恋愛マイナス1年生

とし

1.好みのタイプ




「なぁ、お前どんな女子がタイプ?」

「俺? 俺はやっぱ胸が大きい子がいいな」



ある日の昼休み。


いつも唐突な鈴木が田中に話題を振る。

今日の話題はタイプか。



「お前ならそう言うと思った。じゃあ… … あ

いつとか狙ってたりする?」


「は? 何で分かるの?」


鈴木は、クラスで胸が一番大きいと噂されて

いる女子をこっそりと指差す。


田中はどうやらその子を狙っていたらしく、

図星をつかれて動揺する。


「当たりかよ。お前胸しかみてねーの? 」

「そんなわけ無いだろ。やっぱ一番は中身だ。

ほらアイツ優しいし、頼りに… … 何だよその

目」


田中は彼女のいい所をあげようとするが、鈴

木は「どうせ胸だろ」とでも言いたげな目線

を送る。


そもそも、女子を頼ろうとするのが間違って

るだろ。




そういえば、この田中は「巨乳フェチ」とい

う持病だったか。

無知な俺に友人鈴木が教えてくれた。


どうやら丸いものを見ると掴みたくなってし

まう病気らしい。

彼がバスケ部に入っているのは、その欲求を

解消させる為だと予想している。


勝手に人の胸とか触ったら大事になるだろう

からな。

自制を効かせるとは、大した奴だ。




「そういうお前はどうなんだよ」

「俺はテニ部のあの子かな」


それを聞いて思い出すのは、鈴木に連れられ

てテニス部を、もといテニス部員を見学に行

った時のことだ。



今話にあがっていた、女子テニス部の一番背

の低い子がいた。


中学生にしか見えない彼女は、上手いはずな

のに何処か危なっかしく見えてしまう同級生。


その子を見て、彼は終始「助けてあげたい! 」

とか言いながら見ていた。


夕方までずっと。

さすがに置いて帰った。


「あの子か。そういえばお前ロリコンだった

な」

「うっせーよ。つーかロリじゃねーだろ」




この鈴木はロリコンという部族だと、田中は

教えてくれた。

日本人では無いらしい。



大昔から日本人にまぎれて生存していたが、

ここ最近になって表舞台に出始めたとの事。


小さい子を襲う強硬派と言うのもいるらしい

が… … 事件などが起きないか不安だ。




「てかさ、いい加減お前も暴露しろよ」

「そうだぞ。いつも聞いてばっかとかずるい

じゃねーか」



「ん? 」


さっきまで互いにワイワイ言い合っていた2

人の視線は、頬杖を付いて会話を傍観してい

た俺の方に。




「… … 何を暴露すんだ? 俺は人間だし、持病

も無いぞ」

「わけ分からないこと言っても逃がさねーぞ」

「そうだそうだ」



それぞれに両肩を掴まれ、逃げられないよう

に拘束される。

わけ分からないって、教えたのはお前たちだ。


それに、何を言えと… … 。



「いるだろ? 好きなやつ」

「もうネタは上がってんだ。白状しろ」



分かってるなら何故言わせる。

録音でもして弱みにでもするつもりか?



しかし、好きなやつか… … 。

いなくは無いが。



「恥ずかしいんだが、拒否権は? 」



「面白い冗談だな」

「そうだな。まぁ、それは置いといて、だ」


会話になっていないが、肩に置かれた手に力

がこもった事から拒否権が無い事だけは分か

った。


どうやら言わなきゃダメらしい。

そういうのは察して欲しかったんだがな… … 。



「… … なら言うが、俺は… … 」



「「… … 」」



初めて告げるこの気持ちに、2 人も息を飲む。


緊張感の中、俺は今年初めからの想いを口に

出した。





「お前達の事、好きだぞ」





それから3 日ほど、この友人達と会話するこ

とは無かった。

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