LARPゲームやってたらエルフ美少女が異世界召喚された件について。
雛咲 望月
第1話 異世界に召喚されるは紅焔を識る者たち
まあ、つまり───
我々は異世界に召喚されたのだろう。
エルフの魔法使いであるラズベリーは、森の中で、そう結論付けた。
鮮やかな、燃えるような赤髪のエルフ。
しかし───ラズベリーは、眉をひそめた。
大気のマナの光が、我々の居た世界とは違い、鈍色に輝いていることを感じる。
風の臭いが違う。少々、金属臭の様なものを感じて───思わず、咳込む。
このような汚染された大気の世界に、勇者様たちは……黄金の騎士たちは居るというのだろうか?
「ラズベリー様! これは一体……」
「心配しないで。間違いなく、ここは
「それでは、成功したのですね!! 大召喚儀式魔法が!!」
「しかし、本来は彼の地から黄金の騎士たちを召還する予定では……?」
「これ、召喚するって言うより、我々が召喚されてません……?」
誰かが発した疑問の声に、ラズベリーの眉がひくり、と震える。
「い、いえ───これも計算の内よ!! 間違いないんだから!! きっと」
「今、『きっと』って聞こえたような」
「さ、さあっ!! こうして彼の地に降り立ったのも、我々の神の思し召し!! 行くのよ、黄金の騎士たちを探しにっ!!」
ラズベリーを含め、約10名の精鋭たちは馬を駆り、出発する。
(森を抜ければ、きっと何かが───分かるに違いないわ)
しかし唐突に、視界に何かが飛び込んできた。
「きゃ───きゃあああああっ!?」
馬が嘶き、大きくバランスを崩して落馬するラズベリー。飛び込んできたそれも驚いたのか、座り込んで震えている……
「ラズベリー様、大丈夫ですか!!」
「おのれ! 貴様、何者だっ!?」
ラズベリーの周りに他の人間たちが集まり、蹲るそれに剣を向ける。
それは、見た目はラズベリーと変わらないエルフの少女だった。革鎧を付け、弓を持ち、恐怖に震えている。
「待って……剣を下ろして。この世界にも仲間がいたのね、良かった」
同族と知り、ラズベリーは手を上げて剣を下ろさせる。
エルフの少女は確かに長耳で相応の格好をしていたが───なんだか、違和感を感じた。我々の種よりも、なんだか顔が平坦で、鼻も低めだ。目も小さいし、少し肉が付いているように思える。
「あ……あなたたちは……」
「私たちは、別の世界から来たの。黄金の騎士たちを探しているわ」
微笑んでラズベリーは話すのだが、その言葉を聞いた瞬間、少女の顔が凍りつく。
「ま、待って。何を言って───あなたたち、どこの団体の人たちなの!?」
「団体? 妙な事を言うわね」
「だ、だって、今ここの一帯は、私たち『グランドール王国LARP』が貸し切って……!!」
「ぐらんどーる王国? らーぷ? それが貴方たちの国の名前なの? そういえば貴方のこの弓、見かけは素敵だけど……うーん、絃がちょっと緩すぎないかしら? これじゃあ、鹿も射抜けないわよ」
「鹿なんて殺さないよっ!? ほ、ほんとに何なの!? だって私たち───」
そして少女は、信じられないことを叫んだ。
「───私たち、
「……ゲーム?」
そう。
この世界は、やはり私たちの世界とは似て非なるもの。
ラズベリーがやっと理解した頃には、全てが───
始まってしまったのだった。
LARPゲームやってたらエルフ美少女が異世界召喚された件について。 雛咲 望月 @hinasakiyu
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