第3話 魔法化(コンパイル)をしろ
「先輩、
「それはな、お前の
「間違えているのは分かってるんですけど! もう、どこが悪いのか、何度見ても分からないんです!」
なぜに俺が怒られているのだろうか。「ならば最初から作り直せ!」と反論しそうになるも、美人な後輩ちゃんの荒れた肌と目の下のクマを見て、口を閉じた。全く、こんな職場においても美人は得だ。セクハラになるから口には出さないが。
基本的には
動きがおかしいものを直すデバッグもそうだが、魔法化するためのデバッグも、
「エラーメッセージにはなんて出ている?」
「よく分からない文字がだーっと……」
「お前、今まで
「今までは、なんとなくダメな箇所が分かったので……」
「……エラーメッセージを十分間睨んでこい。それでも分からなかったら罵られる覚悟を持って、聞きにこい」
ここで俺がそのエラー内容と
十五分後、申し訳なさそうな顔で後輩ちゃんが現れた。ダメだったか。
「それで、少しは進展があったのか?」
「はい。あー、いえ」
「どっちなんだ」
「文章記述部分の『堕ちた天使が踊り歌う』のたありがダメっぽいんですけど、それでもよく分からず……」
「前後も含めてその記述を読んでみろ」
「『神の祝福、この地に舞い堕ちた天使が踊り歌う、その踊りを、その歌を、喜びを持って受け入れろ』です」
「……『舞い堕ちた』じゃなくて、『舞い降りた』じゃないか?」
後輩ちゃんは、はっとした表情を浮かべて、自席に走って行った。
数分後、「やったー!」という後輩ちゃんの声が聞こえたから、成功したのだろう。
今回のように、読み流すと意味が通っているように見えたり、一文字違いなどがよくあるパターンだ。よくあるが、思い込むと抜け出せないものなのだ。
我々の格言に次のようなものがある。
『大抵の
後輩ちゃんは、図らずもこの道を辿ったことになる。結果オーライ。
何でもかんでも俺に聞くようになったら手酷く罵ってやろう。今回の罵しりタイムは短めで。
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