『詩集・今書いている詩Ⅰ』
@19643812
第1話
清水太郎の部屋に投稿していた詩から50偏を投稿しています。
『詩集・今書いている詩Ⅰ』
すくう
池の辺に立った弥陀は
水を漉くってハスに注いだ
後ろの観音に
「私には誓願があるよ」と囁く
観音は微笑んで頷く
池の其処此処で
ハスの花がポンと
音を発てて咲いた
たろうくんは池の氷を
小さな手で割って顔を洗う
寒い日も暑い日も
前に住む神主の一家は
たろうくんが足を踏み外さないように
いつも見守っているが
気が気でない
両手で水を漉くってごらん
零れるよね
頬に手を当てごらん
潤うよ
あなたには潤いが
必要だが
求め過ぎてもいけないよ
大雨が降ると
池の水は溢れて
せせらぎとなって
村を通り川に注ぐ
池の魚も川に辿り着く
たろうくんは大人になって
池は慈根寺という古刹の跡で
本尊が阿弥陀如来であると知る
赤子は場所と父母を
選んで生まれるという
あなたと太郎君の
知りたいその答えは
智慧の壺の中ですよ
待つ
たろうくんは立ち続けている
宮ノ前の鳥居の傍の
八幡神社と石柱に彫られた
処でじっと待っている
夕闇が近づく頃
遠くにお母さんの姿が浮かぶ
たろうくんの顔に嬉しさが広がる
お母さんは浅川駅から2キロの
山道を不自由な足を
引きずりながら帰ってきた
働き過ぎで「茶目」と言う眼病に
なったお母さんは
たろうくんを見つける
ビックリ眼をしばたたせて
嬉しいのだが切ない思いが込みあげる
自動車で宮ノ前を通るたびに
太郎君は娘に言う
「お父さんは此処でお婆ちゃんを待っていんだよ」
娘は「またお父さんは言っているね」と母を見る
健やかに成長した娘は
来年に彼氏と同棲するために
アパートを探している
この地も候補にあるらしい
娘の子供も太郎君のように
此処で待ち続けるのだろうか
娘の幸せを願う私がいる
たろうくんの帽子
たろうくんの家は貧乏で
お母さんは東京のお義兄さんに
お金を借りにゆくのです
嫌な用件で出かけるのも
たろうくんと一緒なら嬉しいのです
「この子が大きくなったなら」と
いつも思っています
浅川駅の改札口から東京行きの
ホームに向かうところで
たろうくんはお母さんから
帽子を渡されました
夜中に縫った手製の帽子でした
たろうくんは不満です
既製品の帽子がほしかったのです
たろうくんにはみすぼらしく思えたのです
「こんな帽子なんて」と思いました
それにたろうくんは学校に行っているのに
お金を払って乗らないのです
たろうくんは仕方なく帽子を被ります
「かわいい帽子ね」と女の人が
通りながら言いました
たろうくんには帽子を被らなくては
ならない理由があるのです
たろうくんがハイハイを始めた頃に
囲炉裏に落ちて頭に火傷をしたのです
たろうくんの帽子はその頭の傷を隠すためなのです
太郎君は定時制高校に入って
生徒会長にもなりました
髪は硬くて立っていましたが気にならなくなりました
髪に白髪が混じった頃になると細くなり髪の毛は寝て
太郎さんの傷は隠れました
それに髪の毛がふさふさで若く見えます
でも髪の分け方が人と違うのです
「あなたに印をつけたのはわたしですよ あなたが
高慢な人間にならないための選択をさせたのです」
リビングルームから葉の落ち始めた木々を見ながら
本当の理由に気がついた太郎さんでした
たろうくんのニワトリ
学校から帰ってくると
たろうくんをニワトリが出迎えます
足のすねをつつくのです
たろうくんはお父さんに
「いつも足をつつかれて痛くて嫌だよ」と
泣きべそをかきながら言いました
次の日にニワトリはいなくなりました
たろうくんの家に届いた伯父さんの
年賀状にはニワトリが書いてありました
太郎さんはテレビでニワトリが
足をつつくのは親愛の
表現だと知りました
あのニワトリがどうなったのか
太郎さんの記憶は曖昧です
たろうくんが電球を入れて暖め
ハコベラをすり潰して
育てたニワトリです
夜店で売っているのはオスで
強いヒナばかりなのです
太郎さんの奥さんは
スーパーの精肉部門で働いています
「今日の鶏肉は100g98円です」
今日のチラシを見て出かける主婦がいます
「食育授業の時間ですよ」と出された肉が
大事に育てた豚の肉と知らされて
泣きながら子供たちは食べます
たろうくんのランドセル
たろうくんは気が気でない
明日は入学日だというのに
ランドセルがないのだ
双子の姉の分と二ついる
どうなるのだろうと思いながら寝ます
朝目覚めるとランドセルが
二つ置いてありました
縁側の小麦の入っていた
一斗缶がなくなっていました
太郎さんは団地の隣にある
小学校に娘さんを迎えに
土曜日になると行きます
娘さんは笑いながら出てきます
頭一つ大きな女の子です
太郎さんは渡されたランドセルを
持ちながら後ろからついてゆきます
娘さんのランドセルは今ロフトの中です
太郎さんは今もランドセルを背負っています
過去の悲しみと現在の喜びと未来の不安が
詰まり過ぎて閉まりません
両手で抑えながら部屋の中を歩き廻ります
太郎さんゲームオーバーになりそうですよ
「誰か教えてください 郵便局はまだ
空いていますか あなたの心の負債を
振り込みにゆきたいのです」
結婚前の26歳の娘さんは借りてきた
Drスランプアラレちゃんを読みながら
笑っています
父 (あの日あの時)
「たろうはこの長い四角の皿にカボチャのスープを
入れてスプーンで叩くとニコニコしながら這ってきた」
姉と私は双子であったので父は配給のミルクを
怒鳴り合いの喧嘩をしながらもらってきた
古井戸のそばで水を汲んでいる父に
「ぱっぱちいない(タバコ吸いなさい)」と姉が何度も言う
太郎君はお父さんの自転車に乗りたかった
お父さんは貸してくれなかった
太郎君とお父さんはバイクで大垂水峠にフキを取りに行った
その帰りに見晴らしの良い木の枝で男が首を吊っていた
高尾山の森のお父さんだけが知っている秘密の場所に
椎茸を取りに行った大収穫でした
太郎さんから見ると自分勝手で女好きで競輪にのめりこみ
何故か共産党を支持し偏った宗教心が強いお父さんです
「太郎 救命丸 飲んだらだめかな」遠慮がちに言います
「駄目だよ 病院の薬があるだろう」太郎さんは素っ気なく答えます
この数日後にお父さんは亡くなりました 90歳でした
奥さんに「あのときに全部飲んでいいよと言えなかったのか
心残りだよ」と後で何度も言いました
「貴方も最近はお父さんに声も考え方も似てきたんじゃない」
「親子だから似てくるよ」と言う嬉しい私がいます
父よ貴方は反面教師ばかりではありませんでした
「死んだらお前の守護霊になって何時も守っているからな」
「お父さんそれじゃあ私の肩が重すぎるわよ」と娘が言う
親父は私の守護霊になって守ってくれているに違いないと
確信する還暦を超えて65歳に近づいた太郎さんです
義母(貞子)
88歳の義母が泊まりに来ているときに
娘の彼氏が背広で挨拶に来た
「同棲を許してください」と言う
本も買って何度も練習したらしい
「嬉しくて泣くのはいいが
悲しくて泣かせないでくれ」
私はそれだけを言った
二度目の言葉だった
耳が遠く名前も思い出せない義母は
お膳に畏まっている私たちの様子を
じっと見ている
彼氏が帰ったあとで娘は
筆談で祖母に説明する
北里大学病院で帝王切開して生まれてきた
娘はキャスター付きの鉄の箱に入っていた
運んできた看護婦さんがフタを開ける
「ありゃまあ 赤い子だねぇ~」と私を見て
嬉しそうに笑う 初めての女の孫なのだ
清水洋子ベイビーと小さな腕に
名札が付いている
あれから26年嬉しい日々が続いている
自分の家に帰った義母は隣に住んでいる娘に
興奮しながら話を作り上げて話しているらしい
「話は10分の一にして聞いてね」と妻が電話で言う
「ああ とうとう出てゆく日が来るのか」
独白する私がいる
光明
太郎さんと洋子さんの夫婦は
暗く長い眠れぬ夜を過ごしました
その理由は洋子さんの会社の
健康診断で胸にシコリがあるから
婦人科で診てもらいなさいと
言われたからです
「乳癌かも知れない どうしょう」
二人して悩みました
太郎さんが会社から帰ると
嬉しい知らせでした
唯のシコリだったのです
娘にも言えない辛い夜を
夫婦で笑いました
長い宇宙への旅に出た
太郎さん 洋子さん
夫婦の乗った宇宙船の光は
何処までも続く暗黒の
闇に拡散して
自分たちの宇宙船だけを
照らすばかりです
誰も見ていない 知らない
無明の世界です
光明のあるところへ
辿り着きたいそれが
夫婦の願いでした
遠くの地球からそれを
白髪の増えた娘さんの夫婦と
子供達が眺めていました
菜園の仏陀
釈迦の出家の動機は幼少の頃に田畑の虫を
ついばむ鳥を見たことによると言われる
朝
秋の彼岸に太郎さんは
自宅の菜園を耕します
ミミズが掘り起こされます
プランターの土の中には
カブトムシの幼虫がいました
大根と冬菜 プランターには
早取り京一カブを播くつもりです
仏陀が横でそれを見ておられました
昼
太郎さんはキュウイの棚の下にある
洗面器の水を替えます
猫が畑に来ました
追い払います
太郎さんは知っています
水浴びに来たヒヨドリが
この猫に襲われたて
羽が散らばっていたのを
太郎さんは木も草も
切ったり刈ったりされるより
そのままがいいと思っています
それで草陰に隠れていた猫の
餌食になったのです
夜
太郎さんはインターネットの
エロサイトに接続中で
時間を忘れています
後ろから覗き込んだ仏陀が
微笑みます
「此処には私の仕事がある」と
気づかれた一日でした
10日後に仕事から帰った
太郎さんは洋子さんに
「早取り京一カブの芽が出たかな」と
思い出したように聞きました
娘よ
お父さんが幸せに思うのは
2階で君がテレビを見ながら
大笑いをしている声を聞くとき
風呂場で君が唄う
調子っぱずれな
歌声を聴くとき
大声で友達と携帯で
話してる君は幸せかい
だから 笑おうね 唄おうね
話そうね 脳天気な君と
来年になると
君の声が聞けなくなるけど
「月に4・5回は帰るよ」の嬉しいお言葉
新しい生活が楽しいといいね
お父さんは君のことが
心配で心配で仕方ないんだよ
一緒にいることが
嬉しくて嬉しくてつい
過干渉なお父さんになるんだよ
君もお母さんになるとわかるよ
その日のお父さんは
うわっ調子のお爺さんだ
「楽しい生活が続くといいね」と願う
太郎お父さんがいます
「貴方の願いはわたしの願い」と
あなたが仰いました
運転手
立ち止っているひと
座り込んでいるひと
歩いているいひと
悩みながらも
悲しみながらも
笑いながらも
あなたはあなたで
わたしはわたしです
考えが違っても
同じ人間です
同じ空気を吸ってます
同じ時間を生きてます
だから 感じ合おうね
そして 愛し合おうね
目的もなく 彷徨している
あなたをみるのは悲しい
希望を持ちながら
上を向いて歩いている
あなたを見るのはうれしい
どこにあなたがいても
わたしはみまもっている
神に仕える運転手ですよ
明日の献立
明日がこないと嘆いている人はいませんか
希望がないと嘆いている人はいませんか
未来がないと嘆いている人はいませんか
ジグソーパズルの一つが無くなって
絵が未完成と考え込んでいるあなた
智慧の輪が解けないと考え込んでいるあなた
そんなあなたにサヨウナラしませんか
時間は誰にでも平等だから
明日は黙っていても来ますよ
悲しみも幸せも今は
明日の踏切を通過する
あなたの時刻表に
組み込まれていますから
考えない 考え込まない
あなたの明日の希望の献立は
わたしがもう作成中ですよ
不安と愛
あなたは不安という
苦い酒を飲みすぎたのでは
ありませんか
愛という熟れ過ぎた
林檎を食べ過ぎたのでは
ありませんか
今のあなたは心の
消化不良ですよ
今の私は迷医師ですから
不安も愛も直せる
特効薬を調合出来ますが
仕方ないですね
あなたにその気がないなら
あなたの気鬱も
治りませんよ
明日の官報に
告示されるでしょうね
税金は取れません
無産者ですと
首から名札を
下げてあなたは
街を歩くのです
でもね 不安も 愛も
時間という消化酵素が
ゆっくり ゆっくり
あなたを癒やし
治してくれますよ
だから 大丈夫 大丈夫
あなたも わたしも
明日から笑顔の
通行人ですよ
「不安と愛(2)」
打ち消しても
打ち消しても
振り払っても
振り払っても
拭っても
拭っても
不安が沸いてくるあなた
不安が支配する交差点の
赤信号を無視するのは
危険ですよ
愛が占領している交差点で
足踏みしているあなた
青信号ですよ
素直にわたりましょうね
あなたは捕らえ処のない
不安から逃げようとしていませんか
蛇口から漏れてる水の一滴が
洗い桶を満たし零れる時になって
初めて気がつくのですか
駄目ですよ
不安と愛の半透明な下敷きの
裏と表をひっくり返すゲームを
いつまで続けるのですか
そろそろ終わりにしましょうね
わたしが思うに
不安が先で後から愛が
補完したのが人類の歴史ですよ
あなたは今日も飢えと生存競争に
狂奔していますね
やめましょう
やめましょうよ
あなたがやめれば明日は
すぐ秋晴れですよ
幸せ係数
休みの日に植木を少し切ったり
庭の水道ホースの元栓を変えたり
資材置き場にダンプカーが来て
スズメたちのお喋りがやみ
ラジオから昔の音楽が流れ
テレビでビデオのロードショーを見たり
ソファーではあなたが横になっている
(先程まで前の道路を掃いていたね)
何でもない昼下がりだけれども
これがわたしの幸せです
あなたは大きな幸せや
大きな仕事を願ってはいませんか
気鬱で人生の執行猶予中のあなた
気づいてみませんか
すべては日常の出来事
何でもないように行われている
通り過ぎてしまう程の
普通のわたしの幸せです
心が…
心が閉まっている私
鍵をお貸ししますから明けてください
心が気鬱なあなた
空は無限に広いですよ
オーラをあげますよ
心が壊れたあなた
わたしが作り直してあげますよ
心が悲しいあなた
時間が消化してくれますよ
心がうつろなあなた
笑う練習でもいいんですよ
笑いましょうね
心が軋んでいるあなた
優しさの潤滑油を注しますね
心が止まっているあなた
柱時計もネジを巻くと動き出しますよ
心が疼いてるあなた
まだ青春が残っていますね
心が明るすぎるあなた
無理していませんか
そろそろ隙間風の季節ですよ
心が楽しいあなた
明日も楽しいといいですね
心が癒やされた私は
元気に明日も仕事にゆきます
愛をなくしました
私は愛の入った財布をなくしましたと
ローカル局のアナウンサーが嘆いています
愛はどこへ行ってしまったのでしょうね
砂丘の中にでも埋もれてしまったのでしょうか
都会の街角で愛の正解を求めて
彷徨う 愛の求道者もいますよ
愛ってなんですか
愛するってなんですか
愛が乾いているあなた
こころまで乾いていませんか
愛を失いかけているあなた
自分まで見失わないでね
愛がほしいと叫んでるあなた
求め過ぎても逃げますよ
愛は希望をつなぐ紅の糸ですよ
明日を生きる糧ですよ
探し物は見つかりました
ローカル局のアナウンサーが
皆さんにお礼を言っていました
運転手(2)
あなたは誰も見ていなければ
自分さえ良ければ
多少悪いことをしても
良いだろうとそんな思いに
駆られたことはありませんか
タバコのポイ捨て
ペットボトルの投げ捨て
赤子の産み落とし
子供の虐待
信じられない殺人
神のプログラムには
悪の清算は早く
善の清算は遅く
セットされているのです
飽食の時代には誰もが
善と悪とを行って生きているのですよ
私は嘘をついてませんと言っても
自分の心までは欺けませんね
人生は楽あれば苦あるですが
一生をならしてみると
「たいら」=「平」なのです
あなたが「悪」を行うなら
何倍もの「善」を用意しますよ
悪を吸い取る吸い取り紙を
何枚も準備して
あなたの「眼」が醒めるまで
待つでしょう
あなたの明日が「善」でありますように
神に仕える運転手より
運転手(3)
人類が絶滅して200年も経つと
人類の築いた文明は大自然に還り
微かにプラスチックの人形や
アルミの窓枠が残るだけとなる
或る日の未来に
新しい人類に似た
生命体が宇宙船で
地球に降り立ち
「なんだ こりゃあ」と首をかしげる
わたしが此処にいたことも
判らないなんてとても悲しい
人類の絶滅の原因は驕りですよ
だから言ったではありませんか
謙虚でいなさいと
自然を愛しなさいと
あなた達だけが
頂点ではありませんよと
わたしはあなた達を
見放したのです
未来の或る日の
神に仕える運転手の
悲しい呟きです
誤解してました
セイタカアワダチ草さん
あなたは今日も
北国の空の下で
咲いているのですね
都会のロープの張られた
空き地に咲くあなたは
花粉症の原因だと
罵られ嫌われ
北アメリカから帰化したのに
悲しい過去を背負った
セイタカアワダチ草さん
でもね 昆虫さんたちは
知っていましたよ
あなたは秋の終りの
花の少ない頃に咲いて
命を助けてくれる
蜜の宝庫ですよと
わたしもフィールド学者さんに
教えてもらいました
あなたが杉の様な風媒花ではなく
虫媒花で虫さんが喜ぶ花だと
誤解していたわたしは
明日から願いますよ
あなたが風に揺れて
虫さんたちと遊ぶ
楽しい 嬉しい 日々を
いつまでも いつまでも
だめじゃないかぁ~
わたしこんなことあんなこと
考え過ぎて だめじゃないかぁ~
わたしこの歳になってエロなこと
考え過ぎて だめじゃないかぁ~
わたし宝くじを当てようなんて
考え過ぎて だめじゃないかぁ~
わたし夢をいっぱい持ち過ぎて
重もたくて とても だめじゃないかぁ~
あなた愛が判らないなんて
言ったら だめじゃないかぁ~
あなた わたしにはあなたが
判りませんなんて だめじゃないかぁ~
あなた離婚して再婚してまた
別れるなんて だめじゃないかぁ~
あなた明日が来ないなんて
思ったら だめじゃないかぁ~
歳とった男の独り言なんて
とても寂しくて だめじゃないかぁ~
だめじゃないか だめじゃないか
なんてとても だめじゃないかぁ~
ああ 明日がきちゃうよおお~
現代版ええじゃないかぁ~
私は私でもええじゃないかぁ~
私は人間でも人間でなくてもええじゃないかぁ~
私は飼い猫でも野良猫でもええじゃないかぁ~
あなたはあなたでもええじゃないかぁ~
隣は隣でもええじゃないかぁ~
明日から他人でもええじゃないかぁ~
明日が来なくても今日が良ければええじゃないかぁ~
誰でも笑って楽しく過ごせばええじゃないかぁ~
脳天気な娘でも唄って踊ればええじゃないかぁ~
愛があってもなくてもええじゃないかぁ~
お金があってもなくてもええじゃないかぁ~
テレビや新聞や携帯がなくてもええじゃないかぁ~
宝くじやロト6やミニロトを買ってもええじゃないかぁ~
不倫を隠してて 暴露されてもええじゃないかぁ~
健康じゃなくてうつ病でもええじゃないかぁ~
孤独で彼氏も彼女もいなくてもええじゃないかぁ~
不登校の引き篭もりでもええじゃないかぁ~
出社拒否で働かなくてもええじゃないかぁ~
その日暮しの野宿でもええじゃないかぁ~
エロ爺とエロ婆でもセックスがあればええじゃないかぁ~
多重債務者でも生きていればそれでええじゃないかぁ~
年金暮らしで和牛食べてもええじゃないかぁ~
希望があってもなくても明日が来ればええじゃないかぁ~
神や仏がいてもいなくてもええじゃないかぁ~
最後が延々と続いて変でもええじゃないかぁ~
※「ええじゃないか」は日本の江戸時代末期の慶応3年(1867)7月から翌明治元年(1868)4月にかけて、東海道、機内を中心、江戸から四国に広がった社会現象である。
生への執着
幸せの鐘がディンドンと鳴る
哀しみの鐘がディーンディーンと響く
鐘を突く人の足音が地に響く 染み透る
娘は早い鐘だが
義母と叔母は遅い鐘の筈
還暦を過ぎた夫婦の会話
妻は「癌になったら治療して欲しい」
私は「何もしないでいい」
妻は娘の子供を抱くまでは死にたくないという
私の妹が子宮頚癌で子宮を摘出した
検査で抗がん剤を月初めの5日ほどやらないと
他に転移した癌が再発する確率が高いという
兄と妹の電話越しのたどたどしい会話
「お金と時間をかけて、今の生活が成り立つのか」
「わかった お兄さんには迷惑はかけない」
怒ったように妹は短くいい
兄は何もしてやれない虚しさに言葉がつまる
娘が家を出る日が近い
2年後には式を挙げるという
娘と父の会話
「本日はお日柄もよくて 御愁傷様です」
「そのフレーズ いただき」
「無常の風がひとたび吹けば自分に跳ね返ってくるぞ
禍福はあざなえる なわのごとし ゆめゆめわすれまいぞ」
死神の呟きが聞こえる 昨日今日の私です
還暦男の告白
幸せってなんですか
不幸せってなんですか
本当は何も考えない時が
幸せなんですね
あなたはどうですか
逃げ出す道はないですよ
あなたの感じ方の問題ですからね
幸子さんは良くつけられる名前ですね
けれども幸という字は危うく難を
逃れられて良かったのが幸ですよ
どうですかあなたならこの意味を持つ
この字を子供さんにつけますか
多分つけない人が多くなりますよ
高校生の時に私を慕ってくれた
泉幸子さん 今はどうしていますか
もうすぐあなたも還暦でしょうね
若すぎた私はあなたを
幸せに出来ませんでした
この頃なぜか頻りに思い出します
何処かの街角で出会っても
変わり過ぎてわかりませんね
変わらないのはあなたの面差しと
今の私の心ですよ
還暦男の告白(2)
月日は過ぎても青春の思い出は消えない
燃焼しつくされない魂は頻りに昔を振り返る
あの日 あゝしていればと考えてしまうのが人生です
私は定時制高校へ1年遅れて入学しました
3年の春に新しい科学の先生が来られた
それが越川郁子先生でした
大学を出たばかりの新人教師で
クラスは勿論全学年の憧れの的でしたね
私は自分の気に入った学科や先生の教科は
良い点が取れる生徒で
科学の公式を熱っぽく語る姿に私は
大人の女性を意識せずにはいられませんでした
化学室を訪れて話し込んだりして
そこにいた女生徒にからかわれたり
身体検査で胸囲を測られて細い貧弱な胸を
見られて恥ずかしかったです
山へも何度か同行もしました
北岳から濃鳥岳に縦走した帰りの沢沿いで雷雨に遭い
傘を差し続けて「ちかよらないです」と言われ
わざと差し続けたこともありました
修学旅行では二人で一緒の記念撮影もして頂きました
4年生の時に結婚されましたがその直前に家に電話して
父親と思われる人に受話器を切られ
帰りに車で途中まで送ってもらったこともあります
私とは5歳年上の女の人でしたので
今はもう70歳近いでしょうね
今もなお昔の語り口と笑顔が
私の記憶の底で燻ぶり続けています
もし結婚できていれば
思いを打ち明けていれば
違う今があったと
思いを馳せる昨日今日の私です
魂の救済
神さまお聞きします
教えてください
無抵抗で死んでいった
子どもたちの魂は
何処に行ったのでしょうか
何処で彷徨っているのでしょうか
あなたの「プログラムのプロセスのミスですよ」
なんて私は認めたくない 認めませんよ
だから祈りの呪文も言葉も
知りたくありません 言えません
産声と同時にビニール袋に
押し込まれた赤子
親から部屋にテープで目張りされ
並んで餓死した子ども
米軍機の墜落で「ぽっぽっぽ」の歌を
口ずさみながら死んでいった子ども
酔っ払い運転の車に追突されて
欄干から落ちて溺死した子ども
東名高速で酔ったトラックに
追突されて炎上死した子ども
虐待されて「どうしてなの」とも言えずに
死んで行く子ども
みんな大事な大事な
あなたの子どもです
やりきれないですよ
この子どもたちの魂が
救われないなんて
私は思いたくない
この現実を信じたくありません
神さま悲しい 昨日今日の私です
偉大なるお方は何処に
花は咲き
鳥は啼き
木々は芽吹き
大気は揺らめき
地球は月を友に
太陽の周りを公転する
太陽風は宇宙に向かう
銀河系宇宙の果てへと
ビッグバンから始まる
大宇宙の法則を打ち立てた
偉大なるお方が
私たちの神
あなたですね
時々確認しないと
私はあなたに就いて
行けなくなりそうで
不安になります
人間はあなたを
独占したがっていますが
あなたは私たち人間だけの
お方ではありませんよね
人間はあなたに形づけられて
創られたなんて本当ですか
人間の思い揚がりではありませんか
地球の誕生から今に至る
歴史の中のほんのわずかな
数ページが人類の全てですが
始まったばかりのページに
赤インクで×印をつけるなんて
人々は言い始めていますが
たぶん駄目でしょうね
あなたのお答は私の
夢の中へお願いしたいです
昨日も今日もあなたに
お仕えするたろうくんより
還暦男の願い
何気なく咲いている菜の花
何気なく咲いているタンポポ
何気なく飛んでいるモンシロチョウ
そこに仲間のモンキチョウもやってきて
春の舞踏会の始まりです
あなた達は
どうして黄色の花なのですか
黄色い花は昆虫が気づきやすい
色だからなのですか
あなたはよく御存じですよね
何気ないこの風景と
あなたの存在に私はふと
気づきましたよ
生命の神秘とあなたの偉大さに
今日も癒やされている私は
あなたに感謝です
生きてることにありがとうです
来年もこの風景が見たい
還暦男の願いのたろうくんです
心のアルバムは…
悲しい思い出は
心のアルバムから
剥がしてしまおうか
それともあの時の
白黒写真のように
破り捨ててしまおうか
いやいやそれでは思い出が
修復できなくなってしまうな
妻に内緒で心のアルバムに
貼って置いたあなたとの思い出は
どうしようか 困ったね
悲しい楽しい思い出は
老いて行く私の未来の
大切な宝物だから
頑丈な金庫を拵えて
誰にも開けられないように
タイムカプセルにして
とって置こうかな
ああしよう こうしょうと
寝床で悩む 嬉しい
昨日今日のたろうくんです
こんな道 あんな道
迷い道
誰でも迷って入り込み中々抜け出せませんね
曲がりくねった道
まっすぐで広い道よりも面白いたろうくん人生のようです
抜け道
そんなに簡単に抜けられませんよ
あなた自分勝手ですね
大道
真っ直ぐ過ぎて面白くありませんね
私は歩いてきませんでしたよ
裏道
駄目ですよ
法に触れる道を歩いては陽のあたるところを
行きましょうね
坂道
これからが大変ですね
荷物が重かったら担ぎますよ
通り道
便利ですね ついでに用事を済ませておきますか
寄り道
今日もあなたは赤提灯の暖簾をくぐってチュウハイで
ご機嫌ですか 羽目をはずしすぎて後悔しないでくださいね
脇道 大道は直ぐ其処ですよ 良く確かめてゆけばわかりますよ
一本道
それしかないですか 将棋の香車がゆく道ですよ
獣道
人が通らない道ですね 迷い込んだら出られなくなりますよ
たろうくんが詠んでいたエロ小説の近親相姦ですね
逃げ道
「逃げるが勝ち」ですね 弱いと思うかも知れませんがこれが
強かですよ
人の顔色見ての世界でもありますね
夜道
暗くて先が見えなくても灯かりがあれば行き先がわかりますね
回り道
「急がば回れ」のことわざもありますね
私も廻り道してきましたよ
この道は案外早いかもね
ではのんびりと行きましょうかね
これらの道は昨日今日のたろうくんの歩いてきた道ですよ
あなたはどの道を歩いてきましたか これからですか
その道の見通しはどうですか 道標は見えますか
その道を行くと希望がわいてきますか これからも行きますか
歩いてゆきますか 自転車ですか 車ですか
友達と行きましょうね 家族と行きましょうね
皆で行けば怖くないですよ
腰掛イス
あなたは今日も一日中
街角でたちんぼうですか
待ちぼうけでしたか
仕事でしたか
疲れていますよねぇ
私が心の腰掛イスを
其処に用意してありますよ
お座りくださいね
ああ だめですねぇ
そんな石の上に
座り込んでは
もう冬が来てますよ
冷えますよ
木枯らしビュービュー
吹いてますよ
たろうくんは明日から
ホッカロン腰に貼り付けて
元気に仕事に行くみたいですよ
あなたに心の腰掛イス
使ってほしいと
余計なおせっかいを
焼きたい昨日今日の
たろうくんでしたよ
気になります
あなたに家の壁に掛けられた
写真額少し傾いてませんか
少しの傾きが気になります
あなたの机の上の写真立て今も
伏せられたままですか
伏せられた理由が気になります
思い出は通り過ぎカラー写真が
色褪せていますよ
あなたの情熱も色褪せたのですか
応接間の柱時計止まっていませんか
玄関に貼られたポスターの画鋲
外れていませんか
2月ごとのカレンダー捲ってありますか
あなたの心の腕時計
進んでいますか 遅れ気味ですか
大きなことはどうでもよくって
些細なことが気になる
昨日今日のたろうくんです
ぷんぷんぷんのたろうさん
たろうさんはお医者さんに行きました
待合室で待っていると
「…誰々さん」と名前が呼ばれます
誰も答えません
しばらくすると何も言わずに
誰かがカウンターに行きます
呼ばれた人なのでしょうね
診察室で先生が名前を呼んでも
誰も返事をしません
若い人もお年よりも皆そうです
日本人は何処に行っても返事を
しない人が増えています
いつからそんな風になったのでしょうか
あなたはどうですか
返事をしてますか
「おはようございます」「こんにちは」
「こんばんは」「いらっしゃいませ」
新入社員さん仕事が出来なくとも
挨拶がきちんと出来さえすれば
仕事も教えてもらえますよ
今日はお医者さんからの
帰り道の車の中で
ぷんぷんぷんのたろうさんでした
たろうさんのロト6・ミニロト
「さあ 今日も当てるぞ」と気合を入れて
たろうさんはロト6・ミニロトを買いにゆきます
このところ1000円も当たらない
空振りばかりのたろうさんです
「大空の遥か上を飛ぶ飛行機に
空気銃を放っているようなものだろうか
でも買わなければ当らないな」と最近は
小さなジレンマに陥っているのです
やめられないのです
やめてしまえばささやかな希望も夢も
なくなるたろうさんです
宝くじ中毒の症状ですね
買うのは週に1600円です
ささやかな抵抗と夢です
奥さんのひろこさんも
たろうさんの心を知っているので
ミニロトとスクラッチを買います
ひろこさんは くじ運が強いので
スクラッチで7万円と5万円を最近は1万円を当てました
娘さんは「お母さんはお父さんを引き当てたので外れね!」
「お父さん あたしとお母さんに当たったので
もう当たらないよ!」と素気無く言います
たろうさんの口癖は「1000万円でも当たれば家の
ローンも返せる 仕事にゆかなくてもいいからなぁ~」です
新聞発表の前にインターネットで結果を見て
いつもがっかりするたろうさんです
江戸時代の庶民の夢は富くじでした
ささやかなたろうさんの夢を笑わないでくださいね
昨日も今日も甘い考えのたろうさんです
たろうさんの家のゆずもいつの間にか色づいています
本当のこと…
本当のことを言うとね
誰かが私を助けてる
誰かがあなたを助けてる
私の知らないところで
あなたの知らないところで
夜もなく 昼もなくね
だから私もあなたも
信じ合いましょうね
語り合いましょうね
愛し合いましょうね
兄弟ですよ
友達ですよ
仲間ですよ
家族ですよ
恋人ですよ
時と場所なんて
選ばなくってもいいんです
自由に生きましょうね
深く考え過ぎたら
幸せも逃げてゆきますよ
インスピレーションでいいのです
理由なんて 言い訳なんて
必要ありませんよ
私とあなたで今から
人生の賛歌を唄いましょう
リズムを奏でましょうね
始まりは小さな輪でいいんです
唄声が小さくてもいいんです
子どもさんも 若人も お年寄りも 私もあなたも
一緒に唄いましょうね
いつも誰かが見守って
助けてくれるから
心の不安を取り除いて
明日のために
未来の希望のために
共に唄いましょうね
本当のこと…(2)
本当のことを言うとね
誰かが私を愛してる
誰かがあなたを愛してる
何処にいても どんな時にも
どんな困難を抱えていても
たとえ私とあなたが深い湖の底に
沈んでいても
悲しみの朝に目覚めても
誰かが私とあなたを愛し続けている
だから泣かなくってもいいんだよ
無理に笑顔を作らなくってもいいんだよ
私とあなたは運命の兄弟星
共に輝く一番星
私とあなたの心が偏って光っても
狂いが生じたのではありません
それは誰かの教えです お導きですよ
だから共に行きましょう
共に唄おう 唄いましょう
愛し合いましょうね
永遠などありませんが誓いを立てて
次の世代に私とあなたが共に再生するまで
いつの日かまた出会う時まで
今はその日が来るまで
愛が成就する願いをこめて
共に祈りながら待ちましょう
本当のこと…(3)
本当のことを言うとね
誰かが私を守っている
誰かがあなたを守っている
この星に何のために
生まれたのかを
悩む私とあなたを守っている
私とあなたを守っているのが
誰かを証明することではなく
受け入れることですよ
だから私とあなたは
兄弟ですね 友達ですね
家族ですね 恋人ですね
何も得ることがないからと
何も失うのもがないからと
諦めている私とあなた
誰かに守られていますよ
雨の日も 風の日も 星降る夜も
永遠に守り見つめてくれる
誰かが必ずいますよ
再び地上に輪廻する日まで
感謝しながらも
ありがとうを言いながらも
後悔し 迷い 罵り合い
私とあなたが歩んできた人生も
守られていましたよ
だから この地上で励ましあい
勇気を与えあって
共に使命が終わるまで
信じあいましょう
愛しあいましょう
今日から 明日から
生きてゆきましょうね
誰かが私とあなたを
屹度 守っているから
私とあなたの
明日も晴れ
本当のこと…(4)
本当のことを言うとね
失われてしまった
私とあなたの心は
何処へゆくのでしょうか
暗くて深い夜を走り続ける
特別編成の心の夜行列車の
寝台で私とあなたが
ふと目覚める 起き上がる
何もすることなんかありませんよ
ただ黙って流れゆく闇を
飢えた心と 凍えた眼で
見つめているだけですよ
後悔に明けくれた日々を
振り返っているだけですよ
憎しみ合いながらも
愛しみ合いながらも
私とあなたの引き受けた
責任の重さを 嘆き 喚き 悲しみ
私とあなたは生きてきましたが
それは運命と宿命に
反発し続けた人生でしたね
生まれた時代が悪かったのか
生まれなかった方が良かったのか
自問自答してきた私とあなたは
誰も知らない 判らない
世界を彷徨してきた
兄弟ですよ 友達ですよ
家族ですよ 恋人ですよ
私とあなたの失った過去を再び蘇えらせ
愛を取り戻し 心を取り戻し
輝く光を瞼に焼き付け
永遠に続くこの闇を突き抜けるまで
私とあなたの心の列車は走ります
私とあなたの心の旅は続くのです
本当のこと…(5)
本当のことを言うとね
誰が私とあなたを
この世で何をするために
この地上に生まれさせたのか
私にもあなたにもわからなかったことを
教えてあげる
今の私ならあなたなら判る気がします
愛し合うためですよ
憎しみ殺し合うためではありません
笑って 楽しんで 次の世で
再び合えるためですよ
ほらね 朝になりましたよ
鳥は謳い 花が咲き 木々は葉を萌えさせ
風がそよぎ 大気は揺らめき 雲が沸く
闇は塞がれて 日輪が東から西へ
素晴らしい明日が来ますよ
長い時空を経て繋がれた
私とあなたの人生です
諦めることはないですよ
悲しむこともないですよ
喜びに満ちて 笑おうね
楽しみましょうね
私とあなたはいつまでも
兄弟ですよ 友達ですよ
家族ですよ 恋人ですよ
真実が私の上にも
あなたの上にも
輝いていますよ
ほらね 今すぐに気がついたら
嬉しいご褒美がありますよ
幸せが私とあなたの
手のひらで広がるでしょう
だから 今の世を 笑いながら
楽しみながら 愛し合いながら
生きて行けばいいのです
本当のこと…(6)
本当のことを言うとね
私一人ではあなた一人では
及ばないからお力をお借りしますよ
兄弟ですからね 友達ですからね
家族ですからね 恋人ですからね
頼り 頼られるのが人生の
素晴らしい方法ですね 知恵ですね
みんなあなたのお力を待っています
期待しています 望んでいます
ひとりで寂しいと 誰も友達がいないと
思い込んでいないで 私に心を開きなさい
自力本願がだめなら 他力本願でいいのですよ
悩み叫ぶことは前進ですよ
これしか出来ないと不器用に徹しなさい
そして あなた自身の道を探しなさい
必ず開かれますよ 時間がかかってもね
私が頼りにするあなたですからね
自分が生かされていると知ったら
感謝する心に気づいたら
これから先のあなたの人生は
輝きを増すでしょうね
昨日も今日もあなたのお力を
お借りしたいと願うたろうくんです
本当のこと…(7)
本当のことを言うとね
夢を捨ててしまいたい私
夢を捨てられないあなた
夢を振り払うように駆けだす私
夢に縋りつきたいあなた
もう一度 信じ合いませんか
愛し合いませんか
すれ違ってから
千年経っても変わりませんか
後悔の海岸は深く長いですが
期待の入江は浅く狭いです
私とあなたの溝は埋まりませんね
だから今 嘆いても
叫んでもいいのですよ
明日から和解の笛が鳴ったら
新しい人生の始まりですよ
その笛は私の手元にあります
たろうくんが持ってます
人生は後悔(航海)の連続と
期待の海の繰り返し
みんな後悔(航海)の名船長ですね
たろうくんは一等航海士ですよ
本当のこと…(8)
本当のことを言うとね
私もあなたもお金持ちになることを
望んではいけないのですか
想うだけでもいけませんか
お金は正直欲しいです
でもね 悪魔に心を売り渡すのなら
お天道様の下を歩けないのなら
強欲な心を持つより
ささやかな今の暮らしで良いです
もうお金はいりませんよ
お金の亡者にはなりません
無理をして人を蹴落としたくないです
ババをひいてもよいから
兄弟を 友達を 家族を 恋人を
裏切りたくないから 諦めますよ
プチお金持ち計画は
只今で終了します
明日から 清く 正しく 美しく
暮らしてゆくことを誓います
本当ですよ 信じてくれませんか
そんな あっと言う間の
私とあなたの生活の方向転換に
「できるかねぇ~」と呟きながら
ほらね たろうくんが笑っていますよ
本当のこと…(9)
本当のことを言うとね
私もあなたももう何も要りません
なんてとても困りましたね
お金も 名誉も お酒も 異性も
いらないなんて本当に困りますよ
私もあなたも危険思想の
レッテルを貼られますよ
物欲と性欲が今の日本の
社会と経済を動かしているのに
私とあなたのような人ばかりでは
ほら あそこで輸出競争に血眼の
大企業が 資本家が 株主が
国家を動かしている官僚が 政治家が
真っ青な顔をして考え込んでいますよ
自分たちの仕事がなくて困っているのです
でもね 私とあなたは今以上の生活は
いりませんね 麦飯と五穀米で良いですよ
それより 昼寝する時間がほしいです
貧しいと思われている国の人たちは
「昼寝 俺たちはいつもしているさ」
「日本人は あんなに働いて 昼寝も出来ないんですか」
本当の豊かさはどちらなんでしょうね
「すべてを捨てればいいのですよ」
悟った仏様のようなたろうくんが言います
あなたはどうですか 今から明日から出来ますか
次第に増殖する不安に お金持ちなりたい誘惑に
勝てますか また困った問題が出てきましたね
「何もいらない生活は自由で良いですよ」と
たろうくんも言っています 負け惜しみですかね
本当のこと…(10)
本当のことを言うとね
私もあなたも気づいていたんですよ
どうして此処に一緒にいるかがね
人生の目標を失ったあなた
お金を稼げなくなったあなた
恋人を失ったあなた
行く当てのないあなた
ひとりぼっちのあなた
私が此処にいますよ
いつも見守っていますよ
あなたが素晴らしい日々を
取り戻すまで 共にいますよ
私はあなたの私ですからね
兄弟ですから 友達ですから
家族ですから 恋人ですから
この世の終わるまで
あなたの横にいますよ
あなたの嘆きや悲しみは
私に届いていますよ
だから 安心しなさいね
私はあなたの訴えを
心の鏡で喜びや幸に反転して
お返ししますよ
「愛しい私のあなたへ」と
たろうくんからの伝言です
山入川
枯れていた川に水が
溢れて流れている
枯れても伏流水となって
私の心の中を流れてゆく
濁水となっても
暫く時が経てば
清流となって流れる
自然はその繰り返しの日々
人生もまた同じ繰り返し
時として大きく小さな振幅で
橋の上から眺めているのは
一人ではありませんよ
たろくんと娘さんと奥さんです
時のサングラスを
掛けてて見れば
セピア色の河原
カワセミが魚を求めて
川面に飛び込む
アカショウビンは
森でボーとしている
夕暮れの空が茜色に映える
夕焼け小焼けのチャイムが鳴る
たろうくんの住んでいる
夕焼けの里の初冬です
紅葉
夕焼け台公園の欅が並んで
立っている 輝いている
命の讃歌を唄っている
此処であなたは冬を
いつも迎えています
春の芽吹きまで眠り続けます
いまは覆い隠された真実を
私とあなたの前に晒すのです
緑のベールを黄金色に染めて
私はあなたの横を
車で通るだけですよ
娘がハイヒールを
引きずりながら通りますよ
妻がパートに降りてゆく
坂道ですよ
バスが黒鉛を上げて
登ってゆきます
ウインカーを点滅して
止まります
夜 水銀灯が黙って
あなたを照らします
あかりがついている駐在所の
お巡りさん もうご就寝ですか
明日もおはようございますと
たろうくんもお休みですよ
「飼育」
餌台でスズメが餌を
啄ばんでいる
お仲間は金木犀の茂みの中で
楽しそうにお喋りしている
チュンチュン何を話しているのかな
砂場にはプラスチックの洗面器に
水を張ってあります
菜園は耕してありますよ
土だらけです
おいおい たろうくんそんなにスズメさんを
喜ばせていいのかい 苦労をさせないと
駄目スズメさんになっちゃうぞ
洗面器でピーピー水浴びをしながら
嬉しそうに啼いていたヒヨドリさんは
前の家のドラ猫に襲われて
ピーと叫んだ跡に
羽だけが残っていましたよ
最近 食いしん坊のハトさん
姿を見せませんね
オオタカさんに食べられてしまったのかな
今日もたろうくんは餌をやり忘れて
仕事に行ってしまいました
奥さんが気づいて与えました
たろうくんの日常は平和でも
生き物たちは必死ですよ
駄目駄目のたろうくんですね
シャボン玉
公園で子どもさんが
シャボン玉を追いかけている
そうだ 娘も部屋の中で
嬉しそうに両手を挙げて
夢中で追いかけ廻っていたっけ
20年も経つのかなぁ~
シャボン玉に娘の手が触れると
弾けて消えた
たろうくんは
吹き続ける
シャボン玉は
部屋の中に一杯になる
畳が濡れたっけ
娘さんの夢もたろうくんの夢も飛んでいたね
娘が私の生まれたところに
アパートを見つけてきた
来年から彼氏と暮らすために
私が18歳まで過ごしたところです
氏神さま 宜しくお願いします
ハヤやカジカを取った川は
意外と今は小さい流れですね
みんなみんな 宜しくお願いします
此処は母の一族が天正の頃から居住したところ
儀海上人が鎌倉時代後期に
最初に布教活動に訪れたところ
私は儀海上人が歩いた道のそばに住んでいる
不思議な御縁のたろうくんの物語です
すべては神のプログラムの中にあった出来事ですね
私は選択しただけです 気がついただけです
唯々感謝の日々の たろうくんですよ
たろうくんのひとりごと
このイスも机もロッキングチェアーも
わたしがあなたのために用意しましたよ
どうぞ自由にお使いくださいね
学び疲れたあなた
考えに行き詰まったあなた
体が辛いあなた
就職が決まらないあなた
行く当てもなく路上を彷徨う あなた
いつでも使ってくださいね
私の部屋のドアを叩いてください
お休み処とドアのノブに
札をかけてありますよ
あなたの日常も私の現実も
導きの綱がほしいのですが
時間はむなしく過ぎゆき
心は焦るばかりですね
月めくりのカレンダーは
あと一枚ですよ
訴えても 訴えても
届かない願い
叫んでも 泣き喚いても
変わらない生活
愛が不安を呼び
不安が愛を責める
そんな心のあなた
昨日も 今日も たろうくんは
あなたを待ち続けていますよ
たろうくんの椚(くぬぎ)
私の家の東側の山の斜面に
雑木林が広がっている
夏は太陽を遮り
冬には季節風を防いでいる
今は初冬 緑の衣を黄金色に染め
ベールを脱ぎ骨身を晒そうとしている
強風に体をうねらせている小枝は
静脈のように青空を掴んでいる
地上に立つ根元に繋がっている
北風に身体を捻り
悲鳴を上げるあなたの姿を
私と娘と妻が見ている
自然の摂理に生かされている
不思議を私が気づく時
神の真理に近づいている
来年も此処であなたに合える
素晴らしさを私は詠う
あなたが年輪を刻むように
たろうくんも歳を重ねます
『詩集・今書いている詩Ⅰ』 @19643812
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます