LARPゲームやってたらエルフ美少女が異世界召喚された件について。

雛咲 望月

第1話 異世界に召喚されるは紅焔を識る者たち

 まあ、つまり───

 我々は異世界に召喚されたのだろう。

 エルフの魔法使いであるラズベリーは、森の中で、そう結論付けた。


 鮮やかな、燃えるような赤髪のエルフ。

 紅焔を識る者フォムア・アンドゥリアン───そう呼ばれている彼女は、120歳とエルフにしてはまだ若く、才気高い女性であった。美しく長い睫と、赤い瞳。白く美しい肌。整った、スラリとしたボディは、密かに自慢の代物だ。


 しかし───ラズベリーは、眉をひそめた。


 大気のマナの光が、我々の居た世界とは違い、鈍色に輝いていることを感じる。

 風の臭いが違う。少々、金属臭の様なものを感じて───思わず、咳込む。

 このような汚染された大気の世界に、勇者様たちは……黄金の騎士たちは居るというのだろうか?


「ラズベリー様! これは一体……」

「心配しないで。間違いなく、ここは遠き彼の地ロドーリアよ。間違いないわ」

「それでは、成功したのですね!! 大召喚儀式魔法が!!」

「しかし、本来は彼の地から黄金の騎士たちを召還する予定では……?」

「これ、召喚するって言うより、我々がません……?」


 誰かが発した疑問の声に、ラズベリーの眉がひくり、と震える。


「い、いえ───これも計算の内よ!! 間違いないんだから!! きっと」

「今、『きっと』って聞こえたような」

「さ、さあっ!! こうして彼の地に降り立ったのも、我々の神の思し召し!! 行くのよ、黄金の騎士たちを探しにっ!!」


 ラズベリーを含め、約10名の精鋭たちは馬を駆り、出発する。


(森を抜ければ、きっと何かが───分かるに違いないわ)


 しかし唐突に、視界に何かが飛び込んできた。


「きゃ───きゃあああああっ!?」


 馬が嘶き、大きくバランスを崩して落馬するラズベリー。飛び込んできたそれも驚いたのか、座り込んで震えている……


「ラズベリー様、大丈夫ですか!!」

「おのれ! 貴様、何者だっ!?」


 ラズベリーの周りに他の人間たちが集まり、蹲るそれに剣を向ける。

 それは、見た目はラズベリーと変わらないエルフの少女だった。革鎧を付け、弓を持ち、恐怖に震えている。


「待って……剣を下ろして。この世界にも仲間がいたのね、良かった」


 同族と知り、ラズベリーは手を上げて剣を下ろさせる。

 エルフの少女は確かに長耳で相応の格好をしていたが───なんだか、違和感を感じた。我々の種よりも、なんだか顔が平坦で、鼻も低めだ。目も小さいし、少し肉が付いているように思える。


「あ……あなたたちは……」

「私たちは、別の世界から来たの。黄金の騎士たちを探しているわ」


 微笑んでラズベリーは話すのだが、その言葉を聞いた瞬間、少女の顔が凍りつく。


「ま、待って。何を言って───あなたたち、どこのの人たちなの!?」

「団体? 妙な事を言うわね」

「だ、だって、今ここの一帯は、私たち『LARP』が貸し切って……!!」

「ぐらんどーる王国? らーぷ? それが貴方たちの国の名前なの? そういえば貴方のこの弓、見かけは素敵だけど……うーん、絃がちょっと緩すぎないかしら? これじゃあ、鹿も射抜けないわよ」

「鹿なんて殺さないよっ!? ほ、ほんとに何なの!? だって私たち───」


 そして少女は、信じられないことを叫んだ。


「───私たち、LARPラープゲームしてるだけだもん!?」

「……ゲーム?」


 そう。

 この世界は、やはり私たちの世界とは似て非なるもの。

 ラズベリーがやっと理解した頃には、全てが───


 始まってしまったのだった。

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LARPゲームやってたらエルフ美少女が異世界召喚された件について。 雛咲 望月 @hinasakiyu

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