第5話 タンデムデート

時計は23時近くを回っていたのでマキさんを家まで送ることにした。


「♪~」


マキさんは、嬉しそうだ。

マキさんが嬉しいとこっちまで嬉しくなる。


マキさんが話しかけてくる。


「それにしても、カブっていいよな~」


「だから、カブじゃないって~、スズキのバーディーだってば」」


「荷物のるからな~」


俺の突っ込み完全に無視された。


「あれ?」


マキさんが顔をしかめる


「どうしたの?」


「友紀のカブなくね?」


「ん?ああ、今日はバーディーじゃないからな」


「じゃあ、なにできたの?」


「それ」


俺は、カタナを指で指す、するとマキさんが・・・


「すげー・・・」


「へ?」


「すげー!!こんなにかっこいいバイク初めてみた!!」


「そ、そう・・・」


「乗せてくれ!」


「明日ね」


「やったー!!」


その後、俺はマキさんを家まで送り届けて帰宅した。


帰宅すると、ラインに着信が・・・マキさんからだ。


「明日六時!!」


それだけだった。


俺は、OKとだけ打ち返し、やれやれ明日は5時起きかと思いながら眠りについた。


翌朝5時起床し、顔を洗い、歯を磨き、朝御飯を食べ、カタナを点検し、出発準備を始める。


5時35分 出発前の最終確認、今日は人を乗せるので念入りに点検しておく


点検終わり、暖気運転を始める。


5時40分家を出発する。


カタナは今日もご機嫌だ。


俺は、板知屋に向けてカタナを走らせる。


5時50分 波越家に到着する、マキサさんは、家の前にいた。


「おはよう、マキさん」


「おはよう、友紀」


ドタドタドターっと家の置くから足音がしてくる。出てきたのはマキさんのお父さんとお母さんだった。


「いいから、二人とも寝てなって!!」


「連れていってもらうのに、挨拶しなきゃだめでしょ!!」

「そうだぞ、マキ、挨拶は大切だ。」


両親に怒られてへこむマキさん・・・やばい可愛い。


「・・・って、あれ?お前としあんとこの?」

「やだ、友紀君じゃない!今日はマキを頼むわね!!」


「責任をもって、お預かりいたします!!」


こうして、挨拶はすんなり終わり俺達は出発した。


今日は、朝早くから日帰りツーリング。


走り出して直ぐに、マキさんがインカムで話しかけてくる。


「友紀ってさ・・・なんなの?」

「俺?」

「うん、私のこと知ってるし・・・、私の両親とも仲がいいし・・・もしかし てストーカー?」

「違う!」

「じゃあ何?」


俺には、ストーカー以外の選択肢はないのか・・・


「としあんって知ってるか?」

「80歳位の元気のいい、背の高い爺さんだろ?」

「その、としあんの孫が俺だ」

「へー・・・えええ!?」

「どうしたの?」

「何か意外だなって思って・・・」

「そう?」


俺はカタナを走らせ、臼杵市内を抜けて、10号線に入る目的地は大観峰だ。


「マキさん朝御飯食べた?」

「まだだけど・・・」

「途中にローソンあるから、そこで休憩も兼ねて朝食にしようか。」

「さんせーい♪」


行く途中には道の駅があるが、今日は時間が早いのでやめにした。

俺はいつもと同じペースでのんびり走っていく。


ローソンに到着。

朝御飯を食べながら、会話をする。


「なあ、友紀・・・」

「何?」

「バイクってさ・・・こんなに気持ちいいんだな」

「そう?前、見えなくて暇とか寒いとかなかった?」

「全然!!」


マキさんは、目を細めてカタナのタンクを撫でている。


「そう言えば、このバイク何て言うの?」

「カタナって言うんだ」

「カタナか・・・気に入った私のものだな」

「え!?」

「冗談♪」

「なんだ・・・びっくりした・・・」

「今、やきもち妬いたでしょー?」

「や、やいてねーよ!!」


怒る振りをしながら、俺はコンビニのゴミ箱にゴミを捨てに行く。

マキさんが、食べ終わったのを見計らって声を掛ける。


「まきさん、そろそろ出発するよー」

「はーい♪」


俺は再びカタナを走らせる。

カタナの調子が凄く良い・・・普段から整備はきちんとやっているがなんと言うか・・・

ここまで、調子がいいのは初めてだ。けど、回したくなる感じじゃない、不思議だ。

多分・・・カタナも嬉しいのだろう。


「友紀、あとどのくらい?」

「一時間くらいかな?」


わざと少しだけ時間を長めに伝えておく。


「一時間はなーがーいー」

「それでも、もう一時ちょっと走ってるよ」

「へ!?そうなの!?」

「うん、ローソンで大体一時間だから」

「楽しみだなー」


本当はあと、45分と言ったところだろう。

飛ばしてはいないが、時間がやけに早く感じる。

けど、不思議と心は落ち着いている、こんなことは初めてだ。

熊本県に入り景色が変わる。


「すげー!!ここ日本なのか!?」

「日本だよ」


俺は、マキさんに笑いながら答える。

マキさんは、後ろでスゲー!スゲー!!とはしゃいでいる。

この調子なら、大観峰に着いたときは、どうなることやら・・・


「マキさん聞こえてるー?」

「聞こえてるよー」

「もうすぐ、つくからねー」

「本当!?」

「ああ」

「楽しみだなー」


大観峰に着き、カタナを止める、石碑に向かって歩いていく。

朝が早いので、まだ、人も少ない。

テンションマックス状態で石碑に着く。

さて、マキさんの反応は・・・


「・・・・・・」

「マキさん?」

「はっ!」


放心状態から我に返るマキさん。

今日は、雲ひとつ無い晴天、見とれてしまうのもわかる。


「まきさん写真とろうか?」

「写真?」

「その、石碑の前で」


俺は、石碑を指差す。


「うん!」

「はい、ポーズ・・・うん、おっけい!!」

「じゃあ、次、友紀の番な!」

「俺は、いいよすでに取ってるし」

「え?」


「前きた時に既に撮ってるんだよ」

「じゃあ、それちょーだい」

まきさんに、ラインで写真を送る。


「あれ?石碑しか移ってないじゃん、なんで?」

「一人だったから」

「じゃあ、私が取ってやるよ!!

「別にいいって」

「遠慮すんなよー」

「いいって」

「いいから、いいから」

「いいって!!」

俺は、少し強く言ってしまった・・・

マキさんが泣きそうになりながら・・・

「ご、ごめん・・・私、悪いこと言ったかな?」

「い、いや、悪いのは俺だ、どなってごめん」

「何か、いやな理由でもあるの?」

「もうすぐ、遠い所にいくんだ」

「え?」

「就職の関係でこっちには、あまり戻ってこられないかもしれない」

「う、嘘だろ・・・?」

「本当なんだ」

「じゃ、じゃあ二人で撮ろうよ!!」

「え?」

「え、いや、それは・・・」

「ダメ?」

泣きながらの上目使い・・・女の涙とはなんて卑怯なんだろうか。

「ごめん」

「何で・・・何でだよ!!」

マキさんは、どんどんと泣きながら俺の胸を叩いてくる。

「なるべく、思い出を残したくないんだ」

「嫌だ」

「私に釣りを教えてくれて、大観峰まで連れてきてくれて・・・私はたくさんの思い出をもらっているんだ!! それなのに・・・いなくなるとか、思い出を残したくないとか言うなよ・・・」

「マキさん・・・」

「せめて、私の中にだけでも思い出を残してくれよ!!」

そう言って、マキさんは涙をこらえ歩いていく。

「すみませーん!!」

マキさんは、近くを通る人に何かを頼みこんでいる。

「はい、、それじゃとりますよ~、ならんでくださ~い」

写真を頼んでいたのか・・・

「は~い」

マキさんがこちらに駆け寄ってくる、隣にならぶと俺の腕をとって・・・むぎゅっ、自分の胸におしつけた。

「ちょ!?マキさん!?」

まきさんは赤面で固まっている。

「はい、とりますよ~321・・・はい!OKでーす!」

その写真は・・・俺の始めての女性との2ショットとなった。


マキさんは、写真が撮れたのが嬉しそうだ。

「あ、あのマキさん・・・?」

「何?」

「そろそろ話してくれませんかね?」

「嫌だ」

「はあ・・・それだと牛串食べにいけませんよ?」

「べつにいい」

「魚じゃないから?」

「違う!!友紀は私が魚じゃないと食べないとおもっているなか?」

「そういうわけじゃないけど・・・」

「さっき言ったこと考え直してくれた話しあげる」

俺としては話してくれなくてもいいんだが・・・胸があたっているのが気まずい・・・

「就職のこと?それはむりかな・・・」

「そっちじゃなくて、思い出の話」

「わかった」

「本当に?」

「ああ」

「ならよし!」

やっと、離してくれた。

離してくれたのはうれしかった、けど、ちょっと心残りが・・・

とりあえず、牛串でも食べて落ち着こう・・・

三愛レストハウスに移動する。

そこで、屋台をだしている、おばちゃんに注文する。

「すみません牛串二つお願いします」

「5分ほどお時間いただきますが・・・だいじょうぶですか?」

「わかりました、代金は二本なので1000円になります」

俺は、注文を終え、マキさんのところにもどる。

自販機の前に腰掛ける。

「注文してきたよ」

「ありがとう!」

「ジュースはなにがいい?」

「ウーロン!」

「了解」

ウーロン茶を自分の分と、あわせて二本買い、一本を渡すと「お客さーんできましたよー!」とよばれたので取りにいく。

「はい、おまたせ」

「いただきます!!」

いきなり、マキさんは牛串に食らいついた。

そして、一本目を食べ終えたところで・・・

「上手い!」

「良かった口にあって」

まきさんは、食べ終え、こっちをジーっと見ている・・・

「どうぞ?」

「いいのか?」

「俺は何回も食べてるから」

「ありがとう!」

食べ終えてバイクに向かう。

「さて、帰ろうか」

今、9時30分位だから、今からでれば昼ごはんにちょうどいいくらいだろう

「もうちょっと・・・だめ?」

「いいけど、なにするの?」

「じゃあ・・・釣具屋に行きたい!!」

「なんで釣具屋?」

「行った事ないから」

「じゃあ、別府にある、まつき釣具にいこうか」

三愛から出発し、別府のまつきに寄る。

すると、まきさんは・・・

「スゲー!!」

またしても、興奮状態だった。

「♪」

マキさんは、ご機嫌だ。

「友紀、帰りどうするの?」

「特に決めてないな・・・」

「じゃあ、もう少し走ってよ!!」

「まきさんは大丈夫なの?」

「疲れとか、時間とか」

「全然大丈夫!!」

「そう、じゃあ佐賀関通ろうか」

「佐賀関?」

まきさんは、場所がわかってないようだった。


佐賀関に向けてカタナを走らせる。

別府~大分~坂ノ市のルートで走ってきて、佐賀関までの最後のコンビニである、ファミリーマートで休憩を取ることにした。

「大丈夫?つかれてない?」

「全然平気!!」

「ならよかった」

10分ほど休んだところでファミリーマートを出発した。

しばらく走らせ、海が見え始めると・・・

「うおおおおおおおおお!?」

雄たけびのようなものがヘルメット内に響いた。

しばらくすると・・・

「こんな綺麗な海初めてみた・・・」

「そう?」

「途中の道の駅によるから」

佐賀関の道の駅に着き刀を止める。

「まきさんクロメてしってる??」

「あの、ネバーってしたやつだろ?」

「そのクロメを使った、たこ焼きがあるんだけどたべる?」

「食べる!」

クロメたこ焼きを注文し、受け取ると展望台へ向かった。

たこ焼きを食べ終わり、僕たちは帰路に着いた。

僕たちは帰宅した。

「ん~」

マキさんがぐ~っと伸びをする。

自分もぐ~と伸びをする、体が固まっていたのかとっても気持ちがいい。

「じゃあ、僕は帰るから・・・」

「うん、気をつけてね・・・」

僕はカタナのスロットルをいつもより少し大きめに開ける。

「待って!!今後はいつあえるの?」

「さあ、いつだろうね?」

「そんな・・・」

僕は曖昧な返事で返してしまった。

「マキさん、そんな顔をしないで釣りを続けていたら、どこかでまた、あえるから」

僕は後ろを振り向かず走り出した。

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