第17話

2人目は現在も続いている今彼だ。

彼との出会いは美容室。大学を辞め1年間地元でお金を貯め翌年に都内の養成所に通い始めた私は舞台のオーディションを受け運良く合格した。稽古と本番を合わせると3ヶ月は舞台に携わることになる。実家暮らしの私には3ヶ月ほぼ毎日都内に通うのは体力的に金銭的にもきつい話だ。その為、私は都内に住む友達の家に居候する事になった。その頃に訪れた美容室で担当してくれたのが彼だった。地元にいる時から女性の美容師さんにお願いしていたのだが、女性のスタッフがおらず正直嫌だったのだが1回限りかもしれないしまぁいいやと思い順番を待っていた。正直私のタイプではなく、ぱっとしない脱力系男子。服装もほかのスタッフとは違いイケイケ系ではない。こんなダサい美容師は初めて見たと思うくらい服装にこだわりがないようだった。そんな感じでマイナスイメージから始まったため最初はドキドキなんてしなかった。しかし、返ってその方が変に意識せずに良かったのかもしれない。最初は無口だったのが、どんなスタイルにするかを聴かれ舞台の本番が迫っている事を伝えると役に合った髪型にしてあげると言われ、興味津々で舞台の話を聞いてくれた。気づけば舞台の話は私の身の上話になっており彼の中では私は苦労人になっていたらしい。そのせいか、お会計も通常より安くしてくれた。最初は早く終われと思っていたのにいつの間にか、次もこの人にやってもらおうと、思うようになっていた。


舞台が終わり実家に帰るつもりでいたのだが、嬉しいことに次の舞台のオファーがあった。友達もいてくれた方が逆に助かると言ってくれたのでさらに居候生活は続く。月日が経てば勿論、髪の毛は伸びてくる。私は、また彼のお店に行くことにして、ネットで予約をした。しかし、予約当日にお店に行ってみると予約が入っていないと言われ、髪を切ってもらうのに予定以上に時間がかかってしまった。髪を切っている間も彼はずっと謝っていてくれたのだが、そんなことよりも無事に彼に髪を切ってもらえることが出来て一安心。トラブルのことなんてどうでもよかった。その日も次の舞台のことを話し役に合わせて髪の毛を髪を切ってくれた。そして、迷惑をかけてしまっまたとまたお会計を安くしくれて、エレベーターまで見送ってもらった。


最初はハズレくじを引いた気分だったのにいつの間にかドキドキしている。恋なのか久しぶりの異性との接触に麻痺してるだけなのか分からなかったが、どちらにしろ本気にならないようにと自分に言い聞かせていた。


それなのに、帰り際に彼は電話番号とメールアドレスが書かれた名刺を渡してきた。


「次予約する時はWebからじゃなくて、個人的に連絡して。俺、担当多いからWeb予約やってないんだよ。」


脈ありか!と思ったが、Web予約をやっていないという言葉を聞いて舞い上がった感情は一瞬にして地面に叩きつけられた。


それでも、私は嬉しかった。彼の連絡先をゲット出来たことは思っても見ない出来事でメールを送るか、送らないか自問自答を繰り返しながら家に帰った。

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たけど、私は君を選ばない。 @ai-o

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