エッセイ「たろうさんのお雛様」

@19643812

第1話

たろうさんのお雛さま

飾られないお雛さまではなくて、飾りたくても買えなかった、子供と母の気持ちは、どうなのだろうかと、考えてしまうマイナス思考の持ち主です。私の母と姉妹もそうなのです。     

私も節句を祝って貰った覚えがないです。買いたい、祝ってあげたと思う想いが、誰よりも強い母でした。辛かったでしょうね、紙のお雛さまも作れないほど、貧しかったのです。中学校を出て、私と姉が働くまで、貧乏が続きました。生活保護も受けていました。貧乏は人を卑屈にしますね。

私の妹は娘のお雛さまを買えました、姉は男二人なのです。私の娘のお雛さまは、妻の母と弟が買ってくれました。妻は3人姉妹と弟ですが、買いたくても生まれるのは男の子たちばかりでした。

妻も10年目に女の子を授かったのです。待ってましたですね。7段飾りは要らないからと、何度も言いました。ガラスケースの箱に入った5人のお雛さまです。

私は早く飾り遅く仕舞うのです。娘と何時までも暮らしたいのが願いなのです。勝手な願は通じないものですね、結婚すると家を出て行きました。私の生まれた所に家を買い、孫が2人の嬉しいプレゼントです。

何時も妻と慎重に、お雛さまのケースを降ろします。(このお雛さまが、娘を守ってくれている、壊したら大変だと)。でも、扉の処が少し痛んでいます。

三人目が女の子だったら、娘のお舅さん達は、夢が叶ったと、豪華なお雛さまを買うことでしょうね。

子供の頃なのですが、大杉の根元にお雛さま達が置かれていました。多分納められていたのでしょうね。私には白い顔と髪の毛が、不気味に思えたのです。

お雛さまも思い出も、簡単に棄てられないたろうさんなのです。

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