第一章
気合いを入れて
「いや~さっぱりした」
風呂上がりで頭をバスタオルで拭きながら一人呟く。仕事を終え、自宅に着いた俺は疲れを取るため帰宅後直ぐに風呂に入った。
「この日の風呂が一番気持ちいいよな~」
今日は金曜日。明日から二日間の休みだ。風呂で疲れを洗い流したおかげで、昨日までの疲労や陰湿な気配は嘘のように一切感じられない。休みの前日というのはなぜこうも気持ちが高ぶるのだろうか。
「うん、今日はすこぶる気分がいいな。執筆が
そう言いながら俺は缶ビールを片手に、テーブルの上にノートパソコンを運び、その前に腰かける。
俺は趣味で小説を書いている。もうかれこれ五年になるだろうか。何作か公募に出したり、webサイトに投稿したりと時間を見つけては自由気ままに執筆している。今日も新しく考案した小説を書き始める次第だ。内容は一応現代アクションのつもりだ。
「おっと、あれを忘れてた」
パソコンの電源を入れようと電源ボタンを押す前に、大事な物を用意していないことに気付いた。俺は立ち上がり取りに行く。
「よし、準備万端! いつでも行けるぜ!」
小説を書く上で重要な物が二つある。一つはネタ帳だ。これがなければまず物語は書けない。人によっては頭の中で構成し執筆するが、俺の場合はノートに登場人物やどんな物語にするかを書き留めている。まあ、忘れっぽいからそうしているだけだが……。
そして、もう一つは抱き枕だ。これはネタ帳よりも最重要物だ。
えっ? 何で抱き枕が、だって? それはね……。
「今日こそ、今日こそは――」
ズバン! と、俺は傍らにある抱き枕に拳を打ち付けた。
「あいつに好き勝手させない!」
こう使うためだよ。
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