6.二人の関係
初めて友人に避けられる気持ちを知ってからしばらくして。
今度は衝撃の事実を知ることになる。
「……は?お前、あの日から好きって言ってないのか?」
「言うわけないだろ」
前のように好きなタイプだとかで盛り上がっていた2人。
思い出したかのように鈴木に「関係は進んでるのか」と聞かれて、関係の意味を聞き返したのは言うまでも無い。
その後、「手を繋ぐとか好きって言うとか……その先とか」と言う曖昧な説明を受け、その先というのが分からないままとりあえず答えたらこんなリアクションをされた。
「お前……言ってやれよ。あんな公開処刑みたいなことやったんだからさ」
「また同じ目にあうのが目に見えてるのにか?」
まさに公開処刑だったな。
罠にはめられ、言葉を口に出した瞬間にビンタなんて。
「2人の時なら平気だろ?ほら、家とかで遊んでる時にさ」
「逆に逃げ場が無いと思うが」
そもそも2人の時に平気な意味がわからない。
ばれないようにというのは分かるが……そもそも相手は審判者本人だ。
「おい、待て。普通に話進めたけど、お前家に行っておいて好きって言ってないの?」
「言ってない。というか、来てるのは向こうだぞ」
俺から近づこうとはしないからな。
彼女から暇だというメールが来たときだけ家に招待している。
そんなことが出来るのも、前みたいに距離を置かれることが無くなったからだ。
時間と共に、段々元の距離で並ぶことが出来るようになっていた。
「なぁ、大澤ってもしかしてこいつが恋愛に疎いから?」
「ああ。今みたいに堂々と隣りに居れるし、家に上がれるんだろうな」
「ん?」
いつからこの距離に戻ったんだろう……なんて考えていると、彼らはコソコソと何かを話していた。
俺が首を傾げると、2人は溜息をついて変な目で俺を見ていた。
「好きって言われて、大澤さんは嫌がってたのか?」
「いや、おそらく嫌がっては無いと思うが」
嫌がってたら俺の近くに来るはずないだろう。
俺に審判を下した時だって、もしかしたら役目を果たしたに過ぎないのかもしれない。
誰に役目を与えられたのかは知らないが。
それに……と、あの帰り道を思い出す。
「好き」と伝えた時の反応を見たくて言ったあの日。
俺には、少し喜んでくれたように思えたしな。
結局怒られたから気のせいかもしれないが。
「だったら、もっと言ってやれば?もしかしたら不安がってるかもしれないぞ?」
「しかし……好きってのは禁句なんだろ?」
「「は?」」
先程から質問ばかり受けているので、俺は唯一の懸念点を聞き返してみた。
彼等は何か勘違いしているようだが、言うことが嫌なのではなく、言ってはいけないことだから言わなかっただけだ。
しかし、その質問を聞いた二人はポカンとした表情になった。
「お前、まさか好きって言っちゃだめだから、今まで言わなかったのか?」
「まさかも何も、それしか無いだろ」
2人は「はぁ……」と大きく溜息をつく。
この反応を見て、やっと気づいた。
どうやら、この数ヶ月で自ら学んだと思っていたことは大外れだったようだ。
別に、禁句じゃないってことか。
「しかし、それなら由梨香もお前達も何故俺と口を利いてくれなくなった?」
「それは……ほら、恥ずかしかっただけだ。な?」
「え?ああ、そうそう。あれだけ真っ直ぐ言われたらな」
あれは俺に科せられたペナルティだと思って納得していたが、違ったらしい。
3日口を聞かなくなるくらい恥ずかしいのか?
その気持ちは俺には分からないが、まぁ人それぞれか。
というか……もっと早く言ってくれ。
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