異世界モノで哲学を語るには

 異世界ファンタジーが流行る前、創作のブームはSFでした。そして、SFには異世界ファンタジーにない要素があります。それが哲学。SFの名作には哲学的なテーマの作品が少なくありません。

 同じ物語なのに、異世界ファンタジーで深いテーマ性のある話って思いつきません。古典異世界ファンタジーの『指輪物語』にはあるのかしら? 私、原作は未読なので分からないんですよね。すごく設定にこだわった作品だと言う話ですし、テーマも深そうな気はします。予想ですけど。


 で、ラノベの異世界ファンタジーの場合、深いテーマを感じた作品って私は知りません。感動作って触れ込みの作品はあるみたいですけど、テーマで感動するのとはまた別のベクトルのものですよね?

 何故SFでは描けて、異世界ファンタジーではそれを描けないのだろう。そんな事をふと考えてしまったんです。


 ひとつ考えられるのは、SFの方がスケールの大きな話を展開出来るからって言うのがある気がします。SFって異世界ファンタジーよりも何でもアリなんですよね。だからこそ、様々なパターンの話を書く事が出来る。

 異世界ファンタジーなんて、SFに比べたらワンパターンなものでしかありません。大抵は魔王を倒す話です。なのによくあんなに多くの物語が生み出されるなと感心します。


 では、異世界ファンタジーで深いテーマの話を書く事は出来ないのか。個人的には、書けない事はないのではないかと考えています。ただし、ラノベの定番パターンのチーレムで哲学を描くのは難しいと思うのですよね。

 だってチーレムだと何でもありでしょう。主人公は全く苦労しません。努力もしません。悲劇も起こりません。全て何とかなります。それじゃあ哲学も深いテーマもあったものじゃないですよね。


 哲学を描けるとしたら、壁にぶつかって、不幸な出来事を止められなくて、どうしようもない悲劇が襲うような展開にならなければならないと思うのですよね。何かを得て、何かを失って、それは永遠に戻ってこなくて――。

 人生に深い反省が必要になるんです。苦しみのトンネルから抜け出して、いや、抜け出せなくてもい。悲劇を通じて人生とは何かを悟る。


 まぁ、今のラノベ読者にそれが求められていないのは分かります。そう言うのが嫌だからラノベを読むのですしね。ただ、中には一冊だけでも深いテーマのある話もあっていいんじゃないかなと。

 私が知らないだけで、そう言う異世界ファンタジーは既にあるのかもですけどね。

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