第4話
○その男の姿は中世の貴公子のような格好で顔は常に笑っている。
名前は邪鬼(じゃき)
愛美『は!』
○慌てて逃げようとする愛美
邪鬼『ちょっと待った!俺、敵じゃないから!』
○男を見て立ち止まる愛美
愛美『プレイヤーでは無いんですか?』
邪鬼『プレイヤーだけど、戦わないの。俺は逃がし屋』
愛美『逃がし屋?』
邪鬼『そう!逃げたいんでしょ?それを手伝うプレイヤーなの!』
○体を男に向けてしゃがみ込む愛美
愛美『逃がしていただけますか?』
邪鬼『任せなさい!この新人戦には数百回出場してるから、抜け道も
プレイヤーの攻め方もなんでも知ってるんだ!』
愛美『凄い・・助かります!でも、私、お礼できるものを持っていません・・』
邪鬼『いいの、いいの!出世払いが基本なんで!自国に帰る魔奏玉も
扱ってるんで、お金が溜まったら相談に応じます』
愛美『本当ですか!!助かります!!』
邪鬼『お金が溜まったらね・・』
愛美『分かりました!』
邪鬼『じゃあ、まずは逃げますか!』
愛美『はい!』
○手のひらにレーダー
邪鬼『これ見て』
愛美『レーダー・・』
邪鬼『そう!俺達の位置はレーダーの中心。
赤く点灯してるプレイヤーは危険なプレイヤーなんで
エスケープゾーンのそばにいたら隠れて離れるのを待ちます。
黄色の点灯は注意が必要なプレイヤーなので、これも
相手をしないようにします。白く点灯したプレイヤーは
あなたみたいな新参者で気にする必要はありません。以上』
愛美『これ、みなさん持ってるんですか?』
邪鬼『いや。これは魔林街(まりんがい)という非合法ショップで買ったの。
俺もう一つあるから貸してあげるよ』
愛美『ありがとうございます!』
アナウンス『おっと!1番人気の破壊王が6番人気のタロットマンと対戦します!』
○レーダーを愛美に見せながらどこで行われている試合かを教える
邪鬼『この赤い点とこの黄色い点の戦いね!』
愛美『何で分かるんですか?』
邪鬼『位置がほとんど重なってるから』
愛美『あ、そっか!』
邪鬼『あと、その位置を2回素早くたたくとプレイヤー名とかも表示されるの』
○自分のレーダーで確かめる愛美
愛美『本当だ・・映像も出るんですね!』
邪鬼『そうそう!隠れていても試合が見れるの!俺、こんな事ばっかり
やってるから勝てないけど、情報だけは1流なの(笑)』
○タロットマンを追い詰める石の巨人である破壊王の映像。
邪鬼『この石の巨人、一番人気なんだけどちょっとしたミスで2着が多いんだ。
最初からタロットマン相手にするところも危険と言うか・・』
愛美『タロットマンって黄色なのに強いんですか?』
邪鬼『めくったカードの内容で技が出るんで、危険なんだ。
体調と思考の状態がいいと強いカードがでちゃうの!ただ、このプレイヤーは
精神力の持続性が無いから最後の方は愚か者のカードばっかりで優勝は無理だね。
しかし試合序盤は相手にしない方がいんじゃないかな・・この石の巨人は
自信家なんだね』
○岩山を背にして追い詰められたタロットマンはデッキからカードを1枚引く
出てきたカードは隠者のカードの正位置。しかし何もおこらない
愛美『何も置きませんね・・』
邪鬼『このカードは大アルカナカードの一つで隠者のカード。位置は正位置だから
召喚した魔物の姿は見えない。新人戦クラスで出るカードじゃないんだ!』
○見えない敵に打撃を受けて吹き飛ばされる石の巨人は反対側の岩の壁に当たり
辺りは大きな煙に包まれる
愛美『凄い!攻撃されてるんですか?』
邪鬼『うん。』
○倒れたまま攻撃を受け続ける石の巨人。ゴン、ゴンと音が鳴り響く
○レーダーで映像を見る愛奈。やがて石の巨人は消える
愛美『あ・・消えた・・』
邪鬼『意識が飛ぶと負けなので試合会場から出されたんだ。生きてればいいけど・・』
アナウンス『これは大波乱!タロットマンが1番人気を圧倒!破壊王がらみの
投票券は残念ながらはずれとなります!』
○ガラスの向こう側は観客席だけではなく広い通路にもなっていて人々が行き交う。
闘技新聞をポケットにさしてガラスから見下ろす立ち見の観客達は
はずれ券を床に捨てる。通路の床ははずれ券でいっぱい
観客A『あのタロットマン、最初だけ強いんだよな~』
観客B『なにが破壊王だよ!お前が破壊されてんじゃないか!』
○通路の人気を表示するスクリーンには愛美の名前もある
倍率は1204倍。1番人気の名前の下には敗戦を意味する×のマークが点灯。
邪鬼『さて、強いのが1人減ったんで動きやすくなった!レーダー中央の○印が
エスケープゾーンなんでしげみから出て左に進もう!』
○手足が震えて動けない愛美
邪鬼の心『恐怖で動けないか・・最初は怖いよな・・俺だって最初は震えまくった
からな・・さて、どうしよう・・』
○邪鬼は目をつむり右手を少し前に出して左から右に動かす。
すると空飛ぶじゅうたんが現れる
愛美『!これは?』
邪鬼『空飛ぶじゅうたん!これで移動しよう!』
○邪鬼は愛美を抱きかかえてじゅうたんに乗せる
愛美『浮いてる・・』
邪鬼『あんまりスピードはでないんで勘弁ね!』
○2人はじゅうたんに乗りレーダーを見ながら道の上をゆっくり進む
○何かに感づいた邪鬼はカーペットを大きな岩の後ろに隠す
愛美『敵ですか?』
邪鬼『うん。もうすぐここを通るから静かにね!』
愛美『はい・・』
○今度は右手を小さく横に動かしてメガネを出す邪鬼はメガネをかける
○息をのむ2人
邪鬼『行ったよ』
○じゅうたんを再び道に出す邪鬼
愛美『何か通りました?何も見えませんでした・・』
邪鬼『2番人気のミストマンが通った』
愛美『そのメガネで見えるんですか?』
邪鬼『うん。これも魔林街で買ったんだ』
愛美『魔林街って凄いんですね・・』
邪鬼『誰にでも売ってくれるわけではないけどね』
アナウンス『今度はミストマンが初陣のアミルタにアタック!
アミルタは相手の位置が分からず防戦一方!ダウンしました!』
○道の上で止まるじゅうたん
邪鬼『もうすぐだからここからはしげみを進んで
エスケープゾーンのそばまで移動しよう。歩けそう?』
愛美『はい!少し落ち着きました・・』
○しげみの中を進む2人の顔には木の枝葉が当たる。
邪鬼『ここで止まろう!あそこに黄色の敵がいるけどさっきから
エスケープゾーンから離れない。おそらくは俺たちみたいな弱いのを狙ってるんだ』
○体調3メートルの大きなカッチュウを着たゴリラが棍棒を持ってうろうろしている
愛美『私達みたいのを倒してメリットはあるんですか?』
邪鬼『ある。例えば8番人気のあなたを倒した場合
10から人気の順位の8を引いた数字の2がポイントになり、加算されて
判定の時に優位になる。
判定は30分の試合時間内に2人以上プレイヤーが残った場合に適応される。
ここには弱いのが逃げてくるから
それ倒すのが専門の中堅プレイヤーだ』
愛美『どうしますか?』
邪鬼『隙を見て走ってエスケープゾーンに入れろう!合図は僕がする!
走れそう?』
愛美『はい!』
○ゴリラが向こうの方に移動
邪鬼『いくよ!』
愛美『はい!』
○2人は素早くしげみを出てエスケープゾーンに走る
○愛奈の視線に観客席が見えてきて、その中に銀河に似た人を見つける
愛美の心『あ!銀河!私を追って来てくれたんだ!』
○手を振りながら走る愛美は失速
○愛美の方に振り返るゴリラ
邪鬼『しまった!』
○立ち止まり両手で銀河似の観客に手を振る愛美。しかし反応は無い
○にやりと笑ったゴリラは邪鬼の横を通り過ぎて愛美に突進
○それを追いかけるように邪鬼は走りながら姿を体調10メートルの
鬼に姿を変える
○ゴリラは棍棒を上から振りかざし、愛美のそばに叩きつけて
愛美は吹き飛ぶ
邪鬼『まてええええ!』
○通路の観客は邪鬼の変身に驚く
観客A『なんだあれ!あんなのいたのか!』
観客B『邪鬼だよ!たまに巨大化するけど絶対に優勝は無い。
まともにやればオープンクラスでやれるんじゃないの?』
アナウンス『おーっと!エスケープゾーンで三つどもえの戦いが始まりました!
巨大化したのは邪鬼!優勝倍率は183倍!大波乱かー!?』
○ゴリラの腕をつかみ、動きを止めて、両手を組んで上からゴリラをたたくと
ゴリラは一撃で消える
○観客は騒然
観客C『つええ・・倒したゴリラは4番人気だろ?一撃だぞ!』
観客D『女を逃がして終わりだから優勝はないけど、強いな・・』
○もとの姿に戻り愛美を抱きかかえてエスケープゾーンに向かう邪鬼
邪鬼の心『息はあるな・・この姿になると、しばらくマークがきつくなるから
なりたくは無かったが、いたしかたない・・』
○それを遠くから見る他のプレイヤー
○邪鬼は初めて目を開き、いかくする
○見られたプレイヤーは怯えて退散。邪鬼は愛美を抱きかかえてリング状の
エスケープゾーンに消える
○ゆっくり目を開ける愛美だがそこは病院のベットの上
体には包帯が巻かれている
愛美『いたた・・』
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