第8話

─まじありえなくない?

─うわー、意味不明なんだけどウケるw


昨日、あれから結局私は茉莉を追いかけることが出来なかった。普段怒らない茉莉が怒っている姿を見てしまい、どうすればいいか分からなかった。いや、ただ単純に怖かったのだ。普段よく話している友達の見たことも無い姿に出会い、ただただ怖くなった。いつかああいう態度を取られるかもしれない、もしあの時追いかけていたら冷たい態度を取られるかもしれない、そう考えてしまうと心の中がぐらぐらと揺らぎもはや走るどころか歩くので精一杯だった。

─教室に脚を踏み込んだ瞬間にいつもと違う雰囲気である事に気づく。

教室の中は静かだった。いつものように動物達はにゃーにゃー言ってるのかなぁとか考えていたけれど、そんな甘いものでは無く、時折ひそひそと、まるで悪口を共有しているかのような話し声が至るところで聞こえる。

茉莉とどう接すればいいかで精一杯なのに、今日のただならぬ雰囲気に脚が止まる。

「調子乗っちゃってんだよ」

「分かる。ちょっとカワイイからって浮かれてんだよね」

クスクスと、廊下側に座っている女子2人が呟き合う。

え、どういうこと?何があったの…。

ゆっくりと脚を運び席に辿り着く。

「ぁ、えと……おはよ、茉莉」

私は勇気を出して声を振り絞った。が、茉莉は返事はおろか、顔すら上げない。

「ま、茉莉…?」

「……………………ぁ、、凛、来てたんだ。おはよう」

茉莉はまるで私が来たことすら気づかなかったようなことを言う。

「何言ってるの?私前の席じゃん」

挨拶を普通に返された事に安心した私は くす、と笑い茉莉を見返す。

─と、何か鋭い視線が私の体を貫くように刺さったような感覚に襲われ、周囲を見渡すと視界に映る女子クラスメイトの半数程が私を見ている。その中には花梨ちゃん達もいた。

「……え、えと…おはよ花梨ちゃん」

「…ええ」

目が合ったので声をかけた。しかし、花梨ちゃんの口から出た言葉は私の想像と違い、どこまでも冷たく、心を潰されたかのように鈍い痛みを伴っていた。

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蜃気楼 桜之 玲 @Aoin8

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