第7話

「ふぅ……」

カフェの落ち着いた雰囲気の中、読書をしていた私がふと、窓の外を眺めると既に少し日は落ち、下界の人々は濃い影を地に落としていた。スマホで時間を確認すると6:00と表示されていて、どうやら2時間程度読んでいたらしく、周りの人の顔も来た時とは違っていた。

「もう6時か……」

そう1人呟きまだ半分ほどしか読めていない本を閉じる。よし、帰ろう……そう決心して立ち上がり出口の方へ歩き出すと、この店には合わない怒鳴り声のようなものが耳に入る。びくっとして反射的に声の主を探す。すると、出口側の4人がけテーブル席で座っていた男子2人と女子1人の高校生らしき人達のうち、女子高生の人が立っているのが見える。どうやらさっきの怒鳴り声は彼女のものみたい。わぁ…怖いなぁ、しかも出口側かぁ。なんて呑気に考えていると、

「もう関わらないで。」

そう表情を見なくても分かるくらい拒絶の言葉を放った彼女は足早に店を去っていく。

ふと、彼女の横顔が私の視界に入り、それが見た顔だと気づく。え…茉莉?……??

普段の茉莉からは聞いたこともないくらい厳しい言葉遣いだった。だから私は確信を持てず、ゆっくり、店を出ようと脚を動かす。

「は、なにあれ。どゆこと?」

「いやわかんないけど知床、お前に誘われたのが嫌だったんじゃない?」

「まじかよ」

私がさっき騒動のあった席の横を通る時、2人のチャラチャラした男子生徒はクスクスと馬鹿にするように笑っていた。知床……、、やっぱりあれは茉莉だ。

私はどうすればいいのかわからなくなる、追っていいのか、けど見たこともないくらい怖い表情をしていたであろう彼女に会うのがすごく怖い。そんな葛藤を繰り広げている間もさっきの男子生徒達はまるでおもちゃが1つ無くなっただけで、さして傷付いた素振りも見せず、あの馬鹿にするような笑いかたで話していた。


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