第3話 デート
「デート」という定義がおっさんの自分には解せぬところがある。
「女の子同士がデートする」というのはデートなのか?理解不能だ。
閑話休題
バスで先輩と連絡先を交換した後、数日後に先輩に電話した。
「昔話に花が咲く」というが高校時代の思い出話ばかり話した。
それから本の話題、昔となんにも変わらなかった。
しかし「あの時の理由」は禁忌(タブー)だった。
先輩は忘れたのかもしれない。しかし寛治は忘れることが出来ない。
脳に「刻まれた」記憶なのだ。
「ねぇ、かんちくん。デートしない?」
「え」
「だからデートしようよ。お互いフリーなんだから。」
「ね」
「あ、はい。どこに行きましょうか?」
「私、海が見たいな。鎌倉なんてどう?」
「いいですね。鎌倉久しぶりです。」
「前の彼女とのデート以来?」
「え」
先輩はいわゆる「魔性」の女みたいなところがある。
「前の前の彼女ですよ。」
営業の仕事を数年続けているとこういう外交術が身に着く。高2のガキではもはやない。
「あはは、私は前の彼氏の時以来だよ」
女性は脳の発達が男性より早い。女性がませているのはこのためである。
「じゃあ、今月の20日なんてどうですか?」
「いいよ。」
そして久しぶりのデートが決まった。
20日になって二人は鎌倉で逢った。
先輩は白いワンピースを着ていた。
本人は「アラサーでワンピースなんて恥ずかしい」なんて言っていたが綺麗だった。寛治はクリーム色のジャケットに白のシャツ、パンツは茶色のを着た。
「かんちくんの制服姿しか見たことがないから、ちょっと新鮮。」
先輩はそう言った。
江の電は休日のため入場規制がかかっていた。想定外だった。
鎌倉駅の前に人力車の車夫がたむろしている。
「ちょっと車屋さん。」と人力車を頼む。正直料金は高かったがせっかくの先輩とのデートだ。
人力車に二人乗り込むと二人の体がくっつく。
「じゃあ。参りますんで」車夫が勢いよく人力車を出す。
20代前半と思われる車夫さんは話によると元自衛官らしい。
「粋な方はこのまま浅草まで行ってくれなんていいまして、浅草で一緒にご飯を食べて帰ってきます」なんて話をする。
たまに人力車が交差する。
車が通れないような路地を行ながら、観光客の入らない寺院に連れて行ってくれて、あらかたの案内をしてくれる。
二人で「へー」とかいいながら1時間ほどの人力車旅行は終わった。
最後に写真を撮ってもらう。
鎌倉駅に戻ると人混みはまだ続いている。
「ねぇ。かんちくん。時間大丈夫?」
先輩に微笑んで言われたら断ることはできない。
「これから呑まない?」
そういうと二人は鎌倉を離れ横浜方面に向かう。
横浜の野毛に昼間から飲める居酒屋がある。
今は跡形もないが昔横浜に「赤線」といういわゆる遊郭街があった。
桂歌丸はそこの店の息子である。
先輩はホッピーを呑んで寛治は焼酎をのんだ。
寛治は昔話を切り替えて先輩の個人情報収集にした。
先輩は「かんちくん、私に興味があるの?」
と照れながら話してくれた。
先輩は横浜に住んでいるらしい。
仕事は美容師をしている。等々の情報を入手した。
一通り話してまた会おうといって駅に二人して向かった。
ちょうど「セクシーゾーン」のコンサートがあったらしく若い女の子の集団が多かった。
駅について先輩は改札を通った。
「かんちくん。またね」
先輩は大きく手を振った。
手を振り返し、先輩がホームに向かおうとしたとき。
寛治は思わず
改札口をジャンプして乗り越え、
先輩の前に立つと
びっくりした先輩にキスをした。
「え??」
先輩はびっくりした顔をしたが
唇が離れた後
「これで(おあいこ)ね」
そう言って微笑んだ。
あとから駅員が飛んできてだいぶ説教を食らった。
怒られてシュンとしている寛治をみて
先輩は「微笑んでいた」
しかしまだ「謎」は解かれてはいない。
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