やり直しに三〇〇〇ドル 4

〈16〉


 レナードを呼ぶマナナの声が、すすり泣きに変わっていた。それでもマナナは掻き抱いたレナードの首に絡む金髪を、大事そうに指先で梳き続ける。

「もう、無理よ」冷酷な母が、ベッドの腹に凭れたまま告げる。「彼女は彼女の望み通りあなたを護って、苦しまずに逝ったわ」

 発言者を求めてマナナが首を廻らせた。でも相手をつかみ切れていない。マナナはレナードの頭を胸にふらりと立ち上がろうとし、無様に顔から転んだ。リューイに撃たれた足先が役割をはたしていないのだ。マナナは誰にともなく伸ばした腕で、虚空を泳ぐ。

 その指先を、母が受け止めた。マナナを労わるように、母は血溜りの中に膝をつく。

「あなた……」マナナが母の喉をつかみ上げた。「あなた、医師なのよね。ならばレナードを助けられるでしょう。助けてちょうだい! あなた、あの」

 マナナの片腕が空を薙いだ。おそらくシシリを示したのだろう。目の見えていないマナナの指は、少年が壁に刻んだ弾痕につきつけられている。

「あの幽霊を、断頭台から生き返らせたのでしょう! なら、やりなさい! レナードも、生き返らせて! レナードが私より先に、私を護って死ぬなんて、あってはいけないの!」

「無理よ」母は顔を歪めて、ゆるりと頭を振る。「彼女たちは予め、様々な検査を受けて適応する血液型や免疫型が判明していたのよ。だからすぐに新しい体を用意できたの。でもその子は……」

 母は言葉を濁して、千切れたレナードの頭を見る。まるで生ゴミでも突き付けられているような表情だ。

 けれど、視界を失ったマナナは、母の沈黙を哀悼や同情だと理解したらしい。「あのとき」と言い募る声は、まだ希望の裾を探っていた。

「四年前、私たち〈緑の虎〉は全員、あなたの新しい手足や臓器になれるか検査を受けたわ。ねえ、エヴァ」弾んだ声で、マナナは横倒しになったベッドの腹へ同意を求めた。「あなたのために今朝、四人の子供たちを提供したでしょう? その内の一人でいいの。レナードに与えてちょうだい。ねえ、お願い。それくらい、いいでしょう?」

 眉をひそめたジギィが、横倒しになったベッドの陰から立ち上がる。左腕にエヴァンを座らせていた。エヴァンの、黒く血管が浮き出た手がジギィの首に回っている。

 寄り添う二人を、ボクの母は振り仰ぐ。指示を待っているのだろう。

 エヴァンが、深く息を吐いた。その弾みに、喉に巻かれていたスカーフが解ける。黒い傷跡が首を一周している、と思った。

 シシリが、自らの喉を撫でる。一文字に首を横断する、傷痕だ。

 揃いの傷痕に見えたのは、エヴァンの首に装着された箱型の黒い咽喉マイクだった。エヴァンの不思議な声は咽喉マイクが彼女の喉の震えを増幅して電子音声を作る、人工声帯のものだったらしい。それを固定する黒いベルトの下に、おそらくシシリと同じ大きな傷痕があるのだろう。

「わたしは」シシリの吐息が言葉を掠める。「その女に手足を提供するために、生まれたの?」

「まさか」エヴァンは電子合成音で、ヴィヴィ、と笑う。「君は正真正銘、僕の妹だよ。一卵性双生児の僕らなら、拒絶反応は出ない。僕は記憶を、君は体を。僕たちは二人で一人になるんだ。これでようやく、この不便な体とさよならできる」

 ほう、と息を吐いて、エヴァンは天井を仰いだ。失墜寸前の蝶のモビールが、その屍色の頬に光を散らす。

「いいかい? マナナ。あなたから入荷した子供は四人、内一人はボクが使い、二人は出荷した。残る子供は一人だけど……。僕の体は末端から腐り始めた、シシリは記憶の全てを失った、そして僕のママは生き返らなかった」

「それでも!」

「いやだよ」平淡に、エヴァンは切り捨てた。「どうしてボクが、君たち〈緑の虎〉を助けなきゃいけないんだ。あのとき、四年前、ボクらの施設を内側から食い破ったのは君たちじゃないか。その女はリックを撃ち、トールの父親を含む多くのスタッフを虐殺した」

「でもあなたはずっと、私と協力関係にあったじゃない。私はあなたにたくさんの子供を提供したわ。あなただって、私がレナードから逃れる手助けをしてくれたじゃない」

 エヴァンは呆れ顔をした。マナナが、確執なく自分との協力関係を築けていたと思い込んでいることが理解できない、という顔だ。憎悪を溜め込んだ自らの計画を、ここに至ってなお悟れないマナナの愚鈍さに憐みすら覚えているのかもしれない。

 エヴァンは虫を追い払うように手首を閃かせると、顔をシシリへと向け直す。

「さっきも言った通り、僕らの全員が、首の挿げ替えに成功していないんだ。生きるってだけなら、成功かもしれない。でも人間としては、失敗だよ。一九七〇年の実験では、猿での成功が報告されているっていうのに、ね。まあ、その猿はそう長くは生きなかったらしいから、体が正しく機能し続けるか、記憶が失われないか、なんて検証はできなかったんだろうね」

「つまり君は」シシリが、疲れた抑揚で言う。「わたしの首を切り離して、わたしの体に自分の首を挿げる気でいるの」

「うん」エヴァンは腐りかけた生肉然とした両腕をジギィの首から外して、掲げた。「僕はこの体と十一年も付き合って来たんだ。もう、いいだろう? もう、十分だろう?」

 ねえ、シシリ。と囁いたエヴァンに、誰も答えなかった。

 ボクは彼女の十一年の苦痛と、彼女のために死んで逝った子供たちのことを、同時に考える。

 そこに関与しているのは、母だろう。

 十一年前、ボクが就学を理由に日本に還されたころだ。両親は、エヴァンのために子供たちを殺す自分たちを、ボクには隠しておきたかったのかもしれない。

 エヴァンは腐った両腕を垂れると、「トール」とボクへ矛先を向けた。

「初めて逢ったときもこんな風だっただろ。覚えているかい、王子さま」

 自分は魔女に食べられるタルトなのだと言った少女を、思い出す。あの虚ろな眼差しの先にいたたくさんの子供たちも、脳裏を過る。

 眩暈がした。急速にウエストホルスターの中の拳銃が――シシリやジギィとお揃いの凶器が、自己主張し始めるのを感じた。理解不能な敵を撃て、と〈緑の虎〉にいたころのボクが唆す。

 両親が隠してきた過去を、ボクは暴いてしまった。だからボクも、ボクの秘密をバラすべきじゃないんだろうか。そんな言い訳を、考える。

 母には知られたくなかった。ボクが兵士だったなんて、人殺しだなんて、知られたくない。想像しただけで死にたくなる。そう、今でも思う。でも。

「ジギィ」

 シシリの呼びかけに、ジギィが肩を震わせた。

「君は、わたしがその女の予備部品だから、わたしと一緒にいたの?」

「そうだ」無表情な、即答だ。

 そう、とシシリはため息をついた。その吐息と同化した腕が、拳銃の照準をマナナからジギィへと移す。あまりにも自然な動きだったから、誰もが平和に眺めてしまった。

 真っ先にロシナンテの制止が、銃声に呑み込まれる。発砲音が連なって、排莢の連鎖が電光に美しい軌跡を翻す。立て続けに、引き金を戻す間も惜しいとばかりにシシリの拳銃が十三発全ての銃弾を送り出す。

 ジギィは、伏せなかった。エヴァンを抱く指に力を込めて、それでも顔すら背けずシシリを見返している。

 壁が無数のクレーターに削られていた。でも一発だってジギィを抉ってはいない。

 ジギィは緩慢な動きで耳朶を押さえた。直近を掠めた銃弾で鼓膜を傷めたのだろう。それなのに表情一つ変えない。

 ふ、とシシリが微笑んだ。彼女を縛っていた殺意が解けていく。シシリは機関部を剥き出しにした拳銃を手放すと、腹側に固定していたAK-47の銃身とベルトをつなぐ金具を外した。暴発しないように台尻を靴で支えながら、彼女はAK-47を床に横たえる。そして腰の後ろから小さな、〈タルト・タタン〉の中でシシリだけが有している掌大の拳銃を引き抜いた。

 四年前、ヘリからボクの両親とマナナたちを撃った、あの銃だ。

「じゃあ、あげるよ」

 なにを、とシシリは告げなかった。ジギィも問わなかった。

「君がわたしを要らないと言うなら、わたしだって要らない」

 シシリが銃口を自らの顎下に押し付ける。

「シシリ!」

 ボクの叫びに、リューイが飛び出した。大きな一歩で間合を詰めると掌底の一撃でシシリの手首を打つ。

 閃光が走った。音は、聞こえない。リューイが怒鳴っていることはわかるのに、竦んだ脳が理解を拒否している。

 小さな拳銃が回転しながら血だらけの床を滑っていく。

 M4カービンを肩ベルトに預けたリューイが、全力と知れる形相でシシリの両腕を押さえていた。

 冷たい汗がどっと噴き出す。膝が笑って、体中がむず痒くなる。シシリとリューイはまだ組み合ったままだ。膠着状態の最中、「ロシナンテ!」とリューイが叫ぶ。

 物凄い衝撃波がボクを薙いだ。思わずたたらを踏む。

 母が、倒れ込んだ。その右膝が消失している。短い呻きを上げながら母は両手をばたつかせるばかりだ。隣では母を助けようともせず、マナナが両手で耳を覆って体を竦ませている。

「母さん!」

 思わず駆け寄った。途中、レナードの肉片を踏んで肩から転ぶ。ウエストホルスターの拳銃が腰に食い込んで、痛かった。

 両手で母の膝上を圧する。血が、止まらない。脈拍に合わせて吹き出し続ける。スカートの裾を肌蹴て、母が痙攣した。

『あら、ごめんなさい』ロシナンテが、悪びれるでもなく部屋のスピーカを震わせた。『やっぱりガラスを抜いた一発目はダメね。どこに飛ぶかわかったものじゃないわ』

 防弾仕様の窓を覆うブラインドに、大きな穴が開いていた。

『そろそろいい感じに敵性戦力が減ったころかしら。さあ、大人しく投降してちょうだい、ジギィ。十二.七ミリ弾よ。この距離なら装甲車だって貫通できるわ。大事なお姫さまの脳が、掻き集められるほど残るといいわね』

 エヴァンを下敷きにして伏せていたジギィが、素早くベッドの陰に移動した。首を伸ばしてロシナンテを窺う様子で、けれど彼自身が閉ざしたブラインドがそれを邪魔していた。

 ブラインドで視界が遮られているのはロシナンテの側からも同じはずだけど、自信に満ちた声から考えれば彼女にはこの部屋を覗き見る方法があるようにも思えた。

 苦々しく舌打ちをして、ジギィが天井のスピーカに声を張る。

「お前の目的は、なんだ」

『目的? あたしはね、これでも怒っているの』

「それだけか?」

『部下にミサイルをブチ込んだボスを粛清するのに、他の理由が必要かしら?』

「俺に対して怒ってるなら、俺だけを狙え」

『あら、感動的な提案ね。でもダメ。あたしはずっと〈ヒューゴ〉を追って来たの。だから、お姫さまは逃がしてあげられないわ』

 逡巡するように、ジギィはシシリを仰いだ。次いでベッドの陰に蹲るエヴァンを、最後にボクとボクの母を、見る。

『ねえ、ジギィ、大人しく拘束されてくれないかしら。今ならまだ、二人分の命を保障してあげられるわ』

 そうか、と呟いたジギィは手の内の拳銃を弄ぶ。安全装置を掛けて、外して、銃身を指先で撫でて、また握り直す。撃つ者を決めかねているのかもしれない。

 シシリが一歩、ボクらへと近づいた。

「撃つな、シシリだ」

 リューイの焦った口調は、咽喉マイク越しにロシナンテへ送ったものだろう。

 血と腸の臭いを踏み拉いて二歩、三歩と運んでいく。落ちた蝶たちも四散したガラス片も、レナードの残骸や千切れた母の右足すら無表情にまたぎ越して、シシリはなぜかボクの前で立ち止まる。

「シシリ……母さんを、助けて」

 シシリは、答えてくれなかった。冷たい視線でボクとボクの腕の中で痙攣する母を見下ろしている。

 堪らず、ボクは焦げた色の両腕で自らの肩をさするエヴァンに叫ぶ。

「ねえ、エヴァン! お願いだから、母さんを助けて! 君はずっと、母さんに助けられてきたんだろ! こんな人でも、ボクの母さんなんだ! お願い!」

 シシリの腕が、おもむろに肩まで上がった。と思ったときには振り抜かれていた。

 視界が真っ白になって、チカチカと明滅する。殴られたんだ。そう気付く前に、ボクの体は血の中へと倒れ込む。熱くなった口腔から折れた歯がこぼれ落ちた。

 体重の乗った、容赦のない拳だった。へ? とリューイが間抜けに瞠目している。

 シシリはもうボクへは一瞥もくれず、窓へと向かう。取り落としていた自らの掌大の拳銃を拾って、シシリはブラインドの前に立つ。

『……どういうつもりかしら、シシリ』スピーカとイヤホンが、同時に不機嫌なノイズを孕む。『退きなさい。あなたの薄っぺらい体なんて盾にもならないわ。わかっているでしょう? 一緒に撃ち抜かれたいの?』

「それも、いいね」

 場違いに微笑んだシシリはきらめくガラスの上で優雅に反転すると、ブラインドに開いた穴を背中で塞ぐ。

 ジギィが、無防備に立ち上がった。エヴァンはベッドの陰に隠れたままだ。素早くリューイのM4カービンがジギィを捉える。

「ジギィ……」

 甘えた仔猫に似た、シシリの呼び声だ。

 ジギィの手は、垂れたままだ。拳銃を握った右手も、空っぽの左手も、応えない。

 瞬き二つ分の沈黙を、シシリの吐息が終らせる。穏やかに笑んで、シシリはタクティカルベストからキーホルダを取り出した。黒い円盤が――たぶん、焦げたタルトを模したプレートがぶら下がっている。地下駐車場に停めたアバランチの鍵だ。

「わたしは君に生かされた。君が要らないというなら、わたしもわたしなんか要らない」

「お前を生かしたのは」

「人間的な意味で、だよ」

 無粋だなぁ、という軽口の延長で、シシリはキーホルダを抛った。

 放物線が二人をつないで、鍵はジギィの掌に消える。

「シシリ、逃がす気か」

『シシリ!』

 リューイとロシナンテを無視して、シシリは顔を斜めにした。行かないの? と問いかけるようにも逃走を促すようにも思える仕種だ。

 ジギィが、キーホルダを握った手を伸ばした。絶対的な距離が二人の間に横たわっている。それでも彼はシシリの輪郭をなぞった。いつかタンドラの運転席でそうしたように、彼の指先は届きもしないシシリの髪先を擽る。首の傷跡を確かめて、唇に指の背を押し当てて、返す手で彼自身の唇に触れる。

 はは、とシシリが声を上げた。

 素早くしゃがんだジギィが、エヴァンを抱き上げる。シシリによく似た容貌の中で、マナナから奪った金眼が電光を浴びて緑に輝いていた。その美しさがシシリを映す。エヴァンの唇が歪に引き絞られて、泣き出しそうな微笑になった。

『シシリ! 退きなさい!』

 イヤホンがロシナンテの舌打ちで音飛びを起こす。ロシナンテのマイクがなにかにぶち当たる気配がした。持ち場を離れてジギィを追うつもりなのかもしれない。

「また、ね」ひび割れたエヴァンの唇が動く。「僕の、妹」

 ほとんど同時に、エヴァンを担いだジギィが駆け出した。

 リューイのM4カービンが彼の足元を狙って、けれど「撃たないで!」というシシリの鋭い懇願に動きを止める。

「お願い」両手で包んだ掌大の拳銃をリューイではなく床に向けて、シシリが真摯な眼差しで言う。「撃たないで。往かせてあげて」

 ジギィに押し退けられてよろめいたリューイが廊下の先、ジギィの背にM4カービンの狙いを定めて、大声で唾棄する。

「お前の! お前たちの! そういうトコが心底気持ちわりぃ!」

「うん。知ってる。……ごめん」

 シシリの苦笑を、乾きかけた血をベリベリと鳴らして走るジギィの足音が彩った。それもすぐに遠ざかり、消える。

「エヴァ……?」マナナが血の海を泳いでいた。「ドクター・リック? どこ? ねえ、私を置いて往かないで。ねえ、エヴァ? エヴァ……。レナード……どこにいるの?」

 マナナは手探りでエヴァンたちを追う。匍匐で薄桃色のベッドの脚に辿りつき、横倒しになったベッドの腹に行く手を遮られて、部屋の中央へと引き返してくる。

 チョコレート色の手が、小さな輝きをつかんだ。かつてマナナの眼窩に嵌めていた、レナードがGPSを仕込んでいたという半球型の、ガラスの瞳だ。

 金と緑を移ろう美しい虹彩は血で濁っている。それでもマナナは、そのガラス玉が仲間を見付けてくれると信じているように左眼に嵌め込んで顔を廻らせた。

 嘆息したリューイがM4カービンを下ろした。途端に腹の辺りを抱えて蹲る。ホームに撃ち込まれたジギィのミサイルで、傷を負っていたのかもしれない。空咳を繰り返すその背中は、笑っているようにも見えた。

 シシリは小さな銃を億劫そうに上げると、壁に掛けられたモニタ群から地下駐車場だけを選んで撃ち抜いた。画面の中央部が灰色の円を作る。それでも優秀なモニタは、衝撃から逃れた画面の端々にアバランチを映していた。

 シシリの銃が機関部を剥き出しにして膠着していた。四年前、ボクの母やレナードたちに向けられたときには八発も呑み込んでいた銃は、二発で弾切れだった。

 たった二発、二人分の死。

 ボクは、リューイのセリフを思い出す。シシリとジギィの関係を尋ねたとき、彼はジギィを『シシリの死ぬ理由』だと評した。失恋は死に値する。そんなバカげた関係を、シシリの銃弾が肯定していた。

 ボクはウエストホスルターから、重たい拳銃を引き抜く。母が気絶しているのか、ボクを見ているのかは、確認しなかった。慎重に、両手で銃把を握り締めて、〈タルト・タタン〉のみんなとお揃いの銃の引き金を、絞る。

 シシリがジギィとエヴァの逃避行を見なくて済むように、十五発全てをモニタに撃ち込んでいく。反動が肘の内を駆けて、体を痺れさせる。

 満腹だった拳銃を空っぽにするころには汗が滴っていた。頬から顎先へと伝う生温さに息が苦しくなって、胸が詰まる。

 気合の声とともに跳ね起きたリューイが、ボクの肩に腕を掛けた。ついでとばかりに勢いよくシシリも引き寄せて、三人で仲良くずるずると座り込む。

 二人のタクティカルベストがあちこちに食い込んで痛かった。だからきっとボクの視界が滲んでいるのは、そのせいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る