ちょっと変わった容疑者たちの中から犯人を当てるミステリー。魅力的な登場人物たちとの会話とフェアな設定、どちらも面白かったです。
容疑者は一人であり、六人でもある。そんな特殊なパターンにもかかわらず、ミステリーとして成立しています。私は犯人が気になって、一気読みしてしまいました。全く予想もつかないままたどり着いたラストですが、納得です。フーダニットの魅力は、探偵が推理を披露し、犯人を論理的に消去法で絞り込んでいくその過程にあると思います。このシーン、たいていカッコいいんですよ。本作も、探偵の池田さんがズバッとカッコよく犯人を当ててくれます。快感でした。
主人公のハードボイルドさも、登場人物の描きわけも、長文にもかかわらず引き込み読ます技術も素晴らしい!時間を忘れて読んでしまった!ただ、犯人はすぐに検討がつく。でも、そんなの関係ない。犯人の検討がつくってこと自体が、読者を集中させることに成功しているという証明だからだ。だから現時点で★が伸びないのは、単純に分割してないからだと思う。これだけの量を一気読みするのは大変だ。でも、しちゃった。それだけ面白かった!ドラマ化とかしても良いくらい最高だ。
多重人格がテーマのミステリは多々ありますが、今までに読んだ作品の中でもかなりの傑作でした。
読み応えのあるいい話でした。あの人が犯人だったのか…切ない