やり直しに三〇〇〇ドル 1

〈13〉


 闇をアバランチの前照灯が裂いていた。車内を炙るカーナビの画面は相変わらず真っ青で『No Signal』一辺倒だ。おかげで土地勘のないボクには、ここがクウェートのどの辺りなのか見当もつかない。

 運転席のジギィがハンドルを抱きかかえるようにしてインパネを隠しているせいで、速度すらあやふやだ。尻から伝わってくる振動から考えて、舗装された道路を駆けるスピードは然程出ていないだろう。平気なフリをしているだけで、ジギィもどこかしら負傷しているのかもしれない。自分で、といってもヘリを墜落させて無傷で済むとも思えないし、実際に彼のシャツは煤だか砂だかで汚れている。

 助手席ではマナナが胸の前でカラシニコバを抱えていた。天井を向いた銃口も腕に通したままの肩ベルトも、どちらもひどく新鮮で違和感がある。だって、ボクの知るマナナはいつもレナードの陰で微笑みを湛えて佇むだけだった。その艶やかなチョコレート色の手と銃の暗色は親和性が高過ぎて似合わない。

 そんな二人の後ろで、ボクは横目に隣の殺気を窺う。シシリがシートに片足を乗せた姿勢でアサルトライフルAK-47を、ヘッドレスト越しにマナナに押し付けている。こんな狭い空間で発砲すれば熱せられた排莢がシシリの顔を直撃するはずなのに、彼女は頓着することもなくマナナを狙っていた。

 酸欠になりそうな緊張感に耐えられず、ボクは「ねえ」と恐るおそるマナナに囁く。

「レナードと、なにがあったの?」

 マナナは体を捻って、シートの脇から不思議そうな顔を覗かせる。

「レナードは、君を探して〈タルト・タタン〉のホームに攻めてきたんだよ。子供たちだって何人も地雷を踏んで、それでも君を取り戻しに来たんだ。たぶん今も、闘ってる」

 マナナは無言で片方だけの目を眇めた。陥没した左の瞼すらなにかを伝えたそうに引き攣れている。

「彼女たちは、君の大事な家族だろ? どうしてそんなに冷静で」

「あれは」

 いられるんだ、と詰る声を、マナナに攫われた。思いがけない強引さに戸惑って、ボクは口を噤む。

「レナードの家族よ。私のではないわ」

「……同じじゃ、ないの?」

 マナナは昼の砂漠で別れたときと同じ微笑を浮かべると、それきりシートの陰へと引っ込んでしまった。

 ボクの知る〈緑の虎〉はマナナとレナードと子供たちとで構成されている。それなのにマナナの言い方はまるで、レナードが別の組織を率いているようだ。

 ふっと車内がオレンジ色に染まった。外を窺うと片側二車線の道路にぽつぽつと街灯が点りはじめていた。砂漠ばかりだった景観の先に要塞じみた街並みが出現している。相変わらず人気はないけれど、五階建てくらいのビルが何本も聳えて陰鬱な影を描いていた。爆弾と銃弾が飛び交う隣国と一緒くたにしたことを詫びたくなる程度には、整然とした街だ。

 前屈みだったジギィの体がのっそりと伸び上がった。首を左右に倒してから、芝居がかった嘆息だ。無事に地雷原を抜けられたようだ。

 彼でも緊張することがあるんだ、と変な感慨が湧いてくる。

 ジギィがアバランチのカーナビを操作した。あれほど仕事を拒否していた画面が、即座に生き返る。地図が映っていた。道の本数は多くないけれど、やる気のない曲線を描いてある。

 シシリは黙ったままだった。いや、微かに息を呑む気配がした。

 寝静まった建物群を抜けて町の中心部へと向かう大通りの先に、があった。なんの変哲もない、周囲の建物と同化しかかった白いビルだ。でもボクにはわかった。シシリもそうだろう。

 四年前、〈緑の虎〉から買い取られたボクが連れて行かれた施設と同じだった。開放的な窓を強調した外観が、というわけじゃない。橙色に染まる町の夜を浸食している排他的な空気が、まるきり同じだった。

プラント工場……」

 半ば無意識に呟いた。そんなボクを、マナナが振り返る。

「あなたが、あそこを『プラント』と呼ぶの?」

「……違うの?」

「『プラント』は、あそこの実態を知らない連中が侮蔑的に付けた呼び名よ。リックの息子であるあなたが、あそこを『プラント』などと呼んではならないわ」

「リック……」

 リックの息子。とても懐かしい響きだった。

 昔、ボクがまだ両親とともに外国の難民キャンプを回っていたころ、みんなが母を『リック』と愛称で呼んでいた。Dr.と敬称をつけて大人も子供も、誰もが母をそう呼ぶ者なから、ひょっとしたら母は自分の本当に名前なんて忘れているんじゃないかと思ったくらいだ。実際、あのころの母を「ユカリコ」と呼んでいたのは父だけだった。そして同時に、すっかり外国語に馴染んだ母の舌は、時折ボクの名すら怪しい発音で呼んだものだ。

 もっとも、両親にとっては実子のボクより難民キャンプの子供たちのほうが大事だったのだろう。いつだってボクの食事は子供たちに分け与えるための予備分に過ぎなかった。トオルは日本に帰れば好きなだけ食べられるでしょう、と子供心にだってズレているとわかる理論を振りかざす母こそが、ボクにとっての母だった。

 そんな理不尽な日常とは小学校入学と同時に縁が切れたはずだったのに、そういえば、どうしてボクは日本に還されてからも夏休みごとに両親に会いに往っていたんだろう。挙句、懲りもせず母に会うために〈タルト・タタン〉を利用しているなんて我ながらロクでもない、と歪んだ唇を隠すために俯く。シシリの、使い込まれたアーミーブーツの先っぽが見えた。

 ロシナンテとリューイは、そしてレナードは、どうしただろう。

〈タルト・タタン〉のホームに残してきた仲間たちを案じて背後を窺ったとき、不意に背筋が凍った。

 反射的に窓に頬をつける。頭上にジギィのヘリが迫っているんじゃないかと期待したんだ。期待? いや、恐怖だ。また、ジギィのヘリであの施設から連れ去られるんじゃないか、と心臓がいやに騒いでいた。

 妄想だ。ジギィは現にアバランチのハンドルを握っているし、砂に濁った空がボクらを覆うばかりだ。

 緩いスロープに導かれてアバランチが地下駐車場へと吸い込まれていく。屋根から生えた長く太いアンテナが低い天井を擦って、取っ組み合う猫みたいな鳴き声を響かせた。

 駐車スペースはガラ空きだったのに、シシリはわざわざ非常口にアバランチを横付けさせた。何度も切り替えさせて助手席側の扉と外開きの非常口とが接触するかどうかの距離まで詰めさせる。施設の誰一人として逃がさない、という意思表明だろう。

 まずはシシリが後部座席から滑り降りた。AK-47の照準はマナナとボクを行き来している。

 シシリに促されるより早くジギィが、続いてマナナが降車した。

 空っぽの運転席に腕を入れたシシリが、鍵を抜き取る。これで非常口を塞ぐアバランチは動かせない。バリケードの完成だ。

 マナナが、胸に抱えていたシシリとお揃いのカラシニコバAK-47を、慣れた様子で背中に回した。髪を整えたマナナは、シシリが構える凶器を鼻で嗤う。

「そんなモノを誇示しながら入る気ですか? 〈タルト・タタン〉。ここは平和な法治国家たるクウェートですよ。まだ戦場気分なら改めた方が、あなたのためです」

 シシリの返事は、銃口をしゃくる一挙動だった。

 先頭にジギィとマナナ、そしいて空っぽの両手を垂れたボク、しっかりと銃を保持したシシリと並んでアバランチで下ってきたばかりのスロープで地上に出る。

 街並みを照らす街灯がひどく眩しくて、珍しく感じた。その足元に一人の人間もいないことにうすら寒さを覚える。駐車場スロープのすぐ脇で煌々と白く電光を満たしたガラス戸越しに翻る幾枚かの白衣の方が異常に思えるくらいだ。

 ガラス製の自動ドアは放射状のヒビが入っていた。平和な法治国家、という肩書が途端に怪しくなってきたけれど、クレーター状になったヒビの中央に穴は開いていなかったから一先ずは安心する。銃弾が撃ち込まれた、というわけじゃなさそうだ。

 エレベータホールを兼ねたエントランスは、病院というよりもオフィスみたいだった。待合室も受付もなくて、裁判所の被告人席じみた机にぽつんと電話一台だけが放置されている。ぐるりと見回してみただけで四台の監視カメラと目が合った。明らかに武器で脅しをかけているシシリが映っているはずなのに、誰も出迎えてくれない。

 ジギィが上方ボタンを押してエレベータを呼びつける。門番然と壁際を飾っている観葉植物は手入れが不十分らしく、色褪せていた。

 間抜けな到着音とシシリに追い立てられるようにして、ボクらはエレベータの箱に納まる。天井には冗談みたいなシャンデリアが張り付いていた。階数表示は十二階までだ。

 ジギィの指が最上階を命じるのに合わせて、シシリが箱の最奥に場を移した。彼女の射撃軸上のマナナは扉の真ん前に、操作盤の前にはジギィが、そして所在のないボクが片隅に立つ。

 砂漠から脱してから一度だって、シシリはボクを警戒してはくれなかった。まるでボクの存在そのものを消し去っているようだった。そして彼女は、こんな状況なのにまだ一度もジギィに銃口を向けていない。

 シシリにはジギィしかいない。

 でもたぶん、ジギィにとっては違う。

 ボクはそっと右耳のイヤホンに指を伸ばす。こもった沈黙の底で微かなノイズが生じた気がした。気配を殺したエヴァンの、嘲笑かもしれない。あの優秀過ぎる『眼』でもって今もボクらを、いや、シシリの行動を見物している。そんな不気味な想像を打ち消せず、ボクはエレベータが寄越す浮遊感の中で生唾を飲む。


 柔らかいショックとともに停止したエレベータが厭々の体で口を開いた途端に、眩しさが眼底を焼いた。武装した警備員たちの待ち伏せを危惧したけれど、清純にコーティングされた廊下が蛍光灯の光を増幅しているだけだった。

 壁には規則的に大きな窓がはめ込まれていて、これまた煌々とした室内が丸見えになっている。どのベッドも埋まっているようだ。深夜でも明かりに照らされる患者たちに同情しかけたけれど、つながれた生命維持装置だの心拍モニタだのの仰々しさが彼らに室内の光量など関係ないのだと悟る。

 これも、あの施設と同じだ。ボクがマナナやレナードと一緒に連れて行かれた、シシリと初めて出会った、両親の仕事場とは建っている国が違うだけのまるきり同じ医療施設だ。当時も、レナードたちと連れて行かれた階は子供たちで賑やかだったけれど、上層階には身動きはおろか意思表示すらできない死体然とした人たちが収容されていた。

 急に、数メートル先の壁がぽっかりと穴を空けた。がらがら、と姦しい音が響いく。

 病室から担架が運び出されるところだった。横たわる人影が痙攣でも起こしたかのごとく激しく身を捩っている。患者が担架から落ちないための配慮なのか、黒く太いベルトが患者の体に回っていた。

「よお」ジギィがのんびりと片手を挙げる。「出荷か?」

 担架を押す男もまた、慌てている様子もなく「やあ」と足を止めた。担架の上で跳ねていた患者が、はっとしたように動きを止めた。

「遅いご帰還じゃないか、ジギィ。そっちは……」シシリのAK‐47を認めた男が驚いたように半歩身を引いた。「お姫さまの、かい?」

「ああ」頷いたジギィが片頬を歪めて、嗤うでもない不思議な表情をする。「客だよ」

「お姫さま、もう寝てるんじゃないかい? 手だか脚だかを取り換えたとこだろ?」

「寝てたら、キスでもするさ」

 ひょいと肩を竦めて、男は白衣の裾を遊ばせる。

「いいね。僕も早く帰って娘にキスしたいよ。どうしてこう、クライアントの容体ってのは帰ろうとしたときに限って急変するんだろうね」

 苦笑する男の手元で、横たわっていた患者がボクを睨んだ。いや、救いを求めるように、潤んだ眼で必死にボクを見詰めている。

 患者じゃ、なかった。上衣の袖が、両腕を胸の前で交差させる形で背中へ回されている。腹も太腿も足首も、太いベルトできつく戒められている。

 患者は拘束されて、担架に縛られていた。

 出荷か、と問うたジギィの声が、今さら脳に突き刺さる。

 出荷される患者を、ボクは確かに、知っている。ずっと前から、四年前のあのときから、知っている。

 首筋が冷えた。思考まで凍りつきそうだ。思い出してはいけないことが、封じてきたなにかが、ボクの背骨の中で蠢くのを感ずる。

 けたたましい音で我に返った。担架のタイヤを鳴らして、男が去っていく。動けない患者を、していく。

 不意に指先が温かくなった。血の気が失せて冷たいくせに汗をかいているボクの手を、マナナが包んでいた。ボクがよく知る武器のないチョコレート色の肌が、四年前の施設とは違ってすぐ傍にある。

 なぜか、懐かしさよりも不安が押し寄せてきた。そんなボク自身を騙すために、マナナの手を握り返す。柔らかさのない、日本で触れた女の子とは全然違う、掌だった。

 背中側で、銃口を伴ったシシリの苛立ちが膨れ上がるのを感じる。気付かないフリで、ボクはジギィのシャツの裾ばかりを追う。砂漠の砂でくすんだそれは潔癖な施設内にあって幽霊みたいに現実感が乏しい。

 きゅ、と廊下が鳴いたことで、我に返った。長い廊下の中ほど、なんの変哲もない壁の前でジギィが足を止めていた。

 その横顔に「四年前」と話しかけ、でも自分の声の反響の大きさに怯んでしまった。唾を飲んでから、声量を調節する。

「ボクが〈緑の虎〉と一緒に連れて行かれた施設は、ここと同じなの? ここは、なにをする施設なの? 出荷って、なに?」

「……直接訊けばいい」

 誰に、と言わず、ジギィは壁に掌を当てた。

 壁だと思っていたのは、うまくカモフラージュされた扉だったらしい。人一人がようやく抜けられるくらいの細い階段が壁の奥に延びていた。

 それを半階分ほど上った先が、執着地点だった。

 ポーチと呼んで差支えのない空間が現れる。赤いポストとインターホンが突き刺さり、その先には蔦に捕えられた蝶を模したレリーが刻まれた木製扉だ。一瞬どこかの高級住宅街に迷い込んだ錯覚に陥る。

 ジギィは律儀にインターホンを鳴らして、そのくせ返答を待たずに白衣の下から取り出した鍵で扉の施錠を外した。

 やっぱり白だった。タイルが整然と続いている。広い廊下の両サイドに配された木製扉はどれも、病院らしいスライド式とは無縁を装っていた。そこに納められている空間が病室なのか絨毯の敷かれたごく一般的な部屋なのか気になったけれど、行儀のよいボクは勝手にドアノブを握ったりはしない。マナナに導かれて敷居を踏み越えるときに、思わず「お邪魔しますThanks for having.」と呟いてしまったくらいだ。

 でもシシリは違う。素早くAK-47の肩ベルトを調節して腹側に固定すると、腰から拳銃を引き抜いた。狭い室内ではアサルトライフルの長い銃身が反応の遅れにつながるからだ。彼女は扉の一枚ずつを効率的に開け放しては隅々まで照準していく。

 好奇心に負けてちらりと覗いた室内は、当たり前みたいに医療機器を配した病室だった。

 この偽装はいったいなにを想定しているんだろう? とザラリとした壁紙に触れてみたところで、「ただいま」と誰かに挨拶するジギィの声がした。どん突きの部屋だ。

 弾かれたように、シシリがボクを押し退けて前に出た。マナナとつないでいた手を離してしまう。汗ばんでいた掌が急速に現実の冷ややかさに戻っていく。

 蝶が乱舞していた。いや、モビールだ。金属板だのプラスチックだので模られた蝶が、惑星の描かれたファンタジックな天井から無数にぶら下がっている。

 そういえば、ヘリの墜落現場に現れたオペルのボンネットにも、蝶のマークがあった。

 ちかちかと電光を反射する蝶の群から眼を背けた先、左手の壁一面では無数のモニタがあらゆる場所を監視している。

 その一つに、所在なさ気なアバランチがいた。側面後方に黒いタルトを模したステッカーが張り付けられている。この施設の地下駐車場に停めた〈タルト・タタン〉のアバランチだ。

 他にも殺風景なエントランスや白衣が忙しなく往き来する廊下の映像に紛れて、暗緑色の画面があった。高所から地表を見下ろす、暗視映像だ。まばらに散る黄緑色の閃光に、コンテナ群が不気味な影を移ろわせていた。

〈タルト・タタン〉のホームだ。ロシナンテやリューイは、まだレナードたちと交戦している。

 無表情な床には不似合いな物の数々に戸惑った。唯一病室らしいのは、右側の窓を覆うブラインドくらいだろう。スラットの隙間からは、夜を照らす街灯のオレンジ色が滲んでいる。

 正面には、薄桃色の布団を載せた大きなネコ足のベッドだ。ジギィはその縁に腰掛けて、ベッドの主の手を恭しく握っていた。

 そしてシシリが――ベッドに身を起こしている。シシリが? ボクの前で拳銃を構えているシシリと、ベッドの上でクッションに凭れたシシリとが、向き合っていた。

「戻りました」と背から下ろしたカラシニコバを握って、マナナがシシリに――薄桃色のベッドの少女に、微笑む。

 シシリじゃない。そんな当たり前のことに気付くのに二秒もかかる。ベッドの彼女のほうが本物のシシリよりも髪が長くて肩に届いているし、瞳の色だって左だけが黄金色にきらめいている。

 でも顔が、鏡写しみたいに同じだ。首には淡いオレンジ色のスカーフが巻かれている。その下に、シシリとお揃いの傷痕があるのかもしれない。

 さっき廊下ですれ違った男は、シシリの武装に、ではなく、シシリの顔に驚いていたのだ。

 シシリの顔をした少女が、にっこりと相好を崩した。白い肌も黒い髪もきつい印象を与えるけれど整った顔立ちすら同じなのに、瞳の色だけがちぐはぐだ。右眼はシシリと同じ夜色が、左は黒猫を彷彿とする金が嵌っている。瞬きに合わせて艶やかに照る本物の、そのくせ左右で白目の曇り方が微妙に異なる、不思議な容貌だった。

 排莢が入らないように襟刳りの詰まったシャツを着ているシシリとは対照的にゆったりと胸元を晒した少女が、優雅な所作で喉のスカーフを撫でた。その指先が、いや、ずり下がった袖から覗く腕のほとんどが、どす黒く変色していた。

 ――真っ黒黒のタルト・タタン。

 ――わたしは魔女に食べられるタルトのほうなの。

 十三歳の夏、両親が撃たれたあの施設で聞いた、幼い幻聴がした。

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