11.言葉の真相
そこから1週間程経ち、珍しく友人を家に招いて遊んでいる時の事。
「なぁ、相談があるんだが」
「ん?」
「ちょっと待て、今いいところだから」
それぞれが漫画を読んでいるところで、二人に話しかける。
田中のキリがつくまで待っている間に話す内容を頭で整理する。
それから5分後。
田中のキリがつかなかったので漫画を取り上げ、相談を再開。
「お前達に聞くのは筋違いかもしれないんだが……」
「なんだよ、早く言えって」
「聞くだけ聞いてやる」
こんな事を友人に聞くのは変だと思う。
内容が内容だからな。
ただ、他にこんなことを聞いてくれそうな人が居ないんだ。
由梨香には……さすがに相談出来無いしな。
「ありがとう。じゃあ聞くが」
話しやすくしてくれた友人に感謝し、恥ずかしながらも、1週間で考え続けた悩みを打ち明ける。
「呪いって、どうやったら解ける?」
「勉強のし過ぎで頭やられたか?」
「元からこんなだったような気もするが」
思い切って聞いた質問。
俺はいたって真剣だ。
それに対して、彼らは真剣に俺を心配していた。
失礼だろ。
「知らないなら知らないと言ってくれ」
「……え、今のジョークじゃないの?」
どうやら俺がふざけたと思ったらしい鈴木。
様子を見る限り、田中も同じ考えのようだ。
「俺は真面目だ」
「お前……それが真面目な時点で自分がおかしいと思わないのかよ」
思わないわけないだろ。
バカにしてるのか。
それでもこんな相談をしたのはもちろん理由がある。
由梨香に「好き」と伝えたあの日から始まった胸の苦しみの事だ。
あの日から、俺と由梨香は互いにちゃんと「好き」と伝え合うという関係になった。
主に、登校時と下校時の1日2回。
それはいいのだが、「好き」という言葉を言い合うたびに……厳密には、言われる度に胸が締め付けられる感覚に襲われる。
しかも、また言いたい、また言われたいと思ってしまう。
歯止めはきくが、たまに感情が溢れそうになる。
そんな状態が続き、一向に収まらない。
考えに考え、俺の出した結論は、これが何かの呪いじゃないかという事だ。
由梨香が、何故俺にこんな呪いをかけたのかは全く分からないが。
「そもそも、何の呪いなんだよ」
「なんて言うのかは知らないが……。『好き』と言われると苦しむ呪いか?」
そのままの名前を言ってみる。
しかし、あまりにも安直過ぎた為か、2人は聞く姿勢の固まってしまった。
そのまま10秒程。
瞬きすらしない2人を観察していたらやっと動いた。
何だ、その怪しい笑みは。
ニヤリって文字が見えそうな表情だ。
「一応確認なんだが、『好き』って言ってくる相手は大澤であってるか?」
「そうだが?逆に由梨香しかいないだろ」
……何かおかしい。
俺は困って相談しているのだが、彼らは輝く笑みを浮かべている。
すごく不気味だ。
「はぁ、やっとか。これで一安心だな」
「中々気づかないから、そろそろ強硬手段に出ようかと思ってたところだ」
2人は顔を見合わせて何やら喜んでいるが。
まさかこいつら。
由梨香とグルか?
中々気づかない俺に対して、ずっと呪いをかけ続けてきたのか?
俺が何をしたというんだ。
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