第2話 同居人ができました

「さて…1限を始めるわけなんだが…」



なんなんだ。こいつら。目が死んでやがる。いや数名は死んでないな。

1限は魔法実習。なので魔法実習室に移動した


「せんせー!1限の魔法実習の授業なんですけどまずは先生の魔法見せてくれませんか?」


ほう。こんな中にも活発な生徒はいるんだな。まぁいいだろう。


「じゃあやるぞー!みんな俺に注目してくれ」


バチバチ。指先に雷が集まる。

それが指から離れて魔法実習用の部屋の壁に激突した瞬間ドゴォォォォォン。

壁が爆散した。

それなりの魔法に耐えられるように作られた壁なのだが簡単に破壊してしまった。


「……………」

生徒がおし黙る。口を開けてバカみたいなツラしていやがる。どっかの先生みたいだ。お前らバサロの真似してんのか!って不覚にも思ってしまった


「えっと…この壁どうしょっか」


そのあとすぐに放送が流れた



「おい!ルート先生!大至急私の部屋…学園長室にきなさいなっ!」


おっと…この学園長もなかなかに自由なやつだな。普通はそんな放送ないぞ。


「…お前ら今日の残りの授業は俺が戻ってくるまで自習な。んじゃあ…怒られてくるわ」







「あなたは…この学園を潰したいのですか?あれですね?ロッテン王国のスパイですね!?油断しました…!」

「おまえ!やっぱり気がついて…」

「いーえ。私は何も知りませんし何も感づいてません。あなたがロッテン王国のスパイのわけないでしょう」


ここまで綺麗に前言撤回されるともう清々しい思いですわ。まぁ深く突っ込まれると困るのは俺だしなぁ



「いや。ここの壁がもろすぎるんですよ」

「ここの壁は教師陣でも壊せる人なんていませんよ!教師が複数人でようやく壊れるかどうかです!」


こうして学園長の説教…あとこのあいだの肩揉みをしたら日が暮れていた。もう生徒も下校してる時間だ。


「あいつらには悪いことしたなぁ…」


一応教室に戻ると生徒全員が着席して目を爛々と輝かせていた。

いや…この変わりよう怖いんですけど…


そして魔法実習の時に俺に魔法を打ってくれと言いだした生徒が


「私の名前はファラ・クリスティーヌ」


肩まである赤い髪を手で払いながら挨拶された。身長は…まぁ低くも高くもない。そのややつり上がっている黒い瞳からは気の強さを感じる。

ファラの自己紹介を皮切りに全生徒が自己紹介を始めた

聞いてわかったことがある

この学園は実技順にA B C Dとわかれているそうだ。


「ここ最弱クラスじゃねーか!」

心の叫びが声に出てしまった瞬間であった



「いままでわね!でももう違うわ!先生!私達に魔法を教えてちょうだい!」


いちいち語尾が力強くて!マークがついてそうだ。(はい。ついてます)


そして全生徒が頭を俺に下げてきた。

「おねがいしますっ!!!!!!」


でもタダで教えるのもなぁ。なんて考えてる俺は教師の風上にも置けない存在かもしれない。いや置けない存在だ。


俺が渋っていると


「私とファラ姉さんとウィズ姉さんの所属している魔法実技部…このクラスにはその3人しかいませんけど…その魔法実技部のクラス対抗で大会がありますです。それで優勝すると1年間学食無料券がもらえるです。それを先生にあげるですよ?」

「よし!のった!」


俺はあっさりと落ちた



「まぁくわしい授業は明日からだ。んじゃあ解散だ」


そして生徒達が教室から出る中3人が教室に残った

たしか魔法実技部の3人だ


「改めて。私がファラ・クリスティーヌよ!」

「ウィズ・クリスティーヌと申します。」

「エリス・クリスティーヌですぅ」


「おまえら三姉妹か!?」

驚きの事実発覚だった。


長女はファラか。


次女がウィズらしい。

黒い髪が後ろで纏められている。腰まである美しい黒髪もさることながら姉とは違う紅玉のような美しい赤い目が特徴てきだった。

そして3人の中で1番いいプロポーションを持っていたのは言うまでもない。


そして三女のエリス

背中まである彼女の髪は赤いのだが…とても色素が薄い。赤に白を加えた薄い色だった。

ウィズと赤い瞳を持っており反対側は眼帯をしている。どこかあどけなさを残す3人の中では1番幼女体系だった…



「実はこのクラスで部活に入ってるのは私達3人しかいないのよ!その…D組だから部活に入っても足手まといと言うか…まぁそーゆーことよ!」

「どーゆーことだよっ!」

「その察しなさいよ!」

「まぁまぁ。お姉様。一度落ち着いて。その先生。私達は落ちこぼれと烙印を押されています。それを払拭するためにもお力を貸していただけませんでしょうか?」

「それならさっきいいっていったろ?」

「いえ。部活の顧問も先生となってるです。なので私達の顧問として3人に放課後ご教授願いたいのです」

「そうよ!あなた無詠唱であの威力とか凄すぎだわ!」


実際の戦場では前線で戦う俺は詠唱する暇がないから無詠唱を覚えたんだよな。たしかに宮廷魔法師団の中でも一部しか無詠唱は使いこなせてなかったな


「まぁいいぞ。ただし部活も明日からだ。俺はさっきの魔法実習室の件が残ってるから帰った帰った。」

「それじゃあ明日ね!」

「明日もよろしくですわ」

「また…明日です」


そうしてこの三姉妹は帰って行った。



職員室で魔法実習室を破壊したことを謝ったのだが思いの外怒られなかった。むしろみんな驚いていた。

いや…1名は部屋の隅でハンカチを噛み締めてこちらを睨んでいる。まぁ無視だ無視。



そして俺は挨拶して先にあがらさてもらった。

もう生徒はすべて下校している。夜8時をすぎた。俺は先に上がらせてもらった後に校舎を回って学校探検をしていた。

そんなことをしていると学校を出たのが9時をすぎてしまった。





「おい…だれだ?さっきから俺をつけてきてるやつは?」

「あれ?気づいちゃった?さすがは黒き疾風ね!」


俺の正体は隠しているし

素顔を知っているのはほとんどいない。当時は皆の前に出る時もフードを深く被り顔は隠していた。俺は警戒を強めた


「まぁまぁそんなに警戒しないでよ。」

「ならそこからでてこい!」


沈黙が場を支配する



「悪いけど今はできない。私は呪子。影の上でしか生きていけない呪いなの」


呪いとは本当に限られた者にしか使えないものだ。宮廷魔法師団にも俺を含めて3名しか使えなかったのを覚えている。解くためにはその呪いをかけた者のより強い魔力を流して呪いを破壊するしかない。



なんの気の迷いかこの呪いは解くべきだと感じた


「俺が解いてやるからそこから動くな。」


そして俺は声がした方へといった。もちろん警戒を緩めてはいない。不意打ちにも対処はできる



そして俺は声のした方にいった。そこには月の光を反射しているかのように美しい金の髪を2つに結んでいるツインテールの女の子がいた。歳はエリス達と同じくらいだろうか。そして髪と同じ色をする瞳はあまりに綺麗で思わず声をつまらしてしまった。


敵意は感じられない

「いま解くからな。もちろん解いた分の働きはしてもらう」


そういって魔力を流したのだが…俺は呪いをとけなかった。俺が解けないなんて…恐らく呪いをかけた人物は相当強い。


解けないことを、わかっていたかのように俺を見つめる彼女の目


「いままで沢山の人が解こうとしてくれたけど…みんなダメだったんだ」


そう言う彼女はどこか悲しげな瞳をしていた。


「おまえ日が当たる昼間はどうしてるんだ?」

「私の魔法で影の中を自由に移動できるからたいして困らないわ」


そういって彼女は影から離れた影へと移動した。


「それに光を屈折させれば多少は外を歩けるのよ。魔力を大量に使うからあまりやらないけど」


光の屈折ができるのか。魔力コントロールに相当長けているということだ。

たしか宮廷魔法師団に入るための最低条件として使えなくてはいけない魔法だったはず。

毎年1000人は希望者がいる中でその最低限の魔法が使えないがために900人は脱落者が出る。

そう考えると彼女は中々な逸材かもしれない。


「名前をきいていいか?」

「ルーナ・ラネットよ。あなたの名前はわかるから大丈夫。いまは先生をやってるんだって?

黒き疾風さん?」

「その名前で呼ぶな。ルートで頼む。それでそろそろ話してくれないか?その名前を知っている理由」


そうして彼女は語り出した


「ラカゴ村を覚えてる?戦争ですでになくなってしまった村なのよ。私はそこ出身なの。そしてあなたは私を守ってくれたわ。その時フードが取れてしまった時顔を見たわ。命の恩人なんだから忘れるわけないでしょ?」


あぁ…あの村での事は覚えている。フードが取れた時も子供に見られたからいいと思ったのだが。


そして助けたというのは間違えだ。俺が相手を屠っている時に蹴り飛ばした相手が その時彼女を襲おうとしていた敵にぶつかって倒しただけだ。

結果的には助けたことになるのだが。



「それでルート!あなたは私の命の恩人よ!私の事を飼ってくれないかしら!?」





こいつ…なにいってんだ?ペットを飼う趣味はないし

それが人間ともなるともっと話しは変わってくる。


「おまえは俺に首輪をつけられて散歩でもして欲しいのか?」

「あら?そんな趣味があるの?」

「おまえが飼ってとかいったからだろーが!!」

「あぁ…そのことね。さっきも言ったように昼間は影から影へと移動できるから外に行く分には困らないわ。けど…その…私も学校に行きたいのよ!!!!」

ルーナの瞳はウルウルとしている


「後半涙目で言われても俺の心は変わらん。その涙も本当か?」

「この悪魔め!乙女の涙を疑うっていうの?謝って!今すぐ私に謝ってよ。そして今流した涙に謝って」

「めんどいやつめ。そうだな…なら俺になんの得がある?」

「実は私ねこんな事ができるのよ」


そしてルーナは俺の影の中に消えていった。


あ…出てきた。


「どう?私は影の中に入れるのよ。もちろんそのまま外の世界も見れるわ。影の中に入れば日のあるところも大丈夫よ。影の中だから私の意志で行動とかはできないんだけどね。だからあなたの影の中で私を飼ってくれないかしら?

あと家の中では影からでないって誓うから家に置いてください」


おい…さっき謝ってとか言ってたお前はどこいった。

それはさて置き


「飼うってのはわかった。それで俺になんの得が?」

「はぁーー?まだ気がつかないの?影の中にさえ入れば相手は私の存在にすら気がつかないの。いわば情報収集のスペシャリストなのよ!」


自分でスペシャリストというか。しかしルーナの言うことは一理ある。


「わかった。なら俺が欲しい時にその情報を持ってきてくれるってことでいいんだな?

あと可哀想だから寝床と飯くらいは準備してやる。だからそれに見合った働きをしろよ?」

「えぇ!いいわよ!これで契約成立ね!それじゃあ帰りましょう!あなたの家に!」


そしてルーナは影の上を歩き出した


「俺の家そっちじゃないんだけど。」

「はやく言いなさいよ!」




こうしてルートの1日は終わり家に同居人ができた。

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さぁ 課外授業を始めようか 瀬戸口マカロン @makalon

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