絶品朝食一人前Ⅲ

「取れた?」


「あー、取れたよ。なんで頬っぺたまでつくかなぁ。お前、がっつきすぎなんだよ」


 ロドルは首を傾げ「分かんない」と答えた。


「アルバも喋りながらよく食べられるよねぇ。もうお皿の中は何にもないじゃない」


 見るとお皿には何もなかった。ロドルのサラダの皿はまだあり、アルバートのそれはもう空。ロドルのスープ皿は空だが、アルバートのそれは少し残っている。


「俺、サラダもう少し食べたいな」


「え。僕はスープ、もう少し飲みたいんだけど」


 アルバートはロドルのサラダ皿を取り、ロドルはアルバートのスープ皿を取る。


「じゃ、交換でいいな?」


 二人は了承する。


 食べ終わり席を立った。お会計はロドルがする。財布を持っているのがロドルであるからで、アルバートは店の外で待っていた。


「天気良いなぁ」


 空を仰ぐと真っ白な鳩が飛んで行った。


「お待たせ」


「あぁ」


「お前さぁ、買い物中暇だからナンパごっこしねぇ?」


「なんだよ。いきなり」


「しようよ。俺が勝つ」


 ロドルは一瞬、訝しげな顔をする。


「……お前もしや、さっきのウェイトレスのお姉さんのこと、根に持ってる?」


 ロドルはアルバートの顔を見上げた。


「いや」


 アルバートは首を振る。


「ナンパごっこしよう、店主が女の人だったら声かけよう。どっちが落とせたかで勝ち負けが決まる。お前には負けねぇ」


「やっぱり根に持ってるじゃないか! 僕は嫌だよ、平和に行きたい!」


「じゃあ敵前逃亡ということで、お前の負けな」


 ロドルの表情が変わる。アルバートはロドルが人一倍負けず嫌いで、勝ち負けにこだわることをよく知っていた。


「……なんだよそれ! ……いいよ、受けて立ってやらぁ!」


 アルバートはニヤッと笑う。


「そう来なくっちゃな!」


「……?」


 ロドルは言葉巧みに引っ掛けられたことをまだ気づいてない。


「そういえばどこに行くんだ?」


「仕立屋、直しを頼んでいた二着を取りに行く。後は文具屋。万年筆のインクが切れちゃってね。紙もないんだ。雑貨屋は調度品をメーア様がそろそろ変えたいんだって。だからどんなのがあるのか見に行くだけ」


 荷物の軽い順に行くと雑貨屋、文具屋、仕立屋。その順番で行った方が良さそうだ。雑貨屋と文具屋は、五世紀ごろに学院が出来て学生が多かった七番街区。仕立て屋は服屋が多い二番街区。そう離れた場所じゃないし、ロドルが今でも借りている家は五番街だから、二箇所の中間位置にある。


「雑貨屋から行った方がいいな」


「うん、僕もそう思う」


「割と時間食ってるから早く行こうぜ」


「だいたいはお前のせいなんだけどな」


 ロドルはボソッと呟いた。

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