気づかぬうちに
「…ぇ……ねぇ…ねぇ、聞いてる?」
「え?」
回想に浸っていた時に声がするのでびっくりした。って周り見たら雪が…っていうか、なんで外?部屋にいたよね?しかもここ私の実家の前の住宅街じゃん…なんで、ここにいるんだろう、寝ぼけてんのかな。
「なにぼーっとしてるの、早くいかないと遅刻だよ?」
周りを見てて、あたふたしてたら目の前の声をかける人物に気が付かなかった。何やら背の低い…おそらく待ち続けていた声。
「ねぼけるのはいいけど、授業で寝ないようにね、シュンくん」
ふふふ、と笑いながら、くるっとまわって背中を向け”彼女”はそう言う。
夢なのかと思い、頬をつねる。痛い。夢じゃないのか。夢であったとしてもさめないでくれ。
なぜ、いるのか。事故で死んだのに。
でも、生きててよかった。
私は、状況に困惑しながらもうれしさのあまりにその場でひざを折って、全力でなく。年甲斐もなく、幼児のように嗚咽も隠さずに。
「え、ちょっと、なにないてるの!?大丈夫!?ちょっと、おばさーん!シュン君が大泣きしてるんだけど!」
大泣きしてる間にも、突然のお別れをしてしまった幼馴染、
どういう状況かはわからないが、この日が何かは覚えていたので、私は大泣きをしてしまった直後だったが、心配する母と薫に大丈夫と言いながら薫とともに学校へ向かった。
確かこの日は、学校に有名な音楽団体が来て体育館で音楽鑑賞を行うのだ。雪の降らないこの地域では珍しい雪が降っていたのでよく覚えている。薫や私が学生服を着ていたことからその場で信じられないがタイムスリップをしたのだと察した。
もちろん、原理はよくわからないし、こんなファンタジーのようなことが起こるなんて馬鹿げてると思う。でも、現実主義者っていうのは現実に起こったことをありのままに見つめることが必要だと思うし、今現実にこうして昔に戻っている。
これがドッキリだとしたら手が込みすぎだった。
学校に着いて、友達だったやつとしゃべりながら、
「そういやさ、今年、何年だっけ?」
っていう風に聞いたら、全員が全員、私が高3の年をみんなが口をそろえて言っていたし、顔ぶれもアルバムで見たやつばかりだった。日付も12月某日だったし、間違いなしに、時間が戻っていた。
なぜかはわからない、けど、これはチャンスだ。
卒業式の日、1月の初めだ。その日に彼女は交通事故で死んでしまった。結果として私は悔いても悔やみきれない思いをしたし、なぜ、その前に告白しなかったのかと自分を責めた。その自分を今ここでやり直すことができるのだ。
気恥ずかしい思いもするだろうが、彼女を失う前に告白できればそれに越したことはない。無論、失わないように何かしらやってみようとは思うのだが、どこまでそれが通じるのかはわからない。
どういう風に告白しようかと考えたが、オーソドックスな方法しか思いつかない。なので、暇そうに小説家何かを読んでいる薫を自然な風を装って
「先に学校の体育館に一緒に行こうぜ」
と誘う。朝、時間になったら全員が体育館へ向かうのだが、点呼はあちらでとるので先に行って待とうぜ、という話だ。薫も案の定暇していたようで、
「うん、わかった。先に行こっか」
ということとなり、体育館へ向かった。
ほかのクラスのみんなは時間になってから行くようで体育館についたとき、中には全然人がいなかった。音楽の団体さんは前で演奏するので前の方にパイプいすと楽譜たてがずらーっと並び、そこだけにスポットライトが当たってほかは真っ暗だった。ほかのところは生徒が座るようにパイプいすが整列し、クラスごとに座るようだった。
と、そこで前でセッティングの話をしていた高齢の自分たちのクラスの先生がこちらに来て、
「お前ら早いな、暇なのか?」
と言われたので、ほぼ同時に
「「暇です(ね)」」
と、返した。朝くる時間が8時半でここに来始めるのは9時だ。30分の間しゃべてるのにも限界があるしな、うんうん。
「そうかそうか、まぁ、待ってなさい」
といって、再び前に戻っていった。どうやら音響の人と話をしているらしい、熱心なことだ。
さて…時間も限られてるし、早めに済まそう。
「薫、ちょっといいか?」
「ん?なに?」
暗闇の中でもライトをうまく使いながら、本を読んでいた薫に話しかける。
「実はさ、前から言いたいことがあったんだけどさ?」
「うん?」
薫がかわいく首をかしげる。
「実はさ、俺、お前のことが ————————。」
そこで私の意識は消えた。
時が戻ったならどうしたい? 杉崎 三泥 @Sunday1
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