2.幼馴染への告白
「プッ……アッハッハ!ギャグだよギャグ!」
「そんなに笑うことじゃないだろ。どこが面白いんだ」
俺の名前は花田誠≪はなだまこと≫。
高校1年、帰宅部。
勉強もそれなり、運動もそれなりに出来る一般学生。
多少世間知らずらしいが、それ以外は特筆出来るような事は何もない。
ああ、恋愛ごとには特に疎いと言われるが、これは違う。
興味が全く無いせいで知識が無いだけだ。
……それを疎いというのか言うのか。
「だ、だって、好きな人教えてって言われたんでしょ?」
「そうだ。だから正直にあいつらのことを好きだと答えたはずなんだが」
俺がそう言うと、隣を歩く女子はまた声を出して笑い出した。
失礼極まり無い。
彼女は大澤由梨香≪おおさわゆりか≫。
俺の幼馴染というやつだ。
176cmの俺より10cmほど背の低い彼女は、涙目になりながら俺を見上げる。
普段は大きく開かれている目は、笑っているせいで薄目になっている。
何でこんなに笑われてるんだか理解できない。
帰り道でただ、彼女に3日前のことを相談しただけだ。
由梨香自慢の茶色ポニーテールを掴んだら黙るだろうか。
それは冗談として……俺は真剣に悩んでいる。
友人に無視されたままなのは居心地が悪いし、単純につまらないからな。
それで、仲のいい彼女に相談に乗って貰っていたところなんだが。
「由梨香、いつまで笑ってんだ。相談してんだから解決策くらい考えてくれよ」
「わ、分かった。んー……プフッ……」
分かったと言いながら、顎に手を当てる仕草をするフリをして、そのままクスクス笑う由梨香。
……意味が分からない。
好きだと言っただけで無視される意味も、その話しをしただけでこれだけ笑われる意味も。
何かと鋭い彼女だから、何かわかったのかもしれない。
だったら教えてくれればいいのに……どうやら教える気は無いようだ。
だったら……。
「好きだぞ」
「フフッ。ん、何?」
彼等にも伝えたように、彼女にも自分の気持ちを伝える。
自分の笑い声で聞こえなかったのか、目じりの涙を指で吹きながら聞き返してくる由梨香に、もう一度告げる。
「俺、お前の事好きだぞ」
「な……え?それって……?」
急に笑いが止まり、キョトンとした表情になる由梨香。
……なんだその表情。
今のは聞こえたよな。
やっぱり言ったらダメだったのか?
「なんだ?もう一度言った方がいいか」
「い、いい……その……本気?」
……本気?
まぁ、今の気持ちに偽りは無い。
「ああ、本気だが」
「っ……わ、私も……」
俺が肯定すると、彼女は何故か顔を真っ赤にして俯いた。
その後小さく何かを言ったみたいだが、上手く聞き取れなかった。
「ん?何か言ったか?」
「ぁ……私も……誠の事好き!」
必死に訴えるように、俺の目をしっかりみて伝える。
笑いはやんだはずなのに、その目じりにはまだ涙が浮かんでいた。
由梨香も俺の事が好きか……。
嬉しいな。
「そうだよな。それが普通のはずだ」
「え……」
俺は腕を組んで一人で頷く。
好きと言って引かれる意味が分からない。
それは今由梨香に言って証明させてもらった。
ましてや、相手からの好意もあれば好きと言い返される事もおかしいことでは無いはずだ。
もしかして、あいつらに対して俺の信頼が足りなかっただけか?
だとすれば精進しなければな。
「ありがとう由梨香。参考になった」
「も、もしかして……試した……?」
俺は頷く。
さすが由梨香だ、察しがいい。
「っ……ば、バカ!鈍感!そんな事言ってると皆に嫌われるんだから!」
「え?おい、由梨香」
そう感心していたところで、由梨香は突然暴言を吐いて、俺に背を向けて走って帰ってしまった。
なるほど。
好きと言うのは、思っていても言葉には出さないほうが良いらしい。
由梨香でさえ冷静さを失うのだから。
何か言ってはいけない理由でもあるのか……?
言うのは恥ずかしいが、言われるのは嬉しいだけではないのか?
「難しいな」
既に見えなくなった由梨香と同じ道をゆっくり歩きながら、明日3人にどうやって説明しようかと1人で考える羽目になった。
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