10.先生が困った時は駆けつけます。

 拝啓、先生。

 お手紙をいつもありがとうございます。私の心に響く手紙、メッセージ、物語を頂き私の鬱憤は不発弾の弾頭で終わり、無事回収されました。民事で先生と正義の対決をしたいと思いましたが、それは後の楽しみに取っておきます。


 新しい物語は青春群像劇なのですね。

『宇宙ひも理論』をもじり、『大学サークル姫理論』という大学生ウケしそうなネタものですね。冴えない女子大学生の姫宮真ひめみやまことがサークルを練り歩き、冴えない男子たちを手ごまにしようと躍起やっきになり、次々と事件を起こしていく。最後は、同大学の冴えない幼馴染と結ばれハッピーエンド。ブリっこしてみたり、ゴスロリしてみたり、モテたい・姫になりたい。それだけの為に、鬼ともいえる所業しょぎょうと修行の数々。そこに笑いのネタを散りばめていく当たりが先生らしい作品です。

 笑いあり、涙あり、ほっこりとした先生の味が出ています。官能小説家という、嘘の肩書を人目につかない様隠れて、焼却炉にぶち込み、燃やし尽くした感があります。事実を知るのは、私と先生のみ。共犯者に仕立て上げられた、被害者の気分です。


 私の日常はさして変わりません。セミの様に外の大空を飛び回れる時を夢見て、地中深くで眠りにつきながら、成長をしています。いつか殻を破って、薄暗い穴から眩しい地上へ羽ばたく日を待ち焦がれ、望んでおります。


 けど、セミと違うところもあり、私は地中にいても必死に鳴き続けています。誰かに声が届くように。先生は言いました。「叫び、喚き続けろ」と。それが人間だと。声を出さなきゃお前を助けることもできない。お前の声が聞こえたら俺がなりふり構わずにお風呂場から全裸でダッシュしてでも駆けつけてやるって。服は着てください。目に毒です。


 私も先生が困った時は、冬眠の最中だろうとやせ細った体で時空を超えてでも駆けつけます。その前にたくさん栄養を摂取しておかなければならないので、マシマロになっております。これでいつでも冬眠OKです。ブリジストンも私の全力疾走を見れば、考えを改めて、土下座して懇願してくるやもしれません。


 先生はジョニー・デップと泉谷しげるを足して、顔面を殴って、3乗した顔を持っているので、個性があってねたましいです。


 P.S

 二度と戻らぬ夏ですが、これを謳歌おうかするにはどうしたものかと畳で寝そべり考えています。先生だったら、どうしますか?


 平成28年 盛夏




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