22.先生はどうしたのですか?夢中になれなくなってしまったのですか?

 拝啓、先生。

 最近、先生の筆が止まっている様に見受けられます。

 どうしたのですか?新作はお書きにならないのですか?


 前は書きたいものが尽きるわけないだろうって大言壮語たいげんそうごしてましたよね?「この世の全ては物語だ!音楽も人の人生も、思想も哲学も、全てが物語だ!書くものが尽きることなんて、あるわけねぇだろう!!」って。


 私は書き続けています。止まらない。

 どうにも、妄想が尽きない。書いてる先から妄想が沸き上がり、無限の泉に私の書くスピードというバケツが追いつかず、頭であふれだして漏水してヒタヒタとひたいに汗が流れます。気が狂いそうです。


 先生は、もしかして……売れるものを書こうとしてるのではないですか?

 昔の先生は書きたいものを書くだけで満足していたではないですか?子供が初めて、クレヨンを手にして時の様に、夢中で白いキャンバスにお絵かきするように、ひたすら物語を書いていたではないですか。寝食も忘れて。


 大人になって、夢中になることを忘れてしまったのですか?

 夢の中にいるような、あの時の楽しい気持ちをお忘れなのではないのですか?

 書けるだけで満足していた頃から、何か対価がなければ発起ほっきできないようになってしまったのですか?


 あの時の気持ちを思い出してください。

 先生は、自分が書いたキャラのセリフで泣いていたではないですか。これは、俺の心の声だって。自分でも気づかないことをキャラが喋りだして、それが自分の心に響いて。自分でも気付かない本心に感動していたのではないですか?自画自賛してましたよね。


 ぜひ、先生が今書きたい心の声を物語にして書いてください。

 私が楽しみにお待ちしておりますのです。


 P.S

 先生は私に、この前偉そうなことを書いてきたのに。

 まったく、先生もまだまだ子供ですね。ならば、夢中になれるはずです。


 平成28年 盛夏

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