第5話



○病室に入ってくる邪鬼は愛美が意識を取り戻した事に気づく


○邪鬼はベッドのそばの椅子に座り愛美の顔を見つめる


愛美『私、逃げられたんですね?』


邪鬼『まあ・・怪我したけどね・・』


愛美『私が寝ている間に誰か知り合いは来ませんでしたか?』


邪鬼『手を振ってた相手の事?』


愛美『はい。銀河って言います』


邪鬼『いや。聞いた事もない。海王星の人?銀河って』


愛美『はい。地表で暮らしています』


邪鬼『ジャックフロスト族か。ジャックフロスト族は戦わない民族だから試合なんか見に来ないと思うけど』


愛美『私、銀河の持っていた緑色の魔奏玉を舐めてここに来たから


助けに来るかなと思って・・』


邪鬼『緑色・・配送員なの?』


愛美『あ!そうです!配送員の銀河と言います!』


邪鬼『ん~。知らない。ただ一つ言えるのは海王星は人のコピーが違法じゃないから


似た人間は一杯いるんだよね・・。優秀な人間の精子は高値で売れるんだ。


結婚とは別に女性はデータから選んだ人間の精子で子孫を残している。』


愛美『そんな・・』


邪鬼『そんなって(笑)それは文化の違いだよ。パートナーとの愛と


子孫への愛とを別に考えているだけ。男も女も自分の選んだ子孫を


別々に育ててる』


愛美『そういう文化なんですね・・』


邪鬼『そうなんです』


愛美『故郷に帰れる魔奏玉というのはおいくらでしょうか?』


邪鬼『原価で譲っても1億円』


愛美『1億・・』


邪鬼『普通に働いたら貯まらない額だからバトラーくらいだね可能性があるのは』


愛美『この国には他にないんですか?高額なお仕事は・・』


邪鬼『何故かないんだよね・・地球ならサッカー選手とか会社の社長とかあるらしいけど』


愛美『会社がないんですか?』


邪鬼『ないというか、禁止されてる。商売はできるけど、建物の面積とか


売り上げの上限とかに規制があって屋台ばっかりだよ。


大きいお店とか学校とか病院はすべて星の運営になってる』


愛美『そうなんですか・・』


○退院の日


邪鬼『退院おめでとう』


愛美『ありがとうございます!』


邪鬼『じゃあ行きますか!』


愛美『はい・・なにからなにまでお世話になります』


○病室を出てそのまま巨大なエレベーターホールまで歩く。ガラス窓からは


久々に外の風景が見える


愛美『この病院って物凄く広いんですね!彼方まで天井が続いてます』


邪鬼『あれは病院の天井じゃなくてこの階の天井だよ』


愛美『階・・そういえばここは地下でしたね』


邪鬼『そうそう。ここは地下60階。天井の高さは各階500メートル。


ここは地下30キロメートルにある空間』


愛美『それにしては世界全体がお昼みたいに明るいですね!』


邪鬼『あ、そっかここからは人工太陽が見えないんだね・・。


あるんだよ人工の太陽が』


愛美『そうなんですか!』


○30以上の乗り口のある巨大なエレベーターホールに大勢の人がいて


その中に銀河似の人を見つける愛奈


愛美『あ!』


邪鬼『ん?』


○急に駆け出す愛美


邪鬼『お・・おい!どーした?』


○人をかき分けて銀河似の人の所に行く愛美


愛美『銀河!』


銀河似『・・』


愛美『ねえ!銀河!私!覚えてるでしょ!』


銀河似『僕はバトラーなんで人違いですよ』


○その場から立ち去る銀河似の男


○愛美のそばに来る邪鬼


邪鬼『あの人が知り合いに似てんるんだ・・見た事あるな、あの顔』


愛美『バトラーなんで人違いと言っていました・・』


邪鬼『それは間違いなくバトルヒューマンだね』


愛美『バトルヒューマン・・』


邪鬼『地球の競馬と同じで優秀な成績を残すと多くの人に精子を買われる


だけではなく科学者が似た顔のバトルヒューマンというバトルするための


人間を作り出して稼いでいるんだ。だからあの人は良く人間違いをされている。


その時の決まり文句が「バトラーなんで人違いです」と言うわけ』


愛美『人が作られているんですか?』


邪鬼『そうだよ。この世界で娯楽はバトル大会だけ。学校の授業でも


バトルに関わる事ばかり。子供たちの夢は強いバトラーになる事。


または育てる事。だから結婚とは別の考えで自分の血液との配合を考えて


優秀な遺伝子を残そうとしている。オープンクラスのバトラーを


子に持てば裕福な暮らしが待っている。それを成しえないと


貧乏なバイト生活を続ける事になる。星の人々の休日はバトル大会のギャンブルで一攫千金を狙うのが


当たり前なんだ』


愛美『不思議な世界に感じてしまいます・・』


邪鬼『慣れてしまえば楽しいよ!文化なんてそんなもんでしょ』


○銀河似の男がエレベーターに乗る


○後を付ける愛美。一緒に同じエレベーターに乗り込む愛美と邪鬼


邪鬼『・・』


○地下200階以下行きのエレベーターは224階で止まり銀河似の男が降り


愛美らが後を付ける


○横長の楕円形の透明のドームの中に道路があり、その端に無人の屋根なし車が並び


銀河似の男はカードをかざして乗り込む


○邪鬼も少し後方で同じようにカードを車にかざして乗り込む


愛美『車持ってるんですね!』


邪鬼『これはレンタルカー。カードをかざせば誰でも乗れるんだ!』


愛美『便利ですね!』


邪鬼『そうだね!赤外線で道路と通信しながら乗れるから事故はないし


年齢制限もない。免許も必要なし』


愛美『凄い!』


○銀河似の男の後を付ける愛美達


邪鬼『そうだ!これ愛美のカード』


○海王星のマークの入ったIDカードを渡す邪鬼


愛美『私のカード・・』


邪鬼『それがあれば車も乗れて好きな所で降りれる。あと施設での買い物とかも


お金は一切カードに記録されるから、なんでもできるよ。


支払いは俺が立て替えるように登録したから』


愛美『ありがとうございます!もし無くしたらどこに連絡すれば良いですか?


電話番号とか何も書いていないから・・』


邪鬼『カードを無くしたらその辺にある自動発券機の前に立って、カード紛失の


ボタンを押せばすぐ出てくるよ。顔の映像撮影で自動的に本人確認がされてるから。


もしくは誰かが不正に利用すると顔認証でばれて勝手に自宅にカードが届く。


カードの位置が1日動かないだけでも本人に連絡が来るよ。


どうしましたかって』


愛美『じゃあ、カードは携帯が基本なんですね?』


邪鬼『そうだね!全ての施設でかざすのは基本だね。』


○道路に車を乗り捨てて建物の向こう側の林の方に歩く銀河似の男


邪鬼『この方向は魔林街だね』


愛美『魔林街って非合法ショップのある?』


邪鬼『そう。IDカードを持っていると磁気で自動的に位置情報が管理室


に届いてるんだけど、魔林街の木はサボテンを品種改良した木で


電磁波を吸い込む力があるから沢山人が入っても捜査が来ないんだ』


愛美『サボテンって電磁波を吸うんですか?』


邪鬼『植物は全て吸うけど、セレウス・ぺルビアナスというサボテンの1種は


特別良く吸うんだ。』


○トゲのような長い葉の生えた木が生い茂る中に消える銀河似の男


○後を付けると中は人でにぎわっている


愛美『これ、全て非合法のお店ですか?』


邪鬼『いや、ほとんど普通のお店だけど、たまに常連客に特別な物を売る


店主がいる店が存在するんだ』


愛美『ふ~ん・・あ!見失っちゃった・・』


邪鬼『この商店街は一本道だからそのうち見つかるよ』


○店の中をのぞきながら歩く2人


愛美『あ!』


○店で買い物をして出てくる銀河似の男


○すれ違いでお店に入店する愛美


愛美『今の買い物客、銀河という名前の方ではないですか?』


店員『いや・・詳しい事は言えないけど、良く来るバトラーだよ』


愛美『・・すみませんでした・・』


○肩を落として店から出る愛美


邪鬼『気は済みました?』


愛美『はい・・』


○銀河の自宅で目を覚ます銀河。汗を拭く妹


妹『あ!』


○ぼーっとしながら妹を見つめる銀河


銀河『久しぶりだな・・』


妹『良かった・・寝てたんだよ2週間も』


銀河『なんで?』


妹『え?・・覚えてないの?愛美さんとスキーに行って雪男に襲われたんだよ?』


銀河『愛美さん・・?』

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星主 @hasegawaplan

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