まずは「ひとり1つの最高傑作」企画への参加、ありがとうございます。
「ステージ」、読ませていただきました。それから「ハイボール」も。きっと多くの人が似たような経験や思いをしたことがあるのだろうと思います。ではそれを文章化する価値とはどれほどの物か。私は、それこそが小説の役目だと思います。誰にでも当てはまるような、でも忘れかけているような、そんなものを「あのとき貴方はこう思っていた」「こう思う時が来るだろう」と再確認させ、共感を抱かせるのが小説だと思っています。
すなわち、この短編たちはまさしく小説だと思いました。平易な文章でありながら、その場面を想起せざるを得ないような情感に溢れた雰囲気がありました。
細かいところを言えば、「ステージ」では体言止めや連体止めが多用されています。思い出を語るようなときには、次々と場面は展開するものの、きちんと余韻はもたせなければなりません。テクニックとしても良かったと思いました。
ひとりひとりに色んな思いがあり、現実はそう起承転結も序破急もない。けれど時間だけはゆっくり進んでいく。そんな普遍的な特別性を感じました。ありがとうございました。