第2話 招集Ⅰ

 魔式特別作戦群の指揮をとるはめになったバーンシュタインは、ぶつぶつと文句を言いながら作戦会議室へと向かっていた。 彼女の苛立った歩調に合わせ、長い廊下にヒールの乾いた音が響く。 しかし、その苛立ちも長くは保たなかった。

会議室付近。 現在招集可能なほとんどの部隊が参加する会議のため通路には人が入り乱れており、思うように進めない。

 立往生していると、

「一佐―!」

 は後ろから声を掛けられる。

「う? おー、アルか! 久しいなー」

 声の主は二十代くらいの男性だった。

「僕がまだ訓練生だった時ぶりですね! 一佐もクシィー要塞防衛戦の会議に参加するんです?」

 彼は人混みを掻き分けて大佐の傍に寄る。

「そうそう。しかも、あのショタジジィに魔式特別作戦群の指揮官やるように言われてさ……もう、散々。そういえばどこに所属してんの?」

「魔式特別作戦群ですよ~」

「えっ」

「えっ」

「ま、まぁ成績も良かったし、おかしくはないか」

「いやぁ、運が良かっただけですよ。身体能力はどっちかというと低い方ですから……。それにしても、まさか一佐が指揮を執るとは驚きですよ」

「私もアルが超スピード出世してることに驚きよ」

「いやぁ~大佐の指導が良かったからですよ~」

「ったく、褒めてもカレーパンしかでないからな!」

 バーンシュタインは少し照れながら懐かしいセリフを言った。

「本当に一佐は変わりませんね」

 そんなとりとめの無い話をしている内に一行は会議室に到着する。

 会議室はかなり大きく作られており、扇型に配置された机は雛壇のように高低差をつけて配置されている。 入り口から一番遠い席はかなり高い。

「えーっと……」

 バーンシュタインは会議室前方にある巨大なブラックボードを見上げて自分達の席を探す

 ……しかし何分参加する部隊が多すぎて中々見つからない。

 彼女が手こずっているのにアルが気付く。

「あ、あそこですね。自分達はいつもあそこの席に座ってるんですよ」

 どうやら魔式特別作戦群はいつも定位置らしく、彼はその旨を伝えた。

「て、定位置なのか……」

 バーンシュタインの眼鏡が驚きでずれた。

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