると、水利は無言のまま頷いた。
通常、〈フラグ〉のスキルはパーティ単位の移動手段として使用されることが多いのだが、熟練すれば、今回のような大人数パーティ内での小集団を選んでの移動も可能である。
水利がそこまで〈フラグ〉を使いこなせることは、つい先ほど試したばかりだったの、確実なことでもあった。
危険を察知したら、すぐに人が多い場所まで退避して身の安全を確保する、ということも、先輩方にたびたび指導されている。
エネミーたちが海岸線から百メートル以内に入ってくると、海上に炸裂するスキルが一段と増大した。
飛び散る海水と水蒸気によって、その周辺の見通しが一気に悪くなる。
そうした視界を遮る煙を乗り越えて、それでもいっこうに減ったように見えないラッコ型エネミーの群れが速度も変えずにこちらにむかって近づいて来ていた。
エネミーとは、迷宮内に発生する擬似生命体の総称である。
そうした擬似生命体がなぜエネミーと呼ばれるのかといえば、迷宮内で発生するほとんどの擬似生命体が人間の姿を認めた途端、まっしぐらに人間にむかって攻撃行動をとる習性を持っているからであった。
それら、人間という種全般に対する憎悪に近い行動原理がいったいなにに由来しているのか、これまでの研究では明らかにされていないのだが、とにかく、エネミーたちはそういう習性を持っている。
波間に浮かんでこちらにむかって泳いできているラッコ型エネミーの群れも、その例外ではなかった。
野間秀嗣、槇原猛敏、秋田明雄の三人は、お立ち台設営作業中に顔を合わせたことから、なんとなくその流れで今回行動をともにすることになった。
それぞれの理由でこれまで固定的なパーティメンバーを作ることがなかった三人でもある。
「〈ヒール〉持ちは、あっきーと秀嗣の二人か」
甲虫の戦斧の柄を肩に乗せて、猛敏が呟く。
「三人中二人が〈ヒール〉持ちなら、かなり安定するな」
「とはいえ、そのうちおれは、たった今、〈ヒール〉が生えてきたばかりだけどな」
明雄がいった。
「使い慣れていないんだから、あまりあてにされても困る。
期待に添えないかも知れないから、そのつもりでいてくれ」
この頃には、猛敏の過剰に好戦的な態度はふかけんの中で広く知れ渡っていて、明雄はそのことをあてこすった形である。
「おう」
そこことをどこまで理解できているか、猛敏は頷いた。
「せいぜい暴れてやるわ。
聞くところによると、今回のエネミーは例のバッタよりも少し強い程度だというし」
「今回の場合、個体の強さよりもその数が問題でありますよ」
珍しく渋面を作った秀嗣が、控えめに指摘をした。
「単純な攻撃力よりも、その継続性が重要なわけでして」
つまりは、その重さゆえに動きが大振りになってしまう、甲虫の戦斧を使うことは不適切ではないかといいたいわけだった。
「わかっている、わかっているって」
しかし、猛敏は遠回りにな換言を軽く聞き流した。
「とにかく、この三人でお互いの背中を守りながらできるだけ粘る。
それでいいな?」
「ほいよっ!」
徳間隆康はかけ声とともに〈雷撃の方天戟〉を一閃させる。
すると、海上すれすれの高さで、隆康を中心とした半径二十メートル以内の扇型の空間に、かなり不自然な形の放電現象が発生した。
その放電に巻き込まれたラッコ型エネミーの多くがその場で黒こげになり、直撃を免れたエネミーも感電してその動きを止める。
とにかく、かなり広い範囲にいたエネミーが死ぬか行動不能となった。
迷宮に入るようになってからそろそろ八年になる隆康は、〈薙ぎ払い〉などの基本的なスキルについてもかなりのところまで熟練させている。
隆康は、早川静乃や金城革のようなレアなスキルこそ持っていなかったが、代わりに自身が持っているごくありふれた、基本的なスキルをとことん育てることで自身の攻撃力を高めていた。
単なる〈薙ぎ払い〉のスキルも、ここまで育てれば攻撃範囲が格段に広くなるということは、一般にはあまり知られていない。
ほとんどの者が最初におぼえるような基本的なスキルを根気よく育てるよりも、最初からもっと派手な効果を持つ別のスキルに頼ってしまう傾向があるからだ。
しかし、今回のような海上では、攻撃範囲を拡大できるところまで育てた〈薙ぎ払い〉スキルと、それに〈雷撃の方天戟〉というドロップ・アイテムとの組み合わせは、想像した以上に相性がよかった。
現在普通に市販されている探索者用の保護服は、過剰な開発競争の果てにかなりのオーバースペックになっている。
絶縁性能なども普通に付与されているので、被害が他の探索者に及び心配もまずなかった。
「おっと」
目の隅で、ラッコ型エネミーがそろそろ海岸線に到着しつつうえることを認めて、隆康は〈盾術〉の機能の一部を発動させる。
〈薙ぎ払い〉スキルと同様に、この〈盾術〉スキルもあまりにも普遍的なスキルであるがゆえに軽視されがちであったが、使いこなしさえすれば実に多様な可能性を秘めていたりする。
今回、隆康はそのうち、
「装備している盾の防御力をパーティ全体に付与する」
という〈盾術〉スキルの一機能を発動させていた。
現在、隆康が左手に持っている〈丸亀の盾〉も〈雷撃の方天戟〉と同じくドロップ・アイテムであり、特に水や氷属性の攻撃を大きく減衰させる機能がある。
盾としての防御力も、ドロップ・アイテムとしては極端に優れているわけではなかったものの、少なくとも人造の防具などよりを遙かに超絶した堅固さを誇っていた。
これで、もっと強力な攻撃力を持つエネミーならばともかく、ラッコ型エネミーが持つ程度の攻撃力ならば、隆康がこの〈盾術〉スキルの機能を発動し続ける限りは、ほとんど傷つくことがないはずだ。
ま、あとはせいぜい暴れてみせろや、下級生ども、と、隆康は思う。
「ふんっ!」
一橋喜慶が気合いを込めてモーニングスターの錘を振りおろすと、喜慶の前方にある水面が大きくたわんだ。
隆康が〈薙ぎ払い〉に習熟することによって広大な範囲を攻撃することが可能になったように、この喜慶も長く近接戦闘の経験を積むことによって広範囲な面での攻撃がスキルによって可能になっていた。
重たい打撃武器を長い間使い続けることによって拾得できるようになるこのスキルは、〈重圧〉と呼ばれている。
今回のように多数のエネミーを一度に相手にする場合には、なかなか重宝するスキルだった。
事実、たった今、喜慶が行った〈重圧〉スキルの一撃によって、数十からことによると百匹以上のラッコ型エネミーが一度に死傷している。
なにぶん、その下にあるのが水面であったため、その攻撃を受けても圧死していないエネミーも多かったが、そうして生き残ったエネミーも多くは衝撃をまともに受けて気を失っていた。
そして、動けなくなったエネミーに対して、喜慶はまるで関心を持たない。
自分を攻撃してくる可能性のないエネミーなぞ、そのまま波間に漂うままに任せて、もっと他の、暇な誰かが相手にすればいいのだ。
喜慶は〈重圧〉スキルを連発して、えんえんと大量のエネミーを戦闘不能な状態にし続けていた。
松濤女子学園の現役組は、遠距離攻撃組と近接戦闘組の二手に分かれて別行動をしていた。
このうち前者の遠距離攻撃組は三メートルほどの間隔をあけてお立ち台の上で列を作り、迫り来るエネミーたちを個別に狙撃をしている。
遠距離攻撃組も、ショット系やブリット系のスキル持ちならびに、それ以外の和弓や洋弓を用いた有効射程距離がより長いスキルの持ち主とが混在している。
両家の子女が多く入学しているからか、松濤女子に入学する者の中には葵と同様に、幼少時からなんらかの武道を習っている者が他校と比較すると格段に多かった。
和弓や洋弓を構えている女子たちが使用しているのは、〈梓弓〉と呼ばれているスキルであった。
これは、なにもつがえていない弓の弦を引き絞り、放つことで発動する攻撃スキルであり、その射程は持っている獲物によりかなり変わってくるのだが、五十メートルから二百メートル前後にまで達することもある。
いずれにせよ、ショット系やブリット系のスキルなどよりはよほど遠くまで攻撃を届かせることが可能であり、つまり松濤女子は遠距離の〈梓弓〉スキルと中距離のショット系あるいはブリット系スキル、近接戦闘系の実質、三段構えの迎撃陣形を独自に構築していたことになる。
近接戦闘組はそのやや前方、海水が膝まで浸る程度の距離まで出て、そこでエネミーを迎撃すると予定であった。
松濤女子のOGである藤代葵は、その近接戦闘組よりもさらに前方に出て、流麗な所作で薙刀を振るっている。
葵の周辺で風音が鳴るたびに、エネミーが次々と刃によって斬り伏せ、あるいは柄で叩きのめされていく。
ラッコ型エネミーは最大のものでも全長が一メートル三十センチほどであり、細長い胴体をしている。
特に水上ではかなり素早かったが、大きさの割には華奢であり、打たれ弱い。
現在の葵の力量であれば、特に身構えることもなく、近づいてきたラッコ型をことごとく始末することが可能でもあった。
ラッコ型エネミーを海水で濯ぎながら、葵は黙然とエネミーを殺害し続けた。
「つまらん」
葵と同様に、浅瀬に入って黙然と得物を振るっていた探索者いた。
榊十佐という、若い剣士である。
手持ちの剣の中で一番気に入っていない物を選び、この日はそればかりを振るっていた。
十佐ほどの腕にもなればラッコ型ごときのエネミーなどはそもそも刀の斬れ味を頼りにするまでもなく始末が可能である。
事実、先ほどから十佐が手にしていた刀の切っ先はエネミーの血糊がべったりと付着して、刃物本来の鋭利さは失われていた。
それでも、十佐はその刀を鈍器として振るってラッコ型エネミーを黙々と始末し続けている。
「つまらん」
また、十佐は心中で繰り返した。
普段相手にしているエネミーと比較して、このラッコ型はあまりにものろくて脆い。
一言でいえば、弱い。
これでは、戦いにもなっていない。
単なる作業ではないか。
「わははははっ!」
対照的に、この事態を面白がっている者もいる。
「そおっいっ!」
柊周作はそんなことを叫びながら、自分の〈フクロ〉からなにやら円筒状の物体を取り出して〈投擲〉スキルの助けも借り、自分の遙か前方百メートルほどの海中にまでその物体を届かせる。
その物体は、海中に没してしばらくしたかと思うと突如海水を五メートル以上も隆起させて凄まじい轟音を周囲に響かせた。
その爆発によって発生した衝撃波をもろに受けたエネミーが、かなり広範囲に渡ってその場で失神してぷかぷかと水面上に浮かびあがってくる。
命までは失ってはいないのかも知れないが、ここまで無抵抗な身になればあとは他の探索者のいい標的になるだけであった。
こうした衝撃波を利用した漁法は、現在の日本では禁止されている。
この迷宮内は実質的には一種の治外法権になっているため、特に見咎める者もいなかったが。
いずれにせよ、諸手をあげて歓迎できる手段でもなかった。
「わははははっ!」
柊周作は笑い声をあげながら、〈フラグ〉を使って次の場所へと移動する。
特に目的があるわけでもなく、移動する先は周作の気まぐれによって決定していた。
スキルだの戦いだのと、なにをまどろっこしいことをやっているのだ、と、周作は思う。
所詮、エネミーなど倒してなんぼの世界ではないか。
使える物は、なんでも使えばいいのだ。
手段を選んだって、誰が褒めてくれるわけでもない。
なんのために文明の利器があると思っているのだ。
周作にいわせれば、他の探索者たちは自分の美学のために効率的な方法を最初から排除している、頭の固いやつらということになる。
そのあとも周作は手持ちの爆弾をあちこちで使用し、それが尽きると今度はエネミーの密集地に投網を投じて、エネミーたちを文字通り一網打尽にしはじめた。
ふかけんの中には、こうした変わり種もいるのであった。
一橋喜慶に誘われて参加した形の猿渡朋春も、波打ち際で愛用の棍を振るっていた。
朋春は慎重百六十センチほどしかない、短躯の中年男であったが、その短い手足を持った中年男がこの棍を扱わせると、目に留まらないほどの速度で正確にエネミーを打ち据える。
この長さ二メートルほどになる朋春の棍はやはりドロップ・アイテムであり、特筆すべきよな特性はないものの、ひたすら重くて頑丈な金属でできていた。
その棍を朋春は累積効果によって強化された筋力をフルに活用して、軽々と扱う。
朋春はご機嫌であった。
基本的に、単純な性格の朋春は、自分の能力を全快にできる場があることを喜ぶ性質がある。
無数のエネミーがひしめくこの場の状況は、朋春にしてみればかっこうの暴れ場所なのであった。
〈暴風〉の異名の原因となったように、朋春は目にも止まらぬ早さで棍を振るい続け、あまたのラッコ型エネミーを片っ端から叩き潰していく。
単純であるがゆえにエネミーとの戦いを心の底から楽しんでいる朋春は、この状況がいつまでも続けばいいのにとさえ思っている。
白泉偉は、やはり波打ち際でエネミーに対峙していた。
だいたいは、近づいてきたエネミーを足蹴にしてその衝撃によって命を奪っていたのだが、すぐそばを通り抜けて砂浜にまで到達したエネミーに対しては〈フクロ〉から取り出した得物を投げつけることで対応している。
海上にあるエネミーに対して得物を投げつけないのは、あとで得物を回収しなければならない都合があるからだった。
偉がなにかを投げつけるたびに、エネミーの胴体を半ば分断してくないか手裏剣が砂地にのめり込む。
すると、たまたまそばにいた留学生たちの間から歓声があがった。
〈投擲〉スキルが珍しいのかな?
とか、当初の偉は思ったものだが、すぐにそれは勘違いであることに思い当たった。
偉の行動を見ていた留学生たちは、
「ニンジャ! ニンジャ!」
としきりに連呼していたのだ。
昇殿顕子の歌声はここまで届いていた。
あの女、と、夏川史緒は思う。
ご機嫌じゃねえか、と。
今日の顕子は、魔法少女が主役を務めるテレビアニメ関連の曲ばかりを選んでいるようだ。
史緒はそのすべてを知っているわけではなかったが、歌詞を聞けばどういう種類の曲なのかは容易に想像がつく。
スキル〈応援歌〉の効果は歌う曲よって効果が変化することはない。
よって、曲目の選択はスキル所持者の意志によって好き勝手に選択されることになる。
好き勝手にリサイタルを開催することによって一度に大勢の探索者にバフをかけるのが、〈応援歌〉というスキルの真骨頂であった。
史緒が不機嫌な理由は、特定のエネミーに対してデバフをおこなう自分のスキルが、このような大勢のエネミーを相手にする場合にはあまり使いどころがないせいだ。
史緒の〈呪術〉スキルは、どちらかというと強力な単一のエネミーを相手にしたときにこそ、真価を発揮する。
それはつまり、今回の状況とは真逆の状況下なわけで。
これでは、と史緒は思う。
自分も、他の有象無象と同じく、単調な肉体労働にいそしまなくてはならないではないか。
史緒とて、これまでにそれなりに経験を積んできた探索者であったから、累積効果の恩恵はそれなりに受けてきていた。
つまり、多少の肉体労働は苦にならないくらいには身体能力が強化されていたわけだが、そういう地味な仕事は自分の性分には合わないと、史緒自身は思っている。
では、史緒が満足するような状況はなにかというと、つまりは自分のために他の探索者が奉仕してくれるような、つまりは自分こそが主役になれる状況であった。
残念ながら、愛用のドロップ・アイテムを振るう現在の史緒は、その他大勢の探索者のひとりであるのに過ぎない。
先ほどから史緒が先ほどから振るっている得物は〈九尾の鞭〉というドロップ・アイテムで、その名前からも容易に連想できるように狐型のエネミーを仕留めたときにドロップしたものだった。
角川夏希は海岸を疾駆しながら、右手に持っていた曲刀で次々とラッコ型エネミーを斬り伏せていく。
攻撃には使用していなかったが、左手にも、こちらは両刃の直剣を持っている。
この攻撃に用いることはない直剣は、装備していると移動力にプラス補正がかかる〈走狗の剣〉といい、もっぱら攻撃に用いている片刃の曲刀は装備していると攻撃力にプラス補正がかかる上に一定確率で攻撃したエネミーに状態異常を引き起こす、〈毒爪のシミター〉いう。
その効果からわかる通り、どちらもそれなりの性能を持つドロップ・アイテムだった。
この二種類のアイテムを入手したことによって、夏希は、女だてらに前線で遜色のない活躍ができるファイターとして活躍できている。
夏希の肉親である史緒などは、
「この、肉体労働者風情が」
などと吐き捨てるように形容するのだが、夏希自身はその肉体労働も、実のところ、あまり嫌ってはいなかった。
もともと体を動かすのは好きな方であったし、なにより、自身の手で状況を切り開いているという感触は、他では味わえない。
アイテムの補正効果も手伝って、足場の悪い場所でありながらも夏希は速度をいくらも緩めることがなく海岸を駆け抜けていく。
そして、すれ違いざまにそこにいたエネミーたちを斬り伏せていく。
男性の探索者と比較すると体重では劣る夏希は、そうして走る勢いも武器にしてエネミーに対応していた。
夏希が駆け抜けたあとには、エネミーの死体だけが点々と残されている。
何種類ものエネミーを使役する草原水利、ショット系ならびにバレット系のスキルをいつの間にか多重発動することが可能になっていた双葉アリスの二人がいるおかげで、一陣忍と草原真砂はかなり楽をすることができた。
基本的に、その二人の攻撃をくぐり抜けてきたエネミーを順番に始末していくだけでよかったからだ。
この四人組はこの時点でその経験と人数に比較して強力な攻撃力を獲得しており、ラッコ型エネミー程度の相手であればいくら数で押されようともびくともしなかった。
事実、海岸でこの四人組に近づいたラッコ型エネミーは、例外なく殲滅されている。
同等かそこの四人組以上の攻撃力を持つ個人ないしはグループは、この海岸にも無数にいたのだが、その経験の浅さまでを考慮して考えると、この四人組はやはり突出した存在であるといえた。
本人たちは、そこことをまるで自覚していなかったが。
野間秀嗣は膝のあたりまで水中に没する位置で棒立ちになり、両手に柄がカーボンでできていた軽量の槍を両手に一本ずつ持ち、ラッコ型エネミーに対応していた。
鈍牛の兜のおかげで移動に制限がかかっている状態でもあり、下手に動くよりは相手の方が近寄ってくるのを待ちかまえていた方がいいだろうと、そのように判断したためであった。
いくつか〈フクロ〉の中に収納していた武器のうち、扱い慣れていない軽量の槍をわざわざ選択したのは、この状況では一撃の威力を重視するよりも手数を増やす方が有効であろうと、そう判断したためだった。
幸いなことに、改造した鈍牛の兜は通常よりも広い視界を確保してくれるし、秀嗣はすでに〈両手持ち〉のスキルも獲得している。
この条件をフルに活かすとすれば、こうするのが一番であると秀嗣は思ったのだった。
この秀嗣の判断が決して間違ってはいなかったことは、しばらく試してみるとすぐに確認することができた。
秀嗣は決して焦ることなく、大量に近寄ってくるラッコ型エネミーの一体一体を見定めて軽量の槍の穂先を振りおろす。
ラッコ型は、単体ではそんなに強いエネミーではなかったので、攻撃が命中しさえすればそれで無力化することができた。
今回の場合、脅威となるの個々のエネミーではなく、その数なのであった。
しかし、今回の秀嗣はソロではなく、大勢の仲間がいる。
すぐそばに槇原猛敏と秋田明雄の二人がいるはずであったし、それ以外にも大勢の、何百人という探索者が別個にラッコ型に対処しているはずであった。
自分だけで対処する必要はない。
そういう思いは、秀嗣の気持ちをずいぶんと軽いものにした。
秀嗣はリラックスした気持ちのまま、しがし両手は休むことなく動かし続け、次々と自分に近寄ってくるラッコ型を叩き潰していく。
これは、あれだな。
とか、秀嗣は思う。
えんえんと続く、モグラたたきのゲームでもやっているような感じだな、と。
気楽にやっている割には、いや、気楽にやっているからこそ、なのか。
慣れも手伝ってか、秀嗣の腕の動きは加速度をつけて速くなっていき、結果的に近寄ってきたラッコ型をほとんど漏らすことなく、長時間、撃破し続けていた。
一方、秀嗣ほど気楽になれなかったのが槇原猛敏であった。
なんといっても、猛敏があえて使い続けている甲虫の戦斧は、現在の猛敏にとっては重すぎるのだ。
結果、猛敏の動きも次第に鈍いものになり、ラッコ型エネミーの撃破率はかなり落ちている。
先ほどから見ていると、猛敏は秀嗣の三分の一から四分の一程度しかエネミーを撃破していないのではないか。
とか、近くで見ていた秋田明雄は思った。
柔軟性の差だな、と、明雄はそんなことを思った。
猛敏は、どうもひとつの方法論に固辞しすぎる傾向がある。
状況により、最適な方法を考えるという発想がないのだ。
いや、早い段階で、あの戦斧という初心者にとっては強力すぎるアイテムを入手してしまったせいで、その成功体験にばかり拘るようになってしまったのか。
いずれにせよ、このままではこの猛敏は、今後の成長が期待できないのではないか。
とか、明雄は思う。
明雄自身は、猛敏以上秀嗣以下の撃破数をなんとか維持していた。
秀嗣に倣って、足を止めたまま自分に近寄ってくるエネミーだけを攻撃している。
そうすることによって余計に体力を消耗することことができたし、なにより、〈隠密〉のスキルを使用し続けてさえいれば、エネミーの方は自分が攻撃されたその瞬間まで、明雄の存在には気づかないのだった。
なにげに強力だよなあ、このスキル。
とか、明雄は思う。
つまり〈隠密〉は、ネエミーにとって明雄自身を透明人間にも等しい存在にするスキルなのだった。
すべてのエネミーに通用するわけではないらしいが、あまり強力なエネミーではないというこのラッコ型には十分に通用する。
この場では、この事実は強力無比な力となった。
ときおり、猛敏の周囲に集まってきたエネミーを軽く蹴散らしてあげながら、明雄はそんなことを思っている。
大野相馬と両角誠吾は、やはり二人で組んで行動をしていた。
それぞれのスキル構成を考慮した上で、この二人は海中にはいることなく砂浜まであがってきたエネミーのみに対応することを早くから決断している。
具体的にいうと、誠吾はショット系やバレット系のスキルを多用し、相馬はそうした誠吾のスキルで撃ち漏らしたエネミーを〈投擲〉かあるいは直接的な武器攻撃によって始末していた。
基本的に海中ないしは海岸線付近にいた他の探索者が討ち漏らしたエネミーを掃討するわけであり、従ってあまり忙しくはなかった。
あくまで、もっと前に出ている探索者たちと比較すれば、ではあるが。
最初のうちは、それでも上陸してくるエネミーはかなり多かった。
それこそ、相馬と誠吾が全身全霊を込めて対処しても、そのすべてを始末できないほど大量のエネミーが上陸していた。
探索者たちの攻撃もかなり苛烈なものであったが、それ以上にエネミーの絶対数が多かったのだ。
焦げたもの、凍ったもの、単に麻痺しているものも含めて、大量の生きたエネミーの体が波打ち際に寄せられる。
それを目的にいつ間にか発生したスライムが、片っ端からそうしたエネミーたちを透明な体で包んで消化していく。
迷宮の掃除屋、スカベンジャーたるスライムという特殊なエネミーは、自身が消化可能な物体でありさえすればその生死には関心を持たなかった。
麻痺していたり、あるいはどこかを負傷して素早く動けなくなったエネミーについても等しくその透明な体で包み込み、消化しようとする。
だから相馬と誠吾が相手にするのは、そうしたスライムにその身を絡め取られることなく、元気な状態で上陸することに成功したエネミーばかりだった。
しかし、時間がたつに連れて、上陸するところまでこぎ着けるエネミーの数は減っていく。
度重なる攻撃を受けてエネミー自体の数が加速度的に減少してきたため、結果として探索者たちによる攻撃の密度が濃くなったためでもあろうし、それに、それだけ大勢のエネミーが始末されたことによって累積効果の影響を受け、探索者側が徐々に強力な存在になっていったことも関係しているだろう。
いずれにせよ、いかに大量のエネミーであっても、その数が有限である以上は、十分な準備を整えた探索者の集団には適わないということになる。
「こんなもんかな」
ふかけん所属、二回生の新鷄(しんちょう)兼平は周囲を見渡して状況を把握した。
この兼平は、他の多くのふかけん上級生と同じく、下級生の育成にはあまり熱心なタイプではなかったが、探索者としてはそれなりに仕上がっていた人物だった。
遠距離攻撃系、近接戦闘系、それに支援系のスキルもまんべんなく生やして習熟させており、そのキャリアと比較すると平均以上の働きができる。
なんでも一通りのことができるということは、いいかえれば器用貧乏で特徴がないともいえるのだが、兼平自身はそれで困ったことがない。
周囲を見渡してみたところ、どうやら事態はすでに収束にむかっているようだった。
あれほどいたエネミーのほとんどはすでに死体となっているか、それともスライムによって消化されているかである。
生き残っているエネミーたちを、探索者が探して駆け回っているような状況だった。
状況を把握した兼平は、〈フラグ〉のスキルを使用して砂浜のかなり後方にある休憩所に移動する。
「調子はどうですか?」
兼平はそこで、BBQセットにむかって炭火を調整している人たちに声をかけた。
「こっちはそろそろ、終わりが見えてきたんですけど」
「それでは、そろそろ焼きはじめますか?」
「お願いします」
お互いに慣れたやり取りであった。
BBQの準備をしていたのは、公社経由で確保しておいた人たちであった。
こうした特殊階層が発見されるのは別にこれがはじめてでもなく、公社の側もなにを準備するべきなのかわきまえている。
仮説トイレや売店はもとより、今回のようにあまり強くはないエネミーの大群を相手にするために集まってくれた協力者たちにむけた、返礼代わりの飲食の用意をしてくれる人手も仲介してくれるのだった。
実際、これだけ大勢のエネミーを倒したといっても、エネミーの強さからいえばドロップするアイテムもそこそこのものであり、ふかけんの経済的な収支としてとんとんか若干の赤が出るくらいになるだろう。
こうした際、経理などを任されることが多い兼平は、そんなことを思う。
たとえ経済的には赤字であっても、特にキャリアが浅い新人たちにとっては、いい経験になる。
だからふかけんでは、こうした機会があるたびに、赤字を覚悟してでも部外者も含めた大勢の人を集めて、こうした大規模攻略は積極的に行うことにしていた。
さて、と。
兼平は思い、〈フクロ〉の中から貸与された小型無線機を取り出して徳間隆康を呼び出した。
中継基地が設置できるはずもなく、迷宮内ではスマホや携帯電話は使用不能である。
今回のような、広大な特集階層で行動する場合は、主要な人物にこうした無線機を渡しておくのが常であった。
『なんだ?』
すでに手が空きはじめていたのか、隆康はすぐに出た。
「そろそろ、宴会の準備をはじめます。
食材や飲み物はたっぷりと準備していますので、手が空いた方から順番に休憩所に立ち寄るよう、お伝えください」
『そうか』
隆康はそう応じた。
『確かに、そろそろ頃合いだな』
やはり、慣れた風なやり取りだった。
そのあとは、いよいよ本格的に掃討戦に移行していった。
エネミーの数は減る一方であり、探索者側はまだまだ余力を残している状態だ。
「手が空いた方は、ドロップ・アイテムの回収にご協力くださーい!」
「この階層内に、公社の買い取り窓口を開いていまーす!」
そんな声が、どこからか聞こえてくる。
自分の周辺に生きて動いているエネミーが見あたらなくなった探索者たちが、談笑しながらぞろぞろと内陸の方向に移動しはじめていた。
「手が空いているふかけんのメンバーは、全員、ドロップ・アイテムを拾ってくること!
察知系のスキル持ちと連携して、できるだけ多くのアイテムを回収してくれ!」
そんな声も、聞こえてきた。
「公社の買い取り窓口はこちらになりまーす!」
拡声器を手にした新鷄兼平は、そんな風に叫び続ける。
「相変わらず裏方が好きねえ、新鷄くんは」
そんな兼平にむけて、声をかけた者がいる。
「放っておいてください」
そちらの方をむきもせずに、兼平は答える。
「誰もが先輩のように目立つポジションを喜ぶわけでもないんですよ」
「あら」
昇殿顕子は宛然と微笑む。
「それはあれ?
もって生まれた性分というかカリスマ性がなせる技だから。
本人には選べないっていうか」
「勝手にいってなさい」
顕子のそうした態度はいつものことであったので、兼平は取り合わなかった。
「そんなことをいっていると、また夏川のやつがひとりで対抗意識を燃やしますよ」
「夏川?
ああ、陰険な方の夏川ね」
そういって顕子は肩をすくめた。
「そういえば、そんなのもいたわね。
あんまり存在感がないものだから、今の今まで意識にのぼらなかったわ」
「とにかくおれは、地味で目立たない裏方の仕事が好きなんです」
兼平は相変わらずすげない態度をとり続ける。
「これ以上、漫談を続けたければ、他の後輩をあたってください」
「終わったのか?」
「終わったらしいな」
大野相馬と両角誠吾は注意深く周囲を確認する。
目にはいる範囲内では、生きて動いているエネミーは見つけられなかった。
浜に打ち上げられた膨大な数のエネミーと、それに取りついている透明な肉塊、迷宮の掃除屋であるスライムばかりが、特に波打ち際に密集している。
食べた物を消化する端から自身の体積を増やして分裂していくスライムの処理速度はこれでなかなかたいしたもので、膨大なラッコ型エネミーの死骸はみる間に減少していく。
それでいて、食べる物がなくなればおとなしく地面にしみこむようにして消えていくんだから、なかなか便利な生物だよな、とか、誠吾などは思う。
どうやら自分たちの周囲にはもうエネミーがいないということを悟ると、二人はどっと地面に腰を降ろし、そのまま砂浜に寝そべった。
「終わったぁ!」
「疲れたぁ!」
口々にそんなことをいいだした。
無理もない。
かなり長い時間、動きっぱなしだったのだ。
途中、何度か携帯口糧と水分を補給することはあったが、それ以外の時間はほとんど目の前に迫ってくる膨大な数のエネミーの相手をすることに費やしていた。
そもそも普段の迷宮探索では短期決戦を目指すのが普通であって、ぶっ続けにこれほど長時間に渡ってエネミーを相手取る状況はまず発生しない。
肉体的精神的な疲労は極限まで蓄積されている、といっても決して過言ではない状況だった。
「ああ、しんど」
「腹へったぁ」
口から出るのは、そんな弱音がほとんどであった。
「もう、一歩も動けねえぞ」
「でも、終わったんだよな」
「ああ。終わった」
「やり遂げたんだよな、おれたち」
「ああ。やり遂げたんだ」
「最後まで」
「最後まで」
全身に充満する泥のような疲労、それと同時に、ふたりの中に徐々に満足感とでもいうべき感情が満たされていく。
「そうか。やったのか」
「ああ。最後までな」
「後方でBBQ大会を開催しております。
ご協力いただいた皆様に対する、主催者であるふかけんからの薄謝になります。
お時間のある方是非お立ち寄りの上、お帰りになる前にご歓談ください」
どこか遠くからそんな声が聞こえてきて、砂浜に寝そべっていた二人はがばりと一気に身を起こす。
「もう一歩も動けない」
とかいう台詞は、なんだったのか。
「バーベキュー!」
「肉! 食い物!」
そんなことを叫びながら、声が聞こえてきた方向にむけて走り出す現金な二人であった。
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