第2.5話


 入学式の朝、緊張して早めに登校した私は目の前に信田高校の制服をきた男の子を見つけた。

 まだ成長途中といった体つきに真新しそうな制服、そして学校指定のローファーを見て「あ、同じ学年だ」と直感で思った。


 男の子は学校横の古い空家に咲く桜を、一人でぼんやり見上げていた。

 春休み中に突然咲いたこの桜は、メディアや学会でかなり話題になっているらしく、日中は人でごった返しているがさすがにこんな朝早くは誰も来ていないようだ。


 人通りの少ない住宅街で私と男の子二人っきりか…と思うと、なぜだか照れ臭くなって思わず電柱の陰に隠れてしまった。



 話しかけるべきか迷って電柱の陰で悶々としているうちに男の子はどこかへ行ってしまったらしく、ちょっと残念な気持ちで自分も学校へ行くことにした。



 それから学校や通学路でたまにその男の子を見かけたけど、入学式の日とはうって変わってだらしなく制服を着て歩く姿に少しがっかりして結局声をかけていない。



 直感で「私、この人のこと好きになるんだろうな」とちらっと思ってしまった自分を恥ずかしく思った。

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彼女は幽霊かもしれない。 武田ジョー @joetakeda

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