スサ大王ト九八七のコ(四三二一〇十九八七六五)
叢雲
序文
東北の大震災、より以前の出来事だったと記憶している。
その頃、僕の家の近くに、立派な一本の桜の木が生えていた。
周囲に競うような樹木が無いため、陽の光を存分に浴びて育つ事の出来たその樹は、それはそれは見事な桜の樹だった。
その桜の木が、強風で倒れてしまった。
翌年、かろうじて生き続けた桜は、木の半分側だけだったが、それでも何とか花を咲かせた。
けれど、その次だか、その次の次の年だかには、もう花を咲かせることは無くなった。それどころか、葉を茂らせることも出来なくなり、ひっそりと、命のないモノに変わって行った。
だからなんということはない。
木が倒れるなんて、全く珍しくもない事件で、そこに意味を見出そうとする僕の方が、おかしいのかもしれない。
それでも。
あの桜が、あの時倒れて枯れた事が、僕には。
後に起こる様々な事件を暗示させるための儀式かなにかのようなものであった。
そんな風に思えてならないのだ。
スサ大王ト九八七のコ(四三二一〇十九八七六五) 叢雲 @uzunomiko
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