仮面親子



臭いものに蓋をした親子交流。


聞くと私は被害当時、テレビを賑わせた「積み木くずし」のような子になってしまったと父は佳代さんに言って居たようでした。

私は木刀を振り回した事も無いし、スケバンになった覚えもありません。都合勝手にいわれているのだなと思いましたが、私に昔の事は問わない。と父を信じて言っている佳代さんの手前、話を合わせました。


実際の処、私には母の遺伝要素もあって、割とスィッチの切り替えが得意で、その場その場で適当になれるのです。あまり深刻には受け止めていませんでした。

但し眠っている時の私に変化が始まり出した。

母が亡くなってから金縛りは体験していましたが、それが頻繁になっていった。それに悪夢が加わり、お腹も壊しやすくなりました。しかし、女性は良く体質が変わるとは聞いていましたのでそんなに深刻に受け止めていませんでした。


ある日、私と真一さんの住むマンションに父と佳代さんがやってきた。

突然父が土下座をし「パパは有加の教育を間違えた。許してくれ。」と言い出した。

この時、私は幼少期からの暴言暴力、その後の近親姦の事だと思った。皆の前だから具体的に言えないだけだと思い込んだのです。父は立ち上がり「俺は有加に謝った。これで俺の心は救われる。しかし有加に一つ言っておかねばならない事がある。俺を憎むな。俺を憎むとお前自身も憎むことになる。子供が出来たらその子も憎む事になる。決して幸せにはなれない事を心に刻め。」でした。

何も知らない佳代さんは「素敵なパパじゃないの~」と言い、真一さんも「良いお父さんだな~」と言った。私は何となく水に流さねばいけないのだろうと思いました。


その後、私は摂食障害を起こすようになった。今でいう睡眠時遊行症というやつです。

ダンサーですから太ると困る。それなのに、寝ている時に無意識に起き上がり、冷蔵庫まで行って冷蔵庫の中のものを片っ端から食べてしまうのです。この頃は頻繁では無かったのですが、江戸川橋に引っ越しをしてからはもっと酷くなり、ドッグフード一袋を食べてしまったり、水をはった灰皿の水を飲んだ事もあります。

新宿に住むころ犬を飼い始め、一匹のお留守番がかわいそうでもう一匹迎えたのですが、二匹目はちょっと。。と大家さんから言われて、

江戸川橋に引っ越してから本当に酷かった。私が二十六歳の頃でした。

踊りのレッスンは先輩ダンサーの所へは行きにくかったのと、どこか別の初心者クラスならどうにかついていけるか?腰骨を気にしながらレッスンに行った事もあるのですが、やはり、足に痺れが出る。

どうやってダイエットするか?困っていましたが、特に仕事がお休みの時に劇太りしてしまい、その時はお腹が緩みやすいのにあえて下剤を飲んだり、朝、目が覚めてから指を喉に突っ込んで吐いたり、真一さんに頼んで冷蔵庫を空にさせて貰ったりしてしのぎました。その後、飯田橋にスポーツジムが出来て、簡単なエアロビクスや水泳でコントロールしましたが、睡眠時遊行症は改善されませんでした。

そして、この当時こういうことが病だと認識出来る情報が無かった。


後に何十年も経った近年知ったのですが、実は私たちのような被害者にはこのような症状は顕著で、しかも本気で改心しない親とは絶対接触してはならないというのが基本だったようですが、この時の私はそんな事を知りませんでした。野放しで雑草のように生きていたのです。むしろ、何も考えず脳天気に生きていました。

まさに、過去を振り返らず、前向きに生きている。ポジティブな私。。

そんな気がしていました。


真一さんとは良く喧嘩をした。しかし、彼は父のように理不尽なキレ方はしなかったように思います。むしろ私の方が気分ヤで、彼には申し訳なかったなと今では思っています。但し腕力は男性の方が勝りますから結構、殴られたな!そんな感じです。

彼とは早い段階から出来なくなっていた。それも私の問題の症状だとごく最近分かりましたが、あの当時、私はなんだかんだいいながら逃れていました。結婚は計三回申し込まれましたが断った。

思えば真一さんと知り合った当時、私は恋に疲れていました。自分から誰かを好きになろうとはしていませんでした。しかし、私の住むマンションの十一階に現れた不審者がキッカケで流れに任せ彼と暮らすようになってしまった。一度、先輩ダンサーのジョンさんに相談した事があります。「アンタ~愛も無いのに一緒に暮らしたいのは寂しいだけ。一人になんなさいよ。」と言われた。今思うと図星。

犬が居て彼が居て、仕事が楽しくて、結局、情のようなものに流されながら、私は家族という幻を探していたのだと思います。


しかし、結婚してしまったのです。

私は真一さんのお母さんとは気が合い、よく飲みに行っていた。

平成一年の事。一緒に飲みに行ったお母さんから「有加さん。時代は平成になった事だし、そろそろ真ちゃんと結婚しなさいよ。」と言われた私は「そうですね~。」と言ったら結婚する事になっちゃったのです。

そして本当に脳天気な私は「祭りじゃ。祭り~」といった気分にトリツカレ結婚しました。

今真面目に思うこと。。

真一さんには申し訳ない事をした。彼の若い良い時期を私に費やさせてしまった事を。

何処かで幸せになっていてくれることを願います。


その後、父は豹変した。相手が弱い立場だと知ると畳みかける様に叩き潰そうとする人が父なのです。

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