Ep.27 悪魔を祓う悪魔Ⅱ
「魔法陣というのは限界がある。行ったことがあるところには飛べるけれど、行ったことが無いところには行けない。だから、君はカポデリスに二日かけて馬で来た。逆に帰りは魔法陣で帰ってきた。君はカポデリスに来たことがなかっただろう。僕が教会に通っていることは知らなかったはずだ。初め、僕に会った時は僕だと思わなかったはずだ。あの場所には人が多かった。当たり前だ、繁華街なのだから。君が転んだのは、あんな人込みをあまり歩いたことがないから。僕の気配は人込みで紛れ、君はすぐには気づかなかった。僕だってそうなのだから。君は僕の魔力に気付かなかったはずだ。魔力とは人が潜在的に持つエネルギーのことだ。人が周りにいればその人の魔力は紛れ、感知しにくくなる。次に教会で会った時、君は僕が何か違和感があることに気付いていたね? 教会、エクソシストが溜まるあの中で、僕の気配は異常だろう。僕が悪魔だと誰が思う? 僕は思わないね。敵城の中に紛れる悪魔がどこにいる。僕と君が合ったのはただの偶然だった。あの木箱と鍵は君が僕をおびき寄せる餌だったんだろう。クローチェが手にしてあの木箱を調べていれば僕の耳に入るかもしれないと思ったのか定かではないけど。あの教会総統と僕が関わりあることをどこで知ったのかは知らないが、おおかたクローチェが僕の報告書を本部に出していたか報告をしたんじゃないのか。あの男は僕に対してはっきり敵と言えない節がある。そこが彼の甘いところでもあり成長してないところだな。それがからかいどころある所でもあるけれど」
流暢に舌が回る。頭の回転は速い方だが、ここまでくると忌々しい。口数は多ければ多いほど言葉は嘘っぽく見える。
僕は嘘つきさ。自らも騙し通せるほどの――。
魔法陣を悪魔が使えば自分の身すらも燃やし尽くす。五百年前、カポデリス聖戦において魔族殲滅を目的に使われ禁止された。人間が使える魔族を倒すだけの魔法。もし、魔族がこれを使えたなら、あの聖戦は更に長引いたはずだ。そうならなかったのは魔法陣が本来魔族ではなく、人間が使うために進化し、使えるものを選別し、専門化した――まさに選ばれた者の魔法だからだ。使えない者にとってはかなり技量がいるが、使えるものにとってはなににでも応用でき、相手を殺す、最終兵器となる魔法。
千年前。僕が生家にいた時は普通に使われていた。
もちろんそんな殲滅のためではなく、人間が自分を守るために使った。魔法陣を使って封印を解く、読めなかった文字を蘇らせると言うのは後からついて出来たもの。一般的には後者が広く広まり、今では前者を使うエクソシストはいない。
僕は前者。祓魔魔術専門の堕天使。
矛盾だらけのこの身が僕だ。
「さて、なにか間違ったところはあるかな」
目の前の少女の口元は震えていた。
僕はそれを見てせせら笑う。今の勝負――僕の勝ち。
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