終章
イグリース王国の首都にいる、国王側近騎士であり、王国騎士長でもあるヨグスは、今回の一件の報告を受けていた。
「なるほどな。敵とはいえ従姉妹、こうなることも分かっていたが、悲しいものだな」
「ヨグス様、そう気を落とさないで下さい」
ヨグスの側近が励ますが、ヨグスは言葉を続ける。
「キルスは以前、私に極東の書物を手紙を添えて送ってきた。この一件からすると、私も同じ目に合うやもしれん」
そういうヨグスの手には、一通の手紙が握られていた。側近が手紙をヨグスの手から離し、読んでみる。
『一緒に送った物がその書物だ。まぁ、紙の寄せ集めにしか見えぬが。
本当に、今の権力がヨグスから奪われそうになったら、私が真っ先に助けに行くことにしよう。
そうそう、その本の最初の一節は極東の言葉で覚えている。
『祇園精舎の鐘の声』と言うらしい。意味はもう一冊のちゃんとした本に記してある。
この本の通りにならないよう、お互いがんばろうな。
キルス』
終
イグリース王国物語 ~キルスの最期~ 哲翁霊思 @Hydrogen1921
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